「新しい働き方」のリファレンス〜アステリアの新オフィスにおけるAIとIoTの活用を潜入レポート

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ノーコードでAIやIoTを簡単に統合活用できるプラットフォーム「Gravio」で知られる、アステリア株式会社は東京・恵比寿に新オフィスをオープンした。アステリアは国内外に約130人前後の従業員を抱えるものの、新オフィスはたった74平米で出社上限はわずか15名だ。

一般的には「リモートワーク中心とはいえ、もっと広いオフィスのほうが良い」「自分のテーブルや座席がほしい」「もっと出社上限を増やしてほしい」などの意見があると思いきや、アステリアの社員たちは新オフィスに大満足しているという。

今回、そんなオフィスを実現したアステリアからのお誘いもあり、最新のAIやIoTの使い方を特別レクチャーしてくれるというので「Ledge.ai」編集部が訪問してみた。

その結果、新オフィスには社員たちの要望を取り入れ、Gravioの強みであるIoTとAIがふんだんかつ適材適所に導入されており、社員たちの満足感も納得できる快適さだとわかった。

この記事では、新オフィスが社員たちの満足度が高い10の理由をIoTとAIの使用箇所を順に紹介したい。まずは、IoTからだ。

1.そうだ オフィス、行こう。オフィスの営業中をリモートで確認

さっそく新オフィスに潜入すると、おなじみの緑色のアステリアのロゴがお出迎えしてくれる。実は新オフィスはこの入り口部分から、すでに社員たちが大満足する秘密が隠されていた。

ドアの上の部分にIoT開閉センサーが設置されている

入り口にある鉄扉にはGravioのIoT開閉センサーが設置されている。扉が開閉するとチャットツール「Slack」に「恵比寿オフィスがオープン/クローズしました」と通知される仕組みだ。

アステリアでは営業中は常時、この扉は開いた状態にしており、オフィスから最後に帰宅する人が施錠を担当する。アステリアのリモートワーク率は90%を超えるため、1日誰もオフィスに行かない場合もある。そんな中で、Slackでオフィスが営業中だとわかると、「オフィスに誰か来ている。1人で寂しくならないので、今日はオフィスへ行こう」と思える。

Gravioはさまざまなデータを活用することで、警告ライトの表示、SlackやLINE WORKS、LINEなどのメッセージアプリのほか、Microsoft Power BI、Google スプレットシートでの表示など外部との連携ができる。データを活用し、ユーザーが実現したい環境を簡単に実現できるのが圧倒的な強みと言える。

2.人気の一人掛けソファー席、イス取りゲームが不要に

新オフィスには従業員のワークスペース用に1人用の椅子が複数席設置されている。集中力が持続するよう背もたれの面積が広い椅子のため、後ろから見ても、人が座っているかどうかは把握できない。のぞき込んで確認するのも気が引ける……。

デスクの下にIoT人感センサーが設置されている

このような課題を解決するため、新オフィスでは椅子の前に設置したデスクの下にGravioのIoT人感センサーが設置されている。椅子に人が座ると、すぐに感知して利用状況(利用中)を確認できるので、オフィスでイス取りゲームをしなくても良いのだ。

3.おもてなしもIoTで!冷たいお水の在庫管理もバッチリ!

新オフィス中央には、アステリアが社会貢献活動の一環として森林保全活動や観光・教育の領域での連携を深めている熊本県小国町のブランド材「小国杉」を使ったオシャレなバーカウンターがある。

冷蔵庫の左側にIoTディスタンスセンサーが設置されている

バーカウンターにある冷蔵庫にはGravioのLiDARスキャナ搭載のIoTディスタンスセンサーが設置されており、ミネラルウォーターのペットボトルの在庫を検知できる。水の在庫検知になぜディスタンスセンサーが使えるのか疑問に思うかもしれないが、ペットボトルまでの距離を同センサーで把握しており、数が減ることで距離が変わり、閾値を超えた際に通知する、という仕組みだ。

ミネラルウォーターの在庫が減ると、Slackに「冷蔵庫の水の残量が減っています。補充してください」と通知される。急な来客の際に冷水が用意できないという事態を回避できる取り組みと言える。

4.宅配便の伝票が使いたい時に切れる「あるある」を解決

新オフィスには複合機の下に宅配便の伝票置き場がある。

伝票置き場の上の部分にIoTディスタンスセンサーが設置されている

伝票置き場には同じくGravioのIoTディスタンスセンサーが採用されている。宅配便の伝票の残量が減ると、Slackへ通知してくれる仕組みだ。宅配便の伝票が使いたい時に切れているという「あるある」を解決できる。

アステリアの社員によると、この取り組みは総務の要望に応えて実現したという。同社の社員たちはAIやIoTを自分事として捉えて働いており、自分たちがメリットを得られるように創意工夫をしている。

それぞれの社員が「実現したいこと」をお互いに考えることでリモートワークで希薄になりがちなコミュニケーション醸成につながったり、さらに言えば新規採用や中途採用などでも、優秀な人材を確保するにはこのような取り組みは有用と言えるかもしれない。

5.温度、湿度、CO₂濃度がわかる個室席

新オフィスには1人用の個室席を複数個設置している。

ブースの上の部分が空席の場合は緑色、利用中の場合は赤色になる

IoT人感センサー(左)、IoT温湿度センサー(右)

個室席にはGravioのIoT人感センサーが設置されており、ブースの上の部分が空席の場合は緑色、利用中の場合は赤色になるので、利用状況をすぐに確認できる。

CO2センサー(左)、LEDマトリクス(右)

室内ではGravioのIoT温湿度センサーとIoT CO₂センサーが採用されており、温度、湿度に加え、CO₂濃度も監視している。アステリアの個室席ではCO₂濃度を表示するLEDマトリクスの数値を目安にして、利用者は換気を行っている。

オフィスにおけるCO₂濃度の適切な管理はコロナ禍における「密防止」だけではなく、その空間で働く個人の生産性、パフォーマンスの向上にもつながると言われる(※)。良い環境は良いビジネスの創出につながるため、社員にも経営者にもプラスとなる取り組みと言っても過言ではないだろう。

(※)「Research: Stale Office Air Is Making You Less Productive」

6.顔認証カメラAIで誰が出勤しているかわかる

エントランスに顔認証AIのカメラが設置されている

もちろん、オフィスに人がいるかいないかを把握するだけでは、誰が出社しているのかわからない。エントランスにはONVIF対応のカメラが設置されている。Gravioの顔認証カメラAI(IVAR)で社員(顔画像登録済)が入ってきた場合は、誰が入室したか検知して「○○さんが出勤しました」とSlack通知してくれる。

Bluetoothスピーカ(左)、アルコール消毒液(右)

また、取引先など来客(顔画像非登録者)の場合はBluetoothスピーカーから「いらっしゃいませ。アルコール消毒をお願いします」という音声が流れる。Gravioでは顔認証技術を利用して、このように社員と来客というまったく異なるケースでも対応可能だ。しかも、非常に簡単でわずか数分で設定できるという。

7.常にリアルタイムでオフィスにいる人数がわかる

入り口付近の天井に入退室検知AIのカメラが設置されている

入り口付近の天井にONVIF対応のカメラを発見した。アステリアの社員に聞いたところ、このカメラはAI入退室検知(IVAR)用のものという。

IVARのカメラ画像上に仮想の境界線を引き、その境界線を人が越えたら検知される。さらにクロスする方向に応じて、入室と退室を検知できる。

出勤した人だけではなく、退勤した人もカメラで把握できるため、常にリアルタイムでオフィスにいる人数がわかる。15人という出社上限にも簡単に対応できそうだ。

8.会議室で起きる空予約という「あるある」を回避

新オフィスの奥には10席の会議室がある。

モニターの上の部分には会議室内の人数検知を行うONVIF対応のカメラ、モニターの下の部分には測定したCO2濃度を表示するLEDマトリクスが設置されている

会議室にもネットワークカメラが設置されており、Gravioに搭載されているAI人数検知(Tensor Flow)により、現在会議室にいる人数をカウントできる。事前に予約していたものの、会議が流会になるなどの理由で生まれる「予約されているのに、誰も使っていない……」という「あるある」を回避可能だ。

10席それぞれの席の下にIoT人感センサーを設置する方法では費用がかかり、設定にも手間がかかる。このような場合、カメラなら一台でこれらの課題を解決できる。なお、カメラAI(人数検知)は、Gravioに標準搭載されている機能であり、ONVIF対応の一般的なネットワークカメラを用意するだけで利用可能だ。

テーブルの中央には高精度なNDIR(非分散型赤外線吸収法)方式を採用したCO2センサーが設置されている

テーブルの中央には、個室席にも採用されたCO2センサーが設置されている。会議室内のCO2濃度はモニターの下の部分に設置されたLEDマトリクスでわかる。

出入り口にある部屋の明かりのスイッチの下にIoT温湿度センサーが設置されている

会議室の出入り口にある部屋の明かりのスイッチの下にIoT温湿度センサーが設置されている。個室席と同じく、部屋の状況を可視化できる。

9.カウンター席の利用状況を確認できる

新オフィスには1人用の椅子、個室席、会議室のほか、カウンター席もある。

カウンター席の隅に人数検知を行うONVIF対応のカメラが設置されている

カウンター席にはカメラが設置されており、カメラAI(人数検知)で席の利用状況を確認できる。出社したものの、席が空いていないという状況は起こらなそうだ。

10.ワインが飲める社長のおごり自販機

バーカウンターはその言葉にふさわしく、ワインセラーを設置している。国内外のさまざまなワインやスパークリングが用意されているという。

カウンター席の隅に人数検知を行うONVIF対応のカメラが設置されている

カメラは15秒おきに映像を認識している。ワインセラーを解錠するためには、カメラの前の前に2人の人物が立つ必要がある

2人をカメラ検知すると、解錠と同時に代表取締役社長の平野氏による映像でのメッセージが流れる

普段、ワインセラーは施錠されており、カメラで2人を検知すると、ワインセラーが解錠する仕組みだ。解錠と同時に、スマートディスプレイに代表取締役社長の平野氏からのメッセージが流れる。言わば、アステリア版「社長のおごり自販機」である。

ワインセラーの中にはIoT温湿度センサーが設置されている

ワインセラーの上には、IoT開閉センサーが設置されている

この「社長のおごり自販機」は、一見オフィスにはふさわしくないと思えるかもしれないが、1人では解錠せず、2人いないと解錠できないのは注目してほしい。そして、2人は社員同士でも、社員とお客様でもいいということだ。社員証やIDカードに依存しないこの取り組みは、社内コミュニケーションのみならず、社外の顧客とのセレンディピティを活性化させることを目的としており、AIやIoTを簡単に実践できるGravioを持つアステリアならでは試みと言える。

小型サイズが特徴的なGravio Hub

なお、新オフィスのカメラやセンサーのデータはGravio Hubと呼ばれるIoTゲートウェイに収集され、データをもとにSlackに通知したり、代表取締役社長の平野氏からのメッセージを流したり、さまざまなことが実行可能だ。小さいパソコンのようなものだと考えれば良いだろう。

Gravio Monitorで表示したワインセラーの様子

また、バーカウンターや会議室などオフィス内に設置されたカメラやセンサーで得られたデータは、エッジで動作するBIツール「Gravio Monitor」というアプリを導入したスマホやタブレットで確認できる。対応OSはiOSとAndroid。オフィスで今何が起こっているかをひと目で見られるツールがあることで、AIやIoTの恩恵を存分に受けることができることになっている。

貸借型のオフィスでも実装できる手軽さ

この記事では、IoTとAIの順番にアステリア新オフィスが社員に愛される理由を見てきた。

Gravioはノーコードでデータ収集や活用が可能で誰でも簡単に実装できることが強みだ。コロナ禍には、1度作ったシステムでも時代にあわせて柔軟に対応する必要があることが明らかになった。Gravioは、ちょっとこう変更したい、ここもデータを取りたい、など進化する現場の要望にあわせて簡単に作り変えることができる。これは大きなメリットだ。

新オフィスは恵比寿プライムスクエアタワー19Fにある、いわゆる貸借型のオフィスだ。新オフィスにはIoT(センサー)とAI(カメラ)がふんだんに設置されているものの、これらはもとから設置されていたわけではなく、後付けですべてのセンサーが設置されている。貸借型のオフィスでも実装できるほど、どこでも簡単に実装できることも強みと言える。

IoT/AIを自分のワークプレイスで使おうとしたとき、どちらをどう使えばいいのか、そのイメージはなかなか浮かびづらいのではなかろうか。アステリアの新オフィスではそれぞれの費用面や設置の簡単さなどによって、IoT(センサー)とAI(カメラ)を適材適所で活用していることがわかる。

たとえば、会議室の人数検知では10席それぞれの席の下にIoT人感センサーを設置する方法では費用も手間もかかるため、ネットワークカメラ(AI)を設置する方法を選んだのは、その代表例だ。

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が注目を浴びる今こそ、何もかもIoTやAIを使えば良いと結論づけるのではなく、「IoTでできることはIoT」「AIでできることはAI」と適材適所で統合利活用することが重要だと考えられる。

Gravioは月額2万2000円でセンサー20個、ゲートウェイ1台、ソフトを使い放題だ。この一式でほとんどのことはでき、センサーの選定に悩む必要はないだろう。

Ledge.ai編集部もリモートワークを中心にしており、席数に限りがあるため、アステリアの顔認証AIで誰か出社したかわかる仕組みやカメラAI(人数検知)で席の利用状況を確認できる仕組みは、自社のオフィスでも取り入れたいと感じた。

アステリアの新オフィスのような機能を一部でも取り入れたい人はGravioの導入を検討してみては。