費用対効果のジレンマをいかに超えるか。RPA導入における障壁を解決するRPAチャットボットとは?

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「働き方改革」実現のために多くの企業は2つのキーワードに注目しています。一つは「AI」。もう一つは「RPA」です。

そこで今回は、RPAの導入において企業が引っかかるジレンマと、これからRPAが発展していく道としての「RPAチャットボット」について、株式会社モビルス 代表取締役社長 石井智宏さんに寄稿いただきました。

石井 智宏
1998年 早稲田大学卒業。
2009年 ペンシルバニア大学ウォートンMBA取得。
ソニー株式会社にて11年間ラテンアメリカ市場におけるセールスマーケティングに従事。国内投資ファンドにて執行役員に。ソニー元社長兼会長の出井 伸之氏が設立したクオンタムリーブ株式会社のエグゼクティブパートナーとして、多数の日本企業の海外進出を実行支援。2014年 モビルス株式会社に参画、代表取締役社長に就任。(現役)

RPA導入におけるジレンマ

RPAは、ロボットによって業務を自動化するツールとして「働き方改革」に貢献してくれるのではないかと、もっぱら関心が寄せられています。

RPAの導入前~本番導入にはざっくりと以下のような工程があります。

  • 業務のどの部分にRPAを適応できるのか、業務フローの洗い出し
  • RPAツールの選定・ロボットの設計
  • デモンストレーションの実施・評価
  • 運用ルールの策定

    これらを自社で全て行える企業は少なく、多くはコンサルタント会社や専門企業に依頼をするため費用が発生します。たとえ自社ですべて行ったとしても今度は膨大な時間や人的コストを要してしまいます。

    また、導入後も保守・運用体制の構築をしたり、業務フローの変更に合わせてロボットの再設計をしたりと、何かと作業を必要とします。仮にこれらを全て外注で行った場合はまた費用が発生しますし、外注でなくとも人的コストがかかります。

    コスト削減のために導入しようとしているのに、導入コストがかかってしまう。費用対効果を出すまでに時間を要してしまう。この「費用対効果」問題がRPA導入に立ちはだかるジレンマです。

    費用対効果のジレンマを解消するRPAチャットボットとは?

    導入に際してある程度の費用や人的コストが発生してしまうのは仕方ありません。コストを回収しRPAの導入効果を高めるための近道は、RPAの恩恵を受けられる人を増やすことです。

    現在RPAが適応されている業務範囲は「点」として点在しています。

    たとえば、申込受付時の伝票番号入力をする「部分」。送られてきたPDFデータからシステムへ文字入力をする「部分」。

    この点在しているRPAを「線」として結び、社内・社外問わずより多くの人にRPAの恩恵をもたらす可能性を秘めているのが、「RPAチャットボット」です。

    RPAは人間の体で言えば「手足」の役割を果たします。AIは判断するための「目」や「頭脳」。そしてチャットは「口」や「耳」に相当するでしょう。

    これらの機能を備えているのが「RPAチャットボット」です。

    RPAチャットボットでは、「チャット」を入り口に指示を受け、「AI」が何を求められているのか判断し、「RPA」が処理をします。AIが仕分けをするため、複数のシステムとの連携が可能となります。

    RPAチャットボットの適用範囲

    RPAチャットボットが複数のシステムと連携すれば、下記のようなことが可能になります。

    • 勤怠管理:「有休休暇の日数を教えて」という問いかけに対し、残日数を回答し、申請も受け付けてくれる
    • 社内FAQ:有休休暇の取得方法を教えてくれる
    • 営業支援ツール:外出先で「●●株式会社の電話番号を教えて」と問いかければ電話番号が返ってくる
    • システム障害情報:システムに障害が発生したらRPAチャットボットの方からアラートしてくれる

    もっと身近なルーチンワークであれば、こんなことも可能かもしれません。

    • 「議事録作成」と言えば『議題は?』『参加者は?』と返事がくる。回答を終えるとシステムに議事録が格納されている。
    • 「日報作成」と言えば今日の活動が問いかけられ、回答を終えると日報を作成し終わっている。

    RPAチャットボットが適応できる業務範囲はまだまだありそうですね。

    残業申請の簡素化、残業時間の管理・分析に

    RPAチャットボットは機械と人間の1:1だけでなく、複数人との間でも機能できます。

    たとえば残業申請。働き方改革の影響で、今まで必要のなかった残業申請が必須になった会社もあると聞きます。会社によっては紙で運用し、わざわざ上長印をもらう必要があるケースも。

    それをRPAチャットボットが代行するとどうなるでしょう?

    • 部下はチャットを通じて残業申請を送信
    • それを受けたRPAチャットボットは勤怠システムに社員情報を照会
    • RPAは勤怠システムからの情報をチャットボットに返信
    • 情報を取得したボットは上司に通知。このとき、もし申請した部下の残業時間が所定の時間をオーバーしていれば通知と同時にアラートを上司に伝える
    • 上司はその情報をもって残業の可否を判断
    • 上司の承認の許諾結果が部下に届く

    社員(上司・部下)の手間は、チャットボットに向かって入力・応答するのみ。

    このようにRPAチャットボットを活用できれば、残業申請そのものの工数を減らすことができます。また、社員の残業時間・残業理由の分析が可能になり、不必要な残業を減らすよう管理することもできるようになります。

    またRPAチャットボットであれば、社外からの請求受付の自動化も可能になります。たとえば顧客や代理店など、社外からの請求・申請受付をするとき。

    チャットボットが自動で受け付けたデータをチェックし、問題がなければシステムに自動入力。エラーや確認が必要な場合があれば、オペレーターにエスカレーションします。こうしたRPAと人のハイブリッド対応も可能になります。

    RPAチャットボットのメリット

    こうしたことはなぜ可能なのでしょう?ポイントはAIチャットボットの特性をフルに活かしている点です。

    たとえば、

    • 言葉の揺らぎの吸収:自然言語処理の技術により、インプットされた文字に対してAIが「何を指示されているか」を判別
    • 離脱防止:管理者側から仮に手続きの途中で手が止まってしまったユーザーへ通知を送信し、能動的に離脱を防止

    このようにチャットの特性を存分に活かすことで、RPAはより使われる人の間口が広がり、よりパワフルなツールとなり得るのです。

    働き方改革の間口を広げるRPAチャットボット

    AI・テクノロジー系や、業務効率化の展示会に行くと、RPAの文字を見ないことがありません。しかし、話を聞いてみて「導入が大変そう」「導入コストがかかる」「本当に費用対効果が出るのか」と疑問に抱く人も少なくないように感じます。

    RPAによる費用対効果の本質は「どれだけ多くの人がRPAによって業務がラクになるか」です。

    「ある人の、ある業務を、代わりに自動化しているデジタルレイバー」だけでは働き方改革にも限界がありますが、RPAチャットボットが入口であれば、社内外問わず間口が広がります。本当の意味で働き方に改革が起きるかもしれません。

    今後のRPAチャットボットにご注目ください。