AI(人工知能)企業への投資で知られる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を手がけるソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員 孫正義さんは11月8日、2022年3月期 第2四半期 決算説明会のなかで、2021年7~9月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が3979億円の赤字だったことを明らかにした。
孫正義さんは普段ならば決算説明会では「AI革命はまだ始まったばかり」「われわれは情報革命で人々を幸せにしたい。そういう未来を作りたいと心の底から思っている」など力強い“孫節”を見せるが、今回は赤字の影響か“孫節”はあまり見られなかった。
ソフトバンクグループは5月12日に実施した2021年3月期 決算説明会において、純利益が4兆9880億円と日本企業の利益としても過去最高を記録したことを発表したことは記憶に新しい。
孫正義さんは「(同決算説明会では)『(ソフトバンク創業の地である福岡の雑餉隈〔ざっしょのくま〕駅付近には)踏切の向こうには夢がある。それからソフトバンクは大いに成長したと言った。今日はその続編だ。続編はどうなったのか。真冬の嵐のど真ん中だ」と自虐的に話した。
赤字の原因は中国政府によるIT企業への規制強化、株式下落の影響とされる。
「唯一、利益が減ったのは中国だ。今まで稼いだ利益をこの3カ月間ですべて吐き出した。この3カ月間はNAV(時価純資産)に占める1番大きな部分のアリババの大幅な下落と、ビジョン・ファンドの中国銘柄の下落、この2つがわれわれのNAVの価値、あるいは純利益を下げた1番の要因だった」
孫正義さんは吹雪の真ん中に小さな青い芽があるスライドを紹介し、「(吹雪と言うべき状況だが)真ん中に青い芽が見えている。私にはそう思えてならない。われわれにとっての嵐の中の青い芽をしっかりと育てていきたい」と意気込む。
「ビジョン・ファンドは開始して以来、2社、4社、16社というふうに売買で伸びてきた。今年は上期だけですでに18社、下期を足すと去年の倍増も十分にいける。去年の14社の倍ぐらいの30件ぐらいの卵が生まれてきている」
孫正義さんは「嵐の中でも着実に金の卵をどんどん産み続ける仕組みが、しかも自分たちの手持ちの資金で回っていくエコシステムができてきた。内に秘めた自信がある」と述べた。
ソフトバンクグループは「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」において、日本企業への初の投資となるバイオベンチャー企業のアキュリスファーマ株式会社への総額68億円の資金調達を主導した。今回の決算説明会では孫正義さんが本投資について、何を語るのかが注目されていた。
孫正義さんは質疑応答のなかで、本投資について「ぜひ日本企業への投資を増やしていきたい。3000社ぐらいの会社をパイプラインとして常にディールフロー(投資機会の流れ)を見ているが、あまりにも日本企業が少なすぎる。かねてより私も残念だと思っていた」と語った。
「すでに(日本企業への投資として)2号の会社とは具体的な投資の条件、手続きを進めている最中だ。2号は必ず近いうちに登場する。他にもいくつかまさに検討中の会社があるので、これから日本の銘柄も徐々に増えていくと信じている。ぜひわれわれも応援していきたい。心から願っている」