高年収層が享受するサービスを全年収層へ。転職サービスにおけるAI

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長年続いた終身雇用型社会から、転職が当たり前の社会に変わりつつある日本。

転職率は少しずつ上昇しているものの、2017年は転職検討者のおよそ3分の2に当たる519万人が転職しなかった、もしくはできなかったと言われています。

現状の原因の1つに、従来の人材紹介モデルの限界があります。

人材紹介モデルの課題とは一体なんなのでしょうか?また、課題解決には何が必要なのでしょうか?

「プロフェッショナルをもっと身近に」をミッションとして掲げ、従来の転職エージェントが抱える課題の解決に、人工知能を組み込んだ転職アプリ「ジョブクル転職」で取り組む株式会社smiloopsのみなさんに、話を聞きました。

仲子拓也(写真中央)
代表取締役CEO
慶應義塾大学在学中に、衆議院議員秘書・学生ベンチャー立ち上げを経験。
2009年4月に株式会社リクルート新卒入社。ブライダルカンパニーにて法人営業を経験。同期最短で営業賞獲得。Speeeに転職をし、創業者直下で、北米向けスマホソーシャルゲーム事業部の立ち上げに参画。メインディレクターとして企画・プロダクト開発に従事。
2012年12月株式会社スマイループス創業。

森永孝仁(写真右)
取締役CTO
筑波大学情報工学部卒業後、2013年4月に株式会社speeeに新卒入社。Webサービスからアプリサービスまで、様々な新規事業立ち上げにかかわり、音楽レコメンドアプリでは、レコメンドエンジンの開発やエンタメ系キュレーションメディアでは、開発責任者として月間1億PVの基礎を創り上げる。
2014年1月に株式会社スマイループスに参画。

新井瑠生(写真左)
CMO
中央大学卒業後、2012年4月に株式会社セプテーニに入社。大手人材系企業を中心にマーケティング支援を担当した後、グローバル大手ソーシャルゲーム会社を担当。同社ギネスとなる月間10億円弱のアプリマーケティング運用を担当。2016年11月にアドテク系スタートアップ、株式会社LOBの創業メンバー・執行役員に。セールス・組織づくり・人材採用などを牽引、2018年7月に同社を株式会社楽天に売却。
2018年9月にCMOとして株式会社スマイループスに参画。

 

従来の人材紹介モデルの課題とは

――転職検討者の3分の2が転職に至らないようですが、何が原因なんでしょうか?

―― 仲子
「従来の人材紹介モデルに原因があると考えています。転職エージェントの紹介料は、転職者の決定年収×35%程度です。

なので、基本的には高年収が見込める人材を優先して紹介していくことになるのですが、1日あたり5人程度の転職検討者しか対応できないため、年収が低めの転職者層はプロフェッショナルサービスを受けることが難しくなっています。

そうなると、サービスを受けられない転職検討者の多くは自分で転職先を探し、選ぶしかありません。ですが、転職サイトで求人を見ても、会社の違いがよくわからず挫折してしまう人が多いんです」

売り上げを伸ばすため、転職エージェントが高年収を期待できる層を優先するのはある意味当然かもしれませんが、一方で低年収層は、転職相談をする相手もいないまま苦労しているのが現状。

また、高年収層はプロフェッショナルサービスを受けずとも転職先に困らなさそうですが、年収を上げたい若者など、サポートを切実に必要としている人たちにサービスが行き届いていないことも、転職を諦める人が多い理由になっているようです。

――どんなきっかけで転職サービスにAIを導入しようと思い立ったのでしょうか?

――仲子
「もともと転職サービスにAIを活用したくてジョブクル転職を始めたわけではないんです。

転職サービスの課題として、転職しようと思ったときにサイトを見ても、情報が多すぎて選べないことと、低年収層にとって転職のプロが遠い存在だということがあり、その課題を解決するために何ができるか考えた結果、オンラインでのチャットをベースに転職相談できる仕組みに行き着きました。

チャットの他にも、転職希望者に届く求人票をAIで最適化することにより、効率的な課題解決ができるため、ここにもAIを導入しました」

もともと『プロフェッショナルをもっと身近に』を企業のミッションとして掲げていたこともあり、多くの人にプロフェッショナルサービスを届けたいと考えていたsmiloops。

結果として『ジョブクル転職』にAIを組み込むことになりましたが、AIで何か取り組みたいという思いから始まっているわけでないとのこと。

AIが脚光を浴びるようになり、AI活用を謳うプロジェクトも増えていますが、手段が目的になってしまっているものも多いのかもしれません。

――実際にAIを導入し、感じた魅力を教えてください。

――仲子
「サービス提供者として感じた大きな魅力は、圧倒的な業務効率の向上ですね。(直接対面でのサポートをベースとした)従来の形では、1日5人と面談するのが精一杯ですが、AIのサポートを受けたチャット型のサービス提供で、1日1000人近くへの対応が可能になりました。

また、AIの導入は転職希望者側にも魅力的だと考えています。通常の転職エージェントは50-100の転職受け入れ企業しか記憶していないため、限定的な提案しかできません。AIであれば、無数の求人データを分析し、より多くの企業から転職希望者の要望にあった提案が可能です」

良質なデータを人の手によるユーザー対応で収集。

――AIを導入するには、転職希望者のデータを蓄積する必要があると思いますが、どのように進めていったのでしょうか?

――森永
「ジョブクル転職は当初、転職エージェントとチャットで話せる転職アプリとしてリリースしました。

チャットボットでは、ユーザーから本気の相談を受けられないと考え、人がユーザーとやりとりしながらデータを収集していく形をとりました。その結果、良質な会話データを蓄積することができ、徐々に対応の自動化を進めていけました。

また、アプリに(マッチングアプリの)Tinder型UIを採用していたことで、転職先の提案を最適化するのに必要なデータも確保できました」

データを人の力で蓄積し、AIでの効率化に活用していく。

多くの企業がデータはあるのに活用できていない状況で、ユーザーファーストなやり方でデータを蓄積し、AI導入につなげる手法には、学べることが多いのではないでしょうか。

コンシューマー向けの業界におけるAI導入の波

コンシューマー向けの業態では、AIの利用が進んでいないと思われがちですが、実はInstagramやZOZOTOWN、メルカリのような超有名サービスにもAI技術が導入されています。ユーザーが気づかないほど自然にAIが活用されてきている中、取り残される企業、成長していく企業の差が広がっていきそうです。

顧客と向き合い、人とAIが協力して問題解決に取り組む。

smiloopsの事例からも垣間見えたそんな姿勢が、BtoC企業がAI時代を勝ち抜くコツなのかもしれません。