握手を交わす常総市長神達氏(左)とセンスタイムジャパン代表 勞 世竑氏(右)
米リサーチ会社CB Insightsが最も有望なAI企業100社を選ぶ「AI 100」の2019年版が発表された。日本からは「ABEJA Platform」などを提供するABEJAがランクインしている。
驚異的なのが、もっとも多くの資金を調達したAI企業で、1位がセンスタイム、2位がFace++と中国勢がトップを独占している点だろう。両社とも画像認識技術を強みとし、中国政府にも技術を提供している。
センスタイムに至っては2位のFace++にさえもダブルスコア以上の大差を付け、約1,6ビリオンドル(1600億円)の資金をこれまでに調達している。
茨城県常総市に自動運転のテストコースを開設
センスタイムは2018年前半の時点で、すでに最も価値が高いAI企業となっている。そのセンスタイムが、日本での動向を活発化させている。
1月11日、センスタイムジャパンは、茨城県常総市にて同市の自動車学校の跡地を利用した自動運転のテストコースを開設した。このコースを利用し、自動運転の研究開発や走行テストを行っていくという。
センスタイムジャパンのブログに、テストコースを見つけるまでの苦労話が書かれている。自動運転のテストに必要となる、
- 自動運転設備が作れる土地の広さ
- 東京から車で行ける距離
- 坂道やS字クランク、踏切や縦列駐車ができるようなスペース
などの条件に当てはまる土地を探すのに、かなり手こずったようだ。
センスタイムの自動運転テストコース新設について、常総市市長の神達氏は下記のように小コメントしている。
「世界トップレベルのICT技術を持つセンスタイムが,この地を自動運転の研究開発拠点地に選んでいただいたことに心より感謝いたします。
自動運転車の実現は,これからの交通体系に大きな変革を与えることは勿論のこと,地域の交通課題にも大きく寄与するものと考えております。
センスタイムの力で自動運転車が一日も早くこの常総市の道路を走行することを願って,市としても最大限の協力と連携を図ってまいりたいと考えております」
どんな道路でも安全に走れる自動運転を実現するためには、道幅が大きな道路の走行データだけでなく、道幅が狭い道路などの走行データも必要だ。
日本は中国に比べ、道幅が狭い。また道路環境の整備も行き届いているため、安全性の面からも、まだデータを取れていないデータが取れるテストコースとしてぴったりハマったのだろう。自治体や地域との連携も積極的に進めていくとしていることから、テストコースのみならず、常総市の公道での実証実験も今後進んでいくかもしれない。
DeNAとも提携を発表。顔認識ソリューションの共同販売へ
センスタイムは1月22日に、DeNAとの業務提携も発表している。センスタイムが提供するSenseME、SenseID、SenseMediaなどの顔認識技術を活用したAIソリューションを日本で販売する。
この提携を皮切りに、DeNAがこれまでのインターネットサービスの運営を通じて蓄積してきたAI技術活用の経験と、センスタイムの画像認識に関する知見とAI技術を組み合わせ、ゲーム・エンターテインメント、スポーツ、ヘルスケア、eコマース、小売やメディア業界など、画像・映像を扱うあらゆる産業での活用を推進するとしている。
SenseME
SenseMEは画像や動画から、顔や全身の特徴を把握し、リアルタイムにモバイルでデコレーションやエフェクト、スティッカー等の画像、映像処理が可能。動画配信サービスや写真加工アプリ、広告表示の属性判定など、100以上のサービスに導入されている。
DeNAでは、ソーシャルライブ配信サービス「Pococha(ポコチャ)」で既に導入されており、仮想ライブ空間「SHOWROOM」でも導入予定だ。次世代タクシー配車アプリ「MOV(モブ)」が提携するタクシーの、後部座席のタブレットで配信される動画広告「Premium Taxi Vision」においても導入を予定している。
SenseID
身分証明写真との比較による本人確認や、生体認証をオンラインデバイス及びオンラインで行える。画像・動画から判断するなど、ニーズに合わせた方法で生体の判断を行うことができる。
DeNAの個人間カーシェアアプリ「Anyca(エニカ)」でも導入を予定しており、Webサービスの本人確認時などがユースケースとして期待される。
SenseMedia
動画の特徴を捉え、内容を認識・解析した結果をもとにハイライト動画の生成や要約、異常検知などが可能。人の手を介さず動画を要約できるため、スポーツ動画や広告分析などでの応用が期待される。
センスタイムにとって、DeNAとの提携は日本のマーケットを「面」で取っていく第一歩だ。SenseMEやSenseID、 SenseMediaといったプラットフォームを、いち早く日本の画像認識技術のデファクトスタンダードにできれば、日本での展開においてかなりの優位性を得る。
そして、日本のAIスタートアップは、日本進出を着々と進める“世界最強”のAIスタートアップとどのように渡り合っていくのか。今後に注目したい。