AIでベテラン農家の“経験”と“勘”を可視化。次世代「スマート農業」の姿

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さまざまな業界でAIの導入が進む中、農業分野へのAI導入がめざましいです。一見、AIとは全く異なる分野にある農業ですが、AI導入により生まれるビジネス価値は大きそうです。

農業就業人口の減少・高齢化など、日本の農業が抱える問題をAIは打破できるのでしょうか?

病害感染リスクを環境モニタリングとAIで予測する

たとえばボッシュの「Plantect(プランテクト)」の導入が累計4,000台の受注と、日本国内でも「農業 × AI」の動きが着々と進んでいます。

Plantectは、環境モニタリングとAIによる病害予測機能で構成されるスマート農業サービスです。

ハウス内に設置したセンサーで環境データを計測、AI技術を駆使したアルゴリズムにより、病害の感染リスクを92%と、かなりの高精度で予測します。

Plantectを利用するのに必要なのは、

  • 温度湿度センサー
  • 二酸化炭素センサー
  • 日射センサー
  • 通信機
  • スマートフォンまたはパソコン

と、大掛かりな工事は必要ないそう。

手の平に乗るくらい小さなサナギ形の各センサーは、アルカリ電池で作動するため、スペースが限られたハウス内でも、設置場所の調整が容易です。

作物が病害に感染するリスクを事前に知ることで、病害が発生する前に農薬を散布するなど、タイミングを逃さず対策を打つことができるようになります。また、病害によって廃棄する作物が減ることとなり、収穫量の増加につながりそうです。

さらに、計測したデータには、専用アプリをダウンロードしたスマホやパソコンからアクセスできるため、ハウス内環境の遠隔監視が可能。

「ちょっと畑の様子を見てくる」が農家の日常でしたが、AIを取り入れることで、スマホやパソコンで完結するようになります。

ハウス巡回の手間が減った分、別の作業を進めたり、作付け面積を増やしたりと、AIでは対応できない部分に時間を使えるようになります。

現在、病害予測サービスの対象となるハウス栽培作物はトマトのみとなっていますが、順次イチゴとキュウリのサービスも開始する予定とのことで、病害予測サービスがどんどん広がっていきそうです。

農家の勘「作業タイミング」や「収穫時期」をAIで可視化

分析できるのは病害リスクでだけではありません。

プラントライフシステムズの「KIBUN」は適切な水やりのタイミングや量、設定温度、収穫時期まで作業者に伝えます。

圃場内に設置したセンサーで測定した気温や湿度、水分量に加え、作物の成長過程や天候までAIで分析することで、適切な作業タイミングを割り出しています。

AIから作業のアドバイスをもらうことができれば、経験や勘に頼った作業が多い農業分野における、新規参入のハードルが低くなるのではないでしょうか。

Source:プラントライフシステムズ、栽培にAIとセンサー活用

ベテランの勘や経験をデータに。スマート農業でどう変わる?

農作業に関する多くのノウハウはベテラン農家の頭の中にあり、もちろんデータ化されていません。

しかし、今まで可視化されていなかったノウハウをデータとして蓄積することで、経験や勘だけでなく、データ分析に基づいた「スマート農業」を実現します。

ボッシュの病害予測サービス「Plantect」やプラントライフシステムズの「KIBUN」といった「農業 × AI」の事例をみると、

  • キツい
  • 汚い
  • 危険

の3Kという従来の農業が持つイメージとは程遠いものではないでしょうか。

現在、農業就業人口の減少・高齢化が進んでおり、社会問題となっています。農業にAIを取り入れることでイメージが改善されるだけでなく、収入増加や肉体労働削減と、農業就業人口の増加にもつながりそうです。

農業のような一見アナログに見える分野にこそ、AIを組み合わせることで大きな効果を発揮します。まずは農業やそのほかの社会問題とAIをつなげる発想を持つことから、始めていく必要がありそうです。


Source:日本発、ボッシュのスマート農業サービス「Plantect」が韓国、中国市場に進出