2018年9月12日~13日の2日間にわたり、 RPAテクノロジーズ株式会社主催イベント「BizRobo! LAND」が開催されました。
アビームコンサルティング株式会社 執行役員 安部慶喜 氏による基調講演『調査結果に基づくRPAの導入実態と「進化する」RPA』の内容をお伝えします。
多くの企業でRPA導入が進む中、RPAは単なる技術革新ではなく、新しい働き方であると安部氏は主張します。新しい働き方を企業はどのように受け入れ、適応するべきなのでしょうか。
アビームコンサルティング株式会社
戦略ビジネスユニット 執行役員 プリンシパル
デジタル変革による価値創出はすでに起こっている
「情報のデジタル化(Digitization)、デジタル情報の活用(Digitalization)に次ぐ、デジタル変革による価値創出(Digital Transformation)が2年程前から起きています。いち早くデジタルを使って仕事の仕方やプロセス、事業の変革に取り組んだ企業が生き残れると考えます」
- 情報のデジタル化(Digitization)
- デジタル情報の活用(Digitalization)
- デジタル変革による価値創出(Digital Transformation)
例:紙上の情報をPDF化する。
例:PDF上の情報をデータ化する。
例:デジタルによって仕事のプロセスや事業を変える。
安部氏がこのように言い切るのはなぜでしょうか。
2018年上期における、日本RPA協会とRPAテクノロジーズ、アビームコンサルティングに対しての問い合わせ、及びRPA導入実績件数を分析対象とした調査データが安部氏から発表されました。RPA導入の実態を示したこのデータが安部氏の発言を裏付けています。
「大規模企業の約8割がトライアル含めRPA導入に着手しています。従業員数300人未満の小規模企業でも約半数はRPA導入に着手している状況です。」
過半数以上の企業でRPA導入が始まっており、2018年中でRPAに手をつけない大企業はなくなりそうな勢いです。
これだけ急速にRPAを導入すると、仕事の仕方が変わったり、ロボット管理業務が新たに発生したり、業務への影響が大きそうです。このような変化に対し、どう対応するべきなのでしょうか?
RPA導入のカギは社内組織の変革
安部氏によれば、どの企業でも課題が多いようです。
「業務部門に対してRPA導入のニーズを調べると、想定していた以上の数の案件や、難易度の高い開発要望が出てくることが多いです。実際に、RPA推進企業の約3割で、業務担当者のみでは案件を捌き切れないケースが発生しており、今後どのように開発者を育成していくかが課題です。
また、運用・統制ルールの未整備により、RPA推進企業の約2割でエラーハンドリングの方法などが決められていません」
エラーに気がつかず、得意先から指摘されて初めて気がつく……なんてことは絶対に避けたいもの。しかし、多くの導入企業にはRPAの取り扱いに関するノウハウがありません。
このような課題を克服するためには、「社内組織の変革が必要」であると安部氏は強調します。
「自社の業務プロセスにRPAを組み込み、管理、運営する専門組織が必要です。調査したRPA導入企業においても、トライアルの段階では情報システム部が主導しますが、本格展開時には約4割の企業がRPA推進組織専門の組織を立ち上げています。
また、RPAを実際に使う業務部門にロボットオーナーを置いて管理することで、各部門でのノウハウの蓄積に繋げることも重要です」
確かに、RPAのことならなんでも聞ける専門家が社内にいると、心強いです。今でこそ、どの会社にも情報システム部門は存在していますが、コンピューターやインターネットの誕生以前は存在しませんでした。それと同じように、RPAの専門組織を作ることが当たり前の時代となることが予想されます。
RPA導入を進めるにあたり、RPA専門組織の立ち上げからおこなうのもひとつの手ではないでしょうか。
次なるRPAでさらに業務の自動化を
次々とRPAの導入が進んでいるところですが、OCRやAIと組み合わせた次なるRPAの活用についても安部氏から話がありました。
現在一般的に普及しているRPAはStage1ですが、今後はStage2、Stage3の活用が増えてくるといいます。
「先進企業ではすでにStage 2の導入が進んでいます。
具体的には、RPAとOCRを組み合わせることで、紙上の情報をPDF化、そしてデータ化することができます。
請求書の例を挙げてみましょう。まず、PDF化した請求書から電話番号や口座番号をOCRが読み取り、データ化します。かすれて読み取れなかった会社名なども単純にエラーとして認識されるのではなく、RPAが過去履歴を元に推測してデータを入力できるんです。
人間は確認作業をかねてデータを登録するだけで良くなり、業務効率が格段に上がります」
日々、請求書の処理に追われている方には朗報です。OCRによっては、PDF上データのレイアウトまで読み取ることができるため、何社もの異なるレイアウトの請求書をRPAで処理できるようになります。
人間はオペレーション業務から企画業務へ
RPAを、ほかのデジタルテクノロジーと掛け合わせることで、人間の業務時間は大幅に削減され、削減できる業務の幅も広がりそうです。この空いた時間に人間が何をするかが、企業の存続を左右すると安部氏は主張します。
「RPAで削減した時間で、顧客サービスの強化や新しい事業へのチャレンジといった、より利益に直結する企画業務に人間は注力できるようになります。」
特にマネージャー層が管理に費やしている時間を削減し、戦略立案の時間を増やすことで、より生産性の高い仕事を実現できるといいます。
RPA導入により、業務の高度化に成功した企業がこれから勝ち残っていく。RPAは未来のテクノロジーではなく、まさに今取り入れるべき働き方のひとつではないでしょうか。