AI開発企業が同業他社をライバル視せずに協力関係を結ぶ理由

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沖電気工業株式会社(OKI)は2021年7月に「OKI AIソリューション・ビジネスマッチング」と題した、AI(人工知能)技術を自社のビジネス現場で活用したい企業と、AIを開発する企業を結ぶイベントを開催した。

このイベントに参加した企業のなかから、株式会社カタリナ 高橋氏、株式会社コンピュータマインド 石原氏、株式会社 Laboro.AI 和田氏の3名に集まってもらい、昨今の新型コロナウイルス感染拡大によって変わったこと、同イベントの感想、そして今後AI企業が考えなければならない点についてそれぞれ話を聞いた。なお、取材はオンライン上で実施し、ビデオ会議ツールを使用している。

株式会社カタリナ 高橋氏

株式会社コンピュータマインド 石原氏

株式会社Laboro.AI 和田氏

AI企業側も不安を感じる「一度も顔を合わせずに受注する」状況

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、さまざまな業界で企業の動き方が変わっている。そのなかでも、AIを開発する企業はどのような影響を受けたのか。

―― カタリナ・高橋氏
「新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめた2020年の前半は、たしかに進んでいたプロジェクトが一瞬止まったことはありました。しかし、短期的なものが多く、振り返ってみれば大きなトラブル等もありませんでした。

また、商談のほとんどがオンラインになったことで以前よりもスピード感をもって取り組めるケースが増えました。それこそ、直接顔を合わせないと話を進められなかった以前と比べると、オンライン化したことでコミュニケーションを取る機会が増えたことは非常に大きなポジティブ要素だと思います。

強いて言えば、オンライン上だと会話中の空気感をつかみきれているのか若干不安になることもありますね(笑)」

―― コンピュータマインド・石原氏
「カタリナさんがおっしゃったように、弊社としてもデメリットよりもメリットのほうが現在では大きいと感じています。一度も顔を合わせずに商談・受注・納品と進むケースは、不安と言いますか、不思議な感じがしますね(笑)。

とはいえ、オンラインによる打ち合わせが一般化したことで会話する機会が豊富になり、クライアント企業様の要望や課題を以前よりも汲み取りやすくなりました」

―― Laboro.AI・和田氏
「メリット部分については、おふたりの意見と同じですね。

デメリットと言えるほどではないですが、AI開発のなかには、どうしても現場に行かないと進められないものがあります。たとえば、画像に関するAIだと、通常はどのように見えているのかだったり、屋外のものであれば日光によってどういう影響があるのかだったりです。現場検証のために先方の企業に行くこともありますが、以前よりも緊張感が増したようには思います(笑)」

AI企業同士のつながりは日本の産業へのAI実装において必要不可欠

本稿で取材しているカタリナ、コンピュータマインド、Laboro.AIの3社は、先にも記載したとおりOKIが開催した、「OKI AIソリューション・ビジネスマッチング」に参加した企業だ。

OKI AIソリューション・ビジネスマッチングは、優れたイノベーション技術をもつ企業がそのほかの企業と共同でソリューションに昇華させることを狙いにしたイベント。つまりは、昨今の情勢として難しくなってしまった企業同士の横のつながりを創るイベントだ。このイベントについて取材した3社は次のように感想を述べた。

―― カタリナ・高橋氏
「弊社では、2020年ごろからさまざまなイベントに参加する意向でした。そのなかでも、OKIさんのイベントは、我々のようなニッチな技術を扱う企業でも興味を持っていただけやすい、ということから参加させていただきました。

マッチングイベントでは、人と人をオンラインでもこれだけ近づけられるのか、と改めて気が付けたのが非常に良いイベントだったと感じています。オンラインでのイベントは、参加企業にゆだねられる部分も多いですが、OKIさんが細かくハンドリングしてくれたことで、細かな部分までフォローできたと思います。

今回いっしょに取材を受けているコンピュータマインドさんやLaboro.AIさんともつながれたのも実はうれしい点です。自社だけではカバーしきれない分野があった際にも、横のつながりを創れたことで、新たなイノベーションを起こせるきっかけになりました。この点も踏まえて、OKIさんのイベントに参加して良かったと思います」

―― コンピュータマインド・石原氏
「イベント自体はもちろんですが、OKIさんのいろんな部署の方とお話できたのはうれしかったですね。OKIさんは非常に多岐に渡るサービスを展開されていますので、豊富な知見についてお聞きできたのは今後につながることばかりでした。

さまざまな企業様ともつながりをつくれたのもうれしかったことのひとつです。弊社の資料を見せるのはもちろんですが、オンラインで名刺交換などもできましたので、なかなか現状では難しい濃いコミュニケーションが取れました。今後はOKIさんが開催される『AIエッジ・ソリューションコンテスト』へも参加を検討しています。

我々は主に受託開発を中心としていますが、さまざまな業種業界へのソリューション開発を受けるため、その業種業界ごとのドメイン知識が必要になるケースは少なくありません。そのため、カタリナさんがおっしゃるとおり、1社だけで何かを起こそうとしても難しい局面があるので、AI企業同士が協力し、AIを使いたい企業の力になれるようにつながりが必要だと思っています」

―― Laboro.AI・和田氏
「弊社としては、物理的にもお客様とお会いする機会が減ってきていたので、今回のような商談イベントはありがたい限りでした。実際にマッチングイベントに参加した弊社の営業からも熱量などのフィードバックをもらっていたので、得られたものは大きかったです。

お二方のご意見に激しく同意する形にはなりますが、日本の産業にAIをさらに実装していくには、AIを使いたい企業とAI企業がつながるだけではなく、AI企業同士が協力することは今後必要不可欠だと思っています。そこをOKIさんがハブになり、AI企業同士がつながり、新しいモノを作れるのはとても有意義なことです。

そのきっかけを作れたこともあり、今回のイベントは参加して本当に良かったですね」

AIはシビアな目で見られるようになっている

最後に、今回取材した3社それぞれが今後考えているAI技術の展望について話を聞いた。

―― カタリナ・高橋氏
「我々は問題提起と言えるほどではないかもしれませんが、社会をより良くするための解決方法を発信していきたいと考えています。

カタリナでは、プライバシーに関わる映像や人物、物体を検出し、モザイク処理を自動でかける技術をもっています。たとえば、この技術をドライブレコーダーなどに実装させた場合は、住居の表札や通行人の顔など、写すことが好ましくないプライバシーに関わるモノをさらに保護できます。

これらのように、より良い社会を実現させるために、ある意味でメッセージのようなものを発信していきたいです」

―― コンピュータマインド・石原氏
「弊社では主に2点ございます。ひとつは、直近で言えば説明可能なAI技術など、日々進歩するAI技術を的確にキャッチアップし、必要なお客様に届けられるようにしていきます。昨今さまざまな技術論文が発表されていますので、新しい技術を必要とされる方にしっかり届ける体制を、いままで以上に整えていきたいと思います。

もうひとつは、先端技術同士を組み合わせることです。AIの話から若干それますが、自動運転などでも使われる点群データだったり、ロボットの制御だったりの技術を、ほかのAI技術などと組み合わせることで新たなソリューションの開発にチャレンジしていきます。最近ではAI技術だけではお客様の課題を解決しきれない状況もありますので、お客様のビジネス活性のためにも、さまざまな要望に応えられるようにしていきます」

―― Laboro.AI・和田氏
「AIを含めたテクノロジーのハイプサイクルが例年発表されていますが、如実にそのとおりになりつつあるなと感じています。というのも、AIはブームが過ぎたことで幻滅期に入っていると実感しています。ただ、幻滅期といいつつも、決して“廃れた”わけではなく、本当にビジネスに意味のあるものだけが企業に導入される、ある意味で当然の形に変化しています。

AIに対してシビアに見定められるようになったので、AIに対する技術力は当然求められますが、ビジネス側のサポートをできるようにしないといけません。AIの開発だけに特化させるのではなく、クライアント企業様に本当に向き合って意味のあるものを提供できるような力が求められるようになったのではないでしょうか。Laboro.AIとしても、こうした状況に対応するために、AIだけでなくAIを扱う会社の立場になって考えるような思考を重要視しています」

OKIはこのようなビジネスマッチングイベントを開催するなど、エコシステムを強く推進している。変化の激しい環境において得意な分野を持ち寄ることこそが、社会を豊かにし、同時にビジネスチャンスの拡大につながるのだと感じられるインタビューだった。

株式会社カタリナ
https://www.catalyna.jp/

株式会社コンピュータマインド
https://www.compmind.co.jp/

株式会社Laboro.AI
https://laboro.ai/

沖電気工業株式会社
https://www.oki.com/jp/AIedge/

OKI AIソリューション・ビジネスマッチング
https://www.oki.com/jp/AIedge/event/b_matching2021/

OKI AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト2021
https://www.oki.com/jp/AIedge/event/contest2021/