スマートシティ(Smart City)とは|国内・海外事例から見る新しいまちづくりのあり方

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テクノロジーの発展により、まち全体がインターネットでつながる近未来的なまちの実現もそう遠くはないかもしれません。この記事では、今世界中で注目されているスマートシティの実態や、国内・海外事例から見る新しいまちづくりのあり方について解説します。

スマートシティとは

スマートシティとは、『都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区』(国土交通省より)

スマートシティという言葉が社会に浸透し始めたのは2010年前後にさかのぼります。この頃から、スマートシティに関する取り組みは、世界でも多く報告されます。

二酸化炭素(CO2)排出ゼロを実現するために、ほぼ100%の再生可能エネルギー利用を目指したアラブ首長国連邦(UAE)・マスダールの「マスダールシティプロジェクト」や、Cisco(シスコ)社と連携し、市民の健康管理を管理するアメリカ・レイクノナ市の「Lake Nona Medical City」などが一例です。

しかし、これまでは特定の問題の解決のみを目指した、「個別分野特化型」のスマートシティの取り組み事例が先進事例として紹介されていました。

「分野横断型」のスマートシティ

近年の ICT・IoT・データ利活用型スマートシティは、「環境」「経済活動」「交通」「通信」「教育」「医療・健康」など、複数の分野に幅広く取り組む「分野横断型」のスマートシティをうたうものが増えてきています。例えば、国土交通省が定義するスマートシティは下記の5つの集合体で表されます。

・Accessibility(交通)
・Nature(自然との共生)
・Energy(省エネルギー)
・Safety & Security(安全安心)
・Recycle(資源循環)

スマートシティを支える技術

photo by pixabay

スマートシティの根幹を占めるテクノロジーはICTIoTです。スマートシティは、ICT、IoTの先端技術を用いることで、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目指しています。

・ICT
ICTとは、「Information and Communication Technology(インフォメーション・ アンド・コミュニケーション・テクノロジー、情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味します。ICTを活用したシステムやサービスが普及することで、社会インフラとして新たなイノベーションを生むことが期待されています。
・IoT
IoT(アイオーティー)は、「Internet of Things(インターネット オブ シングス)」の略で、「様々な物がインターネットにつながること」「インターネットにつながる様々な物」を指しています。 IoTは、日本語で「モノのインターネット」と訳され、PCに限らず、さまざまなモノがインターネットにつながります。(総務省 ICTスキル総合習得教材より抜粋)

ここ数年で、IoTは、21世紀の最も重要なテクノロジーの1つになりました。現在、内蔵されたデバイスを介して、日常のあらゆるモノをインターネットに接続できるようになりました。これにより、「人」と「モノ」の間での通信が可能になりました。

スマートシティが解決する課題

photo by pixabay

日本でのスマートシティの実現により解決が期待されている課題としては「少子高齢化」「観光産業の停滞」「自然災害」が挙げられます。

自然災害

自然災害が多い日本では、災害前後の対応が被害の大小を左右します。スマートシティでは携帯電話を利用する人の移動情報やWi-Fiの利用情報をデータ化することで、迅速な救助や復興につなげます。円滑な避難経路の提示、避難場所の確保などが情報のデータ化・可視化により実現できます。

少子高齢化

少子高齢化の進行により、労働力不足が深刻な問題になりつつある中、スマートシティは、自動運転やドローン飛行などの技術導入により、労働力不足を解決することを目指しています。これらの技術を用いることで、物流における運転者不足の解決や、都市部での清掃、警備員のサポートなどにつながり、人手不足を解消できます。

観光産業の停滞

インバウンドが年々増加している日本の観光産業では、道路の渋滞、駐車場の乱立、観光動線と生活動線の混乱などが日本の美しい景観や魅力を低下させるとして、大きな課題として挙げられています。スマートシティは、ビッグデータの分析・予測技術を通して、観光業界の問題の解決を試みています。ビッグデータの分析・予測技術により、最適な移動経路の構築や観光客の行動データに基づいた観光地づくりが可能になります。

スマートシティの国内事例

国内でスマートシティの構築に力を入れている地域をいくつか紹介します。

会津若松市(アクセンチュア株式会社)

photo by societe

人口減少と少子高齢化に悩む福島県の会津若松市では、ICTや環境技術などを健康や福祉、教育、防災、さらにはエネルギー、交通、環境といった生活を取り巻くさまざまな分野で活用しています。アクセンチュア株式会社のもと、「住み続けることのできるまち」を目指して創っている「スマートシティ会津若松」では以下の取り組みを実施しています。

・生活の利便性向上
スマートフォンなどで母子健康手帳の情報が見られたり、AIが簡易な質問に回答するサービス、自宅にいながら医師の診察を受けられるオンライン診療の取り組みなどは、ICTを活用して生活の利便性を高めていると言えます。

・地域の仕事づくり
産学官が連携した取り組みを増やすことで、地域の雇用としごとづくりを進めています。また、ICTを活用した効率化や技術の高度化を図ることで、地域産業の成長や雇用の維持拡大などの経済効果を生み出しています。

・まちの見える化
会津若松市では、どこに住民が住んでいるのかを地図上に表示し、分析することで、バス運行路線を最適化するような取り組みを進めてきました。また、河川や水路などにセンサーを設置し、そこから取得したデータを活用すれば、地図上に水害予測や安全な避難経路を示すことなども可能になります。このようにさまざまな情報から「まちを見える化」し、市民サービスの向上やまちづくりに生かしています。

柏の葉市

photo by platinum tourism

東京大学、千葉大学、国立がん研究センター東病院などの拠点施設が存在している千葉県、柏の葉エリアは、研究機関の進出が進んでいます。新技術を生かした環境負荷の低減や良好な居住環境を形成するために、人・環境・施設などに関わる民間データと、柏市全域の公共データを連携することで、これらを活用した「駅を中心とするスマート・コンパクトシティ」の構築を目指しています。柏の葉ではスマートシティ実現に向けた4つのテーマを掲げて取り組んでいます。

・モビリティ
駅を中心とする地域内移動の利便性を向上するために、自動運転バスの導入や、駅周辺交通の可視化・モニタリングを実施しています。

・エネルギー
脱炭素社会に向けた環境に優しい暮らしを目指し、太陽光発電パネルの劣化状況自動検知システムの導入や、域内施設のエネルギー関連データプラットフォームの構築などを実施しています。

・パブリックスペース
⼈を呼び込み、暮らしを支える都市空間形成を目指し、AIカメラ・センサー設置とモニタリング、データ活用や、センシングとAI解析による予防保全型維持管理を実施しています。

・ウェルネス
あらゆる世代が健康で生き生きと暮らせるまちを目指し、多様なデータを活用した健康サービス・アドバイスの提供や、来院者の人流データを活用した患者の待ち時間軽減を実現しています。

スマートシティの海外事例

海外で「分野横断型」のスマートシティの実現を推進している地域をいくつか紹介します。

イギリス・マンチェスター市の「City Verve」

photo by pixabay

City Verveでは「医療・健康」「輸送・交通」「エネルギー・環境」「文化・コミュニティ」の4領域の分野横断型スマートシティを実現しています。

・医療・健康 : 個人やグループによる運動や活動の状況を把握・記録し、利用者に提供することで、運動を推奨しています。

・輸送・交通 :センサー、電子看板、アプリなどを組み合わせ、利用客が待っていることを運転手に告げる「Talkative bus stops (おしゃべりバス停)」を設置しています。「Manchester Corridor」の主要道路を自転車・バス専用道路化しています。自転車にIoT無線タグを付け、安価な自転車シェアリングを推進しています。

・エネルギー・環境 :街灯や道路上の各種設備などにIoTタグを設置し、異なる場所や高度で大気質を把握しています。

・文化・コミュニティ:公共および商用サービス、文化イベントの情報にアクセスできるWi-Fiホットスポットを設置しています。

デンマーク・コペンハーゲン市の「Copenhagen Connecting」

photo by pixabay

Copenhagen Connectingではデータの収集、分析によって市民に快適な生活を提案するプロジェクトが主軸となっています。

・CITS(コペンハーゲン・インテリジェント交通ソリューション)
CITSは交通渋滞の改善とCO2排出量の削減、市民の安全性向上を目指すプロジェクトです。 最先端のITS(高度道路交通システム)導入により、適正なプライバシーレベルを保持しつつ、市内からWi-Fi端末を通じて自動車や自転車利用者の位置情報を収集しています。 加えて、長期的傾向を割り出し、気象情報などその他パラメータと渋滞状況との相関関係を分析することで、自転車およびバス利用者の移動時間が10%短縮されることが予測されています。

・DOLL(Danish Outdoor Lighting Lab)
DOLLでは、オフィス街や住宅街の一角を実証実験場とし、国内の照明関連企業の最新照明を設置しています。現地の温度や汚染物質の分布について計測するセンサーを搭載して、路上の温度や大気汚染物質の濃度といった情報も計測しています。

スマートシティが実現する社会

photo by pixabay

現在、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会「Society 5.0」(超スマート社会)が日本の未来の社会のあり方として提唱されています。

先端技術の進展による通信事業の拡大、コロナ禍におけるテレワークやテレビ会議による外出制限や移動回数の減少、AIによるビジネス支援などによるオフィス環境や立地の変化、自動運転の実現などは、人の価値観に大きな変化をもたらすのみならず、都市の課題解決へのヒントを与えてくれる可能性もあります。

スマートシティの形態はこれからもテクノロジーの発展にともない進化を続け、まちづくりの分野においても大きなインパクトをもたらすことでしょう。