RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは|AIとの違い・メリット・ツール・導入事例

このエントリーをはてなブックマークに追加


RPAとは、デスクワークを代行させることが可能となるソフトウェアロボットのことを指し、働き方改革に加え、コロナ流行に伴う労働環境の変化を背景に、AIと並び大きな注目を浴びています。本稿では、RPAで出来ること、AIとの違い、RPA導入のメリット、代表的なRPAツールの比較紹介、RPAの導入事例まで解説します。

RPAとは

RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、主にホワイトカラーがパソコンで行うデスクワークを、ルールエンジンや人工知能によって代行・自動化できる「ソフトウェアロボット」のことを指します。多くの人がロボットと聞いてイメージするであろう、機械のロボットとは異なります。

作業を代行・自動化してくれるソフトウェアロボットは、「デジタルレイバー」や「デジタルワーカー」、もしくは「仮想知的労働者」などと呼ばれることもあります。

なぜRPAが注目されているのか?

RPAが注目される背景としては主に、

①マクロ的要因: 少子高齢化の進行による労働人口減少
②ミクロ的要因: 企業でのデジタル・トランスフォーメーションの進行

の2つの要因があります。

①少子高齢化の進行による労働人口減少

日本の人口は2010年の1億2,800万人をピークに、以降減少を続け、2029年には1億2000万人を下回り、2060年には9,000万人近くまで落ち込むと予想されています。労働人口が1990年を境に減少する中、高齢者数・割合は増加を続け、2060年頃にはその数は総人口の40%近くに達する見込みです。このペースで少子高齢化が進行すれば、2065年には65歳以上の高齢者1人を、1.3人の現役世代が支える超高齢化社会が到来します。


出典:政府広報オンライン「改革の背景 少子高齢化という社会の変化」

日本の経済・社会を維持するためには、労働人口にあたる世代の生産性を向上させることが必須となります。これは日本の企業にとっても同じです。既に人手不足は顕在化している上に、外国人労働者受け入れ等の現在行われている対策のみでは、労働人口減少の進行スピードに対応しきれなくなりつつあります。

そういった状況に直面する企業が、ビジネスを維持する手段として注目しているのがRPAです。

日本国内でブルーカラーが働く工場では、ベルトコンベアなどの大型設備をベースに、その上で産業用ロボットが作業をし、人間はロボットができない作業をする、という3層構造での業務のライン化が既に進んでいました。

一方でホワイトカラーが働くオフィスでは、ベースとなる基幹システム(ERP)があり、ERP上で人が作業をする、という2層構造になっており、オフィス内での単純作業を減らすにはERPシステムを改良するか、作業をアウトソースするか、といった解決策しかありませんでした。


ledge.ai編集部作成

そこで登場したのがRPAです。人とシステムの間で発生する単純作業を担う存在として、RPAがオフィスに導入されることにより、工場と同様に業務のライン化が可能になり、生産性の改善が見込めるのです。


ledge.ai編集部作成

②デジタル・トランスフォーメーションの進行

RPAへの関心が高まっている背景には、少子高齢化による生産性向上への要請というマクロ的要因に加え、企業側でのデジタル・トランスフォーメーション(DX)の進展というミクロ的要因も存在します。


Photo on Pixabay

経済産業省の資料(2018)では、DX(デジタルトランスフォーメーション)は、

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

出典:経済産業省資料「DX推進指標とそのガイダンス」

と説明されています。
すなわち「企業活動でデータとITを使いこなすこと」と言っていいでしょう。

 

世界規模であらゆる産業へITの浸透が進む中で、日本企業内でも否応なく「守りのIT」領域「攻めのIT」領域の両者で進展しました。

「守りのIT」 費用削減(業務効率化、セキュリティ強化)
「攻めのIT」 売上上昇(新ビジネス価値創出、新たな顧客ニーズ発掘)

「守りのIT」領域では、レガシーシステムと呼ばれる旧式のITシステムの更新に加え、オンプレミスシステムからクラウドシステムへの移行が急速に進むにつれ、各部門間で様々なERPやSaaSが乱立し、統合的なITシステム運用が難しくなることが多くなりました。

一方「攻めのIT」領域では、ビッグデータ分析を用いた新プロジェクトが立ち上がる中で、ブラウザやツールを横断してデータを収集し分析する場面が増えつつあります。

このようにツールやブラウザを横断して一元的にデータ・システムを分析・管理する事が増え、あるシステムのデータを別のシステムに取り込むような定型業務を担う役割として、RPAのニーズが高まっているわけです。


出典:ITR「ITR Market View:AI/RPA市場2017」

RPAでできること

RPAができることを大雑把に言えば「業務の自動化」ですが、その自動化の度合によりRPAは更に三段階に分類でき、それぞれの段階でできることも異なります。以下ではその三段階をそれぞれ解説します。

ステージ1「RPA(Robotic Process Automation)」

一番初歩的なステージで、データ入力等の定型作業を行えます。事前に設定されたルールに従うため、ルール・業務の変更に併せて都度カスタマイズが必要となります。

ステージ2「EPA(Enhanced Process Automation)」

AIと連携することにより、大量のデータを処理することが可能となったのがEPAです。ルールベースで定型業務をこなすだけではなく、大量の画像を特徴別に分類する(画像認識)、またビッグデータから顧客傾向を分析することなどが可能になります。AIが自ら分析を行うことにより、イレギュラーな状況への対応も可能となります。

ステージ3「CA(Cognitive Automation)」

AIが人間から定義された作業をするのではなく、受けとったデータに合わせ、AIが自ら分析手段・適切なアウトプットまで考え、作業フローを自ら構築するところまで可能となったのがCAです。分析の中で学習を行い、自ら構築したルールを適切な形にアップデートすることも可能です。

RPAとAIの違いとは

これまで解説でも述べたように、ある意味RPAとは「ソフトウェアロボット」という一つの概念であり、具体的な定義があるわけではありません。実際に自動化のフェーズが上がったEPAやCAは、AIと融合したものになっています。ここではまず、定型作業が中心である「ステージ1のRPA」とAIの違いを解説します。

RPA(ステージ1)とAIの違い

ステージ1RPAができることは、あくまで「定型作業」です。RPAの運用においては、まずRPAの作業手順を人間が定め、その手順に厳格に従いRPAが業務をこなします。RPAが定められた手順を踏み越えて能動的な判断を下すことはありません。

一方のAIができる作業は、「予測・分類・実行などの判断を伴う作業」です。人間が定めるのは作業手順というよりも、学習用データと数理モデルに基づき作成された、判断の基準となるアルゴリズムであり、そのモデルをもとにAIが主体となって判断を行います。


ledge.ai編集部作成

その他にも、AIシステムの構築においてはプログラミングが必要であり、社内のIT部門との連携が重要であるのに対し、RPAは業務ルールの作成に専門的なプログラミングの知識も必要なく、業務部門が独自で導入し運用するハードルが低いと言えます。

RPAとAIの掛け合わせでできる業務効率化

RPAは単純作業、AIは判断を伴う作業、というようにそれぞれできる作業が異なることを解説してきましたが、現実世界のオフィスワーカーが行う一連の業務は、往々にして前者と後者の組み合わせであることが大半です。故に、RPAとAIを組み合わせた業務効率化はオフィスの生産性を大きく上げることが可能です。


Photo on Pixabay&いらすとや

具体的には上の図の経費清算のように、紙の手書き文字や画像、音声などの「非構造化データ」AIで「構造化データ」に変換してRPAが読み取れる形にし、そのデータを用いて人間が行うルーチンワークをRPAで代替する、といった業務効率化が考えられます。

 

 

補足:RPAとVBA、GASの違いとは?

RPAと同じく日々の業務を効率化してくれるツールとして、VBA(Visual Basic for Applications)GAS(Google Apps Script)などがあります。これらはRPAとは異なり、自動化したい作業フローをコーディング(VBA:独自コマンド、GAS:JavaScript)で実装する必要があります。

VBAはエクセルで行う作業を自動化してくれるプログラミング言語です。自動化したい作業がエクセル内で完結する場合は、VBAは効率的と言えます。

GASはGmailやGoogleドキュメント、スプレッドシートなどのGoogleが提供するアプリケーションを横断して連携させ、自動で作業を行ってくれます。JavaScriptでのコーディングができる人材が社内に居れば、GASでもかなり広い幅での業務効率化を実現できるでしょう。

RPAの活用シーン


参考:Kinetic Consulting Service社資料「The Case for Robotic Process Automation」よりGV独自作成

RPAは、あらゆる会社の財務/経理や人事業務などのバックオフィス業務に導入が進んでいます。また金融から医療、政府機関に及ぶまで様々な業界でも活用が進んでいます。

RPA導入の効果が大きい業務の特徴

業界・部門を問わず導入と活用が進むRPAですが、どんな業務にでも適用できる訳ではありません。導入効果が表れやすい業務の特徴として、以下の3点が上げられます。

1. ルール化しやすい業務
固定化された作業フロー、厳格なルールに基づいて行われる業務は、RPAに作業ルールをインプットするのが容易であり、導入効果も大きいでしょう。
例)問い合わせフォームに届いた内容を、ファイルに自動で記録する作業

2. 繰り返しの多い業務
ある特定の動作を繰り返すだけの業務も、24時間働いても疲れないRPAの得意領域と言えます。
例)特定のファイルから特定のファイルへデータをコピー&ペーストする作業

3. パソコンのみで完了する業務
パソコン内でのルーチンワークは、ソフトウェアロボットであるRPAの強みが活きる領域です。ただ入力情報が紙媒体であるなど、一部作業フローがオフライン環境で行われる場合でも、AIを上手くRPAと組み合わせれば効果が見込めるケースも多く存在します。
例)各店舗から連絡があった売上高情報を、本部基幹システムに登録する作業

RPAのメリット・注意点とは?

RPA導入により業務の効率化・高速化などのメリットを享受できる一方で、運用・システム維持の面では注意すべき点があります。以下で詳しく解説します。

RPA導入のメリット

1. 業務の質の安定化・向上
24時間疲れることなく働くことのできるRPAに業務を代替させることにより、人の手で業務を行った際に発生しがちなミスをなくすことができます。基本的に人が定めたルールに完全に従い作業を進めるため、ルールに問題がなければ機械が誤った作業を行う事態は発生しません。
また、単純作業から従業員を解放し、より創造的な仕事に時間を割けるようになることで、全社で業務の質の向上も期待できるでしょう。

2. 作業の高速化
コンピューターのプログラムで駆動するRPAは、人よりも圧倒的に早いスピードで業務をこなすことができます。

3. 人件費の削減・効率的運用が可能に
RPA導入は人間が行っていた業務をそのまま機械に代替させるということであり、業務の質はそのままに人間の労働力を削減できることを意味します。RPAを導入した業務を元々アウトソースしていた場合は人件費の削減に、社内で行っていた場合は、人員をより人手が必要な部門に配置することが可能になります。

RPA導入時の注意点

1. 社内でのRPAシステム浸透の難しさ
RPAシステムは一度社内に浸透すれば高い効果を発揮しますが、そのシステムを従業員に浸透させるには時間がかかります。導入初期に寄せられる、手作業の方が効率が良いといった声や、作業が分からない従業員にどう対応するか、などの運用体制の構築が重要です。

2. RPAシステム運用体制の維持
RPAは厳格な手順ルールに沿って作業を行うために、誤った手順ルールを設定してしまうと関連業務全体に影響を及ぼします。定期的なシステム保守・点検や、システムを扱える担当者確保が重要です。
また業務内容が変更された際に、新たなルール設定ができる人間を常に確保している必要もあります。こういった導入体制維持の観点は、RPAシステム導入当初から考慮しておくことが重要でしょう。

代表的なRPAツールをご紹介

国内で既に普及しているRPAシステムには様々なものがありますが、本稿ではその中でも特に日本でユーザー数の多い「UiPath」「Winactor」「BizRobo!」の3つを解説していきます。

UiPath


出典:UiPath社HP RPA ロボティック・プロセス・オートメーション

米国発のRPAツールであり、世界シェアNo1を誇るのが「UiPath」です。ユーザビリティに優れたUIと、API連携の幅の広さを特徴とし、日本でも導入企業は増加しています。自動化ツールの開発環境も提供しており、ロボットの業務の流れの構築のしやすさ、ドラッグ&ドロップでの人の作業の流れをロボットに覚えさせることができます。

Winactor


出典:Winactor 商品紹介

NTTグループが開発されたRPAツールの「Winactor」は、国内シェアNo1を誇ります。開発元が日本企業であるため日本語に完全対応しており、GUIで全ての操作が完了するためプログラミングスキルがなくても操作可能です。また、RPAツールにはERPの裏側に組み込まれているものが多い一方、WinActorは個人でも使いこなすのが容易という特徴があります。

BizRobo!


出典:RPAテクノロジーズ社HP

日本のRPAテクノロジーズ株式会社が提供するRPAツールが「BizRobo!」です。アメリカのKofax社が提供する、データスクレイピング技術を中心としたWebインテグレーション「Kofax Kapow 10」を、日本市場向けに改善したものです。サーバー上で稼働するバックグラウンド型RPAであり、複数のロボットを一元管理できる上に、サーバー上にインストールするため個々のPCのスペックに左右されない、という特徴を持ちます。

AIとRPAを組み合わせた業務導入事例

「RPAとAIの違い」でも解説した通り、単純作業を得意とするRPAと、思考を伴う作業を得意とするAIを組み合わせれば、どちらかを単体で導入するよりも大きな効率化を達成できます。ここではこれまでLedge.aiで取り上げた事例を取り上げながら解説していきます。

【オープンハウス】AI×RPAで年間2万5700時間の工数削減


未だアナログ文化が根強い不動産業界において、ITの導入を進めるオープンハウス。公開されている取扱い物件を顧客に紹介する際に、その物件のデータを自社の案内資料フォーマットにはめ込む「帯変え」といわれる業務にAI×RPAシステムを導入しました。物件の情報取得にRPAを導入し、その情報をもとにした帯替え作業にAIを導入することにより、年間でなんと2万5700時間もの工数削減に成功しています。

【CAC】AI×RPAで業務効率化の可能範囲を拡大


社会や産業のデジタルイノベーションに取り組むシーエーシーが、ABBYYジャパン、およびテンダと共同で開発したのが「CAC RPA +Oneソリューション」です。「従来型OCRの精度が低い」「RPAで大体出来る業務の洗い出しが難しい」「社内システムがRPAに対応させるのが大変」といったRPA導入を阻む課題を、3社それぞれの強みを掛け合わせたソリューション提供により解決しています。

【モランボン】受注業務を自動化


「ジャン 焼肉の生だれ」などのさまざまな調味料・食品を全国の消費者に届けるモランボンは、Web経由の受注データのダウンロード作業を自動化できるRPAツール「Autoブラウザ名人」を導入しています。Autoブラウザ名人は受注業務のみならず、物流、販売、経理、マーケティングなど様々な業務への導入が可能です。

ビジネスでますます重要性を増すRPA×AI

あらゆる業界でデジタル・トランスフォーメーションが進む中で、RPAの導入はコスト削減といった「守り」の観点だけでなく、ビッグデータ活用の推進や新たなビジネス価値の創出といった「攻め」の観点でも非常に重要です。そういった攻めのIT経営を進めていく中で、AIとRPAを上手く連携させたビジネスの展開が、企業の更なる成長を握る鍵となるでしょう。