孫正義さん「引退したら急におじいちゃんになっちゃう(笑)」アーム上場で“爆発的に伸びる”とまだまだ現役意欲

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『後継者探し』は大変重要なテーマであるという思いは変わりない。必ず後継者を見つける。必ず育成する。ただし、僕自身がソフトバンク・ビジョン・ファンド、新たにArm(アーム)上場という状況で楽しくてしょうがない。こんなに楽しいことを辞めて引退したら、急におじいちゃんになっちゃうのではないか(笑)。しばらくはバリバリの現役でいきたい

ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義さんは2月8日、同社の2022年3月期 第3四半期 決算発表会でそう語った。

NVIDIAがソフトバンクグループからArm Limited(Arm)を買収する最終合意について、NVIDIAはソフトバンクグループからArmの株式を取得する契約を解消したことを発表した。Armは株式上場の準備に入る。

そもそも、ソフトバンクグループはArmを売却するものの、ArmとNVIDIAが合併することを想定していた。孫正義さんは当初の思いをこう述べる。

ArmをNVIDIAが合併すれば、まさに鬼に金棒という状態になる。チップの領域で圧倒的に世界最強の会社ができる。われわれがその筆頭株主になれればという願いで、ArmをNVIDIAに売却した

しかし、孫正義さんの思惑どおりにはいかなかった。その理由について、2月8日にソフトバンクグループとNVIDIAが発表したプレスリリースでは「両社は、取引完了のために誠意を持って取り組んできましたが、これを阻む規制上の大きな課題があったため、契約の解消に至りました」と説明している。

規制上の大きな課題とは何か。孫正義さんはこう持論を展開する。

GAFA(※Facebookは2021年10月にMetaに改名)に代表されるような主要なIT業界の会社がこぞって猛反対。アメリカ政府もイギリス政府もEUの国々の政府も猛反対という状態になった。

通常は独禁法(独占禁止法)で合併を阻止する場合、たとえば、『車のエンジンを作っているA社』と『車のエンジンを作っているB社』が合併をすると、エンジン業界のマーケットシェアが大きくなりすぎるので独禁法で止められる。

NVIDIAとArmはまったく違うものを作っている。エンジンとタイヤぐらい違う。異なる事業をしている会社2社の合併を阻止するのは独禁法が始まって以来、初めてのケースだ

孫正義さんが思うNVIDIAとArmの立ち位置については賛否が分かれるかもしれない。孫正義さんは「率直に言えば、これほど各国の政府、あるいは業界の中心の会社が反対に回るのは想定外だった。NVIDIAの側も驚いている」と話しつつも、前向きな姿勢を見せた。

今日のメインテーマはArmだ。Armが戻ってきた。戻ってきたというより、第二のArmの成長期がいよいよ始まる。これまでArmで仕込んでいた部分が今から本当に爆発的に伸びていくと考えている

第二の成長期に向けて、われわれは先行投資をした。Armは工場を持っている。先行投資はエンジニアの数を増やすことだ。エンジニアをどんどん増やして、どんどん利益は減った。

しかし、ついに(2021年度から)売上が伸び始めた。新たに仕込んでいた製品が続々と出始めたということだ。私はいよいよこれから利益が爆発的に毎年伸びていくと思っている

「ソフトバンクGの嵐はまだ終わっていない」

一方で、本来の本題であるソフトバンクグループの決算についてはどうか。孫正義さんはこう述べる。

前回の決算発表でも『冬の嵐のまっただ中にいる』と言った。嵐はまだ終わっていない。むしろ、嵐は強まっているかもしれない。

アメリカをはじめ、各国の政府がコロナ禍のピークは過ぎてきたのであろうと、金融緩和を抑えて、長期金利がこれからどんどん上がっていく。とくに成長企業の株価は冬の嵐のなかにいる。多くの企業が株価ででこぼこやられている。

とくにわれわれが投資している高成長企業は株価をやられている。われわれは去年の決算期が良すぎたのかもしれないが、その反動も含めて大幅な減益だ

孫正義さんがいつも「会計上の利益よりも重要」と主張するNAV(時価純資産)に目を向けると、一時期は6割を占めていたアリババが24%に減少し、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が49%と増加している。

世界の主要ベンチャーキャピタルによる投資額を比較すると、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは2位の米タイガー・グローバル・マネジメントを引き離し、世界トップに輝いた。孫正義さんは数ある投資企業のなかで、ソフトバンクグループの独自性をこう説明する。

世界に約5000社のベンチャーキャピタルがあるが、ソフトバンクグループは世界最大のベンチャー投資家グループだ。

ほかのベンチャーキャピタルはいろんなジャンルに投資しているが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドはAI(人工知能)を活用している会社にだけ投資している。ソフトバンクグループはAI関連については圧倒的に世界最大の資本家グループだ

昨今ではAIのみならず、メタバースなどの最新テクノロジーも注目を浴びている。メタバースを手がける企業には投資する予定はないのか。孫正義さんは記者による質疑応答のなかで、こう回答した。

メタバースはこれから姿や形を変えながら、どんどん進化していった新しい社会のカルチャーというか、ライフスタイルになっていくのではないか。そのための要素技術がそろってきた。その流れは間違いなく起こる。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じて、メタバースのプラットフォームやサービスを提供する会社には直接、資本家としてどんどん資本を投資していく。なぜなら、彼らはいろんな意味でAIを活用する企業になっていくからだ