海外とは導入の“前提”が違う。日本における「RPA大衆化」への障壁とは?

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昨今、業務効率化の革命児として注目を浴びているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。システムをまたいでの作業やルーチンワーク自動化、さらにはノンプログラミングで導入できるとあって、RPAを活用する企業が続々と増えています。

一方で、RPAはAIを導入するまでの「対症療法」だ、という声もよく聞きます。結局AIがもっと進化すれば、RPAという「つなぎ」を使わなくとも、いずれシステムをすべてAI搭載のものに刷新できるのでRPAは無駄だ、という主張です。

これらの議論は日本特有なのか?海外ではRPAの導入状況はどうなっているのか?そこを突き止めるべく、RPAソリューションサービス「BizRobo!」を提供し、海外RPAツールのマスターリセラーでもある、RPAテクノロジーズ 執行役員の笠井 直人氏にお話を伺いました。

笠井 直人
RPAテクノロジーズ株式会社 / 最高執行責任者
大学在学中に、インターンとしてビズロボジャパン株式会社(現RPAテクノロジーズ株式会社)に参画、2015年同社に入社。RPAトータルソリューション「BizRobo!」の導入支援や、RPAを活用した事業開発に従事。2016年、一般社団法人日本RPA協会委員に就任。

日本はボトムアップ、海外はトップダウンで導入が進む

――RPAテクノロジーズは、海外ベンダーのRPAツールもサブリセラーとして販売されていますが、海外と日本でニーズの違いはあるんでしょうか?

――笠井
「RPAベンダーが増加している欧米では、トップダウンで導入されるケースが多いです。会社の業務の全体最適の方法としてRPAが検討され、かつそれがもともと文化としてあるので、トップも現場の業務をきちんと理解して、全社的に導入する意向を示し、実現していきます」

トップダウンという理由のほかにも、地理的、歴史的背景から現場の作業も細切れにされているため、RPAの導入も進みやすいといいます。ジョブディスクリプションがしっかりと定義され、分業が進んでいるため、RPAを導入する下地である、業務整理ができているそう。

日本では歴史的に、業務内容が明確に定義されないことも多いです。歴史的というのは、島国で統一の価値観を持った人間の組織で、長期雇用を前提に運用されているということ。

そのため、業務が属人化したり、同じ業務でも人によってやり方が違ったり……導入を適切に進めるためには、まずは業務の棚卸しから始めることが肝要そうです。

――笠井
「日本でRPAを導入する際は、現場のニーズからボトムアップで導入が進むケースが多いです。導入もまずは一部署でトライアル導入し、うまくいけば横展開していくパターン。

日本では『シャドーIT』も大きな問題になるほど、経営陣が末端の業務がどうおこなわれているか把握していませんし、現場では解決したい課題が山ほどある。なので全体最適にはならず、個別最適としてRPAの検討が進む。RPAが『対症療法』と言われるのもこうした背景があるからでしょう」

シャドーIT
企業側が把握していないところで従業員がITを活用すること。情報システム部門が管理していないので、セキュリティの観点から問題がある。

経営陣が勝手にSIerと話をつけてきてしまい、現場は業務の現状に即していないシステムを使わされ続け、かえって生産性が低下している……というのは残念ながらよく聞く話。経営陣が現場の業務に理解がある、というのはとても重要な要素です。

――笠井
「日本はレガシーなシステムをすでに作り上げてしまっているので、変えられない。全体最適を目指し、システムで抜本的に変えるとなると数億とかかる世界です。

そもそも、レガシーがあるからオペレーションが生まれるんです。レガシーが積み上がっていない新興国などでは、最新の技術が惜しみなくシステムやオペレーションへ投下されます。フィンテックで言うアフリカなんかもそうですよね」

これまで何十年と使ってきたシステムが積み上がっている。だからこそ、RPAではレガシーを大きく変えずに業務効率化ができる存在として注目を集めています。

しかし、本来であれば根本的に業務を見直せるのがベストなはず。RPAが「対症療法」と言われる理由もここにあります。まずは業務の抜本的な見直しを大前提として、難しければRPAを検討するプロセスを踏むことが、RPAを対症療法にしないためには必要です。

OCR連携はどの程度の精度が出ればROIに見合うかを考える

――日本ではどういったRPAのニーズが多いのでしょうか?

――笠井
「先程申し上げた背景もあり、特定の用途に絞った要望が多く、一番多いのはバックオフィス系の業務。主に領収書の仕分けや経費精算の自動化です」

バックオフィス業務は大企業でもスタートアップでも、やることに大きな違いはありません。バックオフィス業務の量がいくら増えても利益には直結しないので、RPAでもっとも効率化すべき業務といえます。

――笠井
「紙の文書をデータ化するためにOCRと連携させるニーズも多いですが、文字認識の精度は100%ではないので、人の目はどうしても必要になります」
OCR
光学的文字認識。手書きや印刷された文字をスキャナーで読み取り、テキストデータに変換する。

そもそも人間も文字の読み間違いをするように、OCRも100%の精度はありえません。たとえば、RPAテクノロジーズが提供する Document RPAは、紙文書のデータ化や仕分けをワンストップでサポートするRPAツールですが、

  • OCRで入力した帳票を機械学習で分類
  • スキャンデータのノイズを除去
  • 書いてある数字を足し算してエクセルに入力
  • そのエクセルファイルを特定のフォルダに格納

まではすでに可能だといいます。人の目が必要といえど、ここまで機械がやってくれれば大幅な業務の削減になります。そもそも100%は必要なのか?どの程度の精度であれば十分なのか?を考えつつ導入を検討することで、ROIが見えてくると思います。

「RPAの大衆化」には認知拡大が不可欠

――「RPAの大衆化」を目指されているRPAテクノロジーズですが、日本でそれを目指す上での障壁は何でしょうか?

――笠井
「認知が大きな課題ですね。首都圏ではRPAの存在が広く認知されつつありますが、やはり情報がないところでRPAは導入しにくい」

笠井さんいわく、地方ではRPAはまったく知られていないか、知られていてもAIとの区別がついていない、または「なんでもできる」と思われているか。しかし、過疎化や労働人口不足が進む地方にこそRPAのニーズがあります。

RPAテクノロジーズは広島にロボットセンターを構えて、地方におけるRPA普及を後押ししていく計画を進めています。これを全国でおこなっていくことが当面の課題だといいます。

――笠井
「RPAを導入しても定着しないケースも多いので、企業内でのRPAの内製化を進めるのも課題です。弊社では導入後もどのようにロボットを作成しマネージメントすべきか、といったことまで研修をおこなっています」

内製化が進まない現場でよくあるのが、

  • 導入してもメンテナンス方法がわからない
  • システムの一部変更があった場合にロボットが止まる
  • ベンダーに問い合わせてもよくわからない返答……
  • 挙げ句に高い金額を請求され、面倒くさくなってそのまま放置

というパターン。

海外ベンダーの場合、問い合わせが英語対応のみ、そもそも時差が……というケースもあったりするので、できることなら内製化したいもの。サービスとして内製化に向けた研修をおこなってくれるのはかなり助かります。

海外のお話をお聞きすると、経営陣が現場の業務を理解しないまま導入に至ってしまうなど、まだまだ日本には大きな課題があると感じます。

RPAに限らず、「このような理由があるからこの作業が発生している」と自社のビジネスモデルをしっかり理解して日々の業務を捉えることで、業務効率化への土壌ができます。

RPA導入には、「現場を把握する」文化をつくることがもっとも重要で、かつ難しいのかもしれません。RPAで働き方改革を推進したい企業は、まずは現場がどのような作業をおこなっているのか、把握することから始めてみるのはいかがでしょう。