【AI×スポーツ】オリンピック間近、2020年に向けて。スポーツへのAI最新導入事例

このエントリーをはてなブックマークに追加

画像出典:SPORTS TECHNOLOGY LAB

2020年に開催される東京オリンピックへの盛り上がりが加熱する裏側で、スポーツ業界へのAI活用が注目されています。

スポーツ業界では、今まで注目されていなかったアナログの分野でもAIが導入され始めています。本稿では、スポーツ分野におけるAI導入事例についてお届けします。

スポーツ競技へのAI導入事例

AIが大量のデータを分析した結果は、試合戦略立案、対戦チームの研究といったさまざまなシーンに使われ始めています。

具体的な事例を見ていきましょう。

試合のハイライト動画を一瞬で作成。「IBM Watson」がウィンブルドンで活躍

出典:Pixabay

毎年50万人近くが訪れ、期間中に800試合以上がおこなわれるウィンブルドン選手権。毎年何百時間もの映像が記録として残されています。2017年には、約480万ポイント分のラリー(約800試合分に相当)が映像として記録されました。

テレビ中継などで放映される試合のハイライトは、人が試合の動画をフルで見て、面白い部分を切り取り、それをつなぎ合わせて制作します。しかし、ウィンブルドンの試合動画全てを見て、面白い部分だけを人の手で抜き取るのは極めて重労働といえるでしょう。

そこでファンの歓声、選手の動き、試合のデータをもとに、総合的な観客の興奮度を「IBM Watson」が分析。ハイライト動画の作成に活用されました。

Watsonのハイライト作成が導入されたことで、以下の成果が得られました。

  • ウィンブルドンのホームページのPVが500万増加
  • 1440万本の動画をIBM Watsonによってのみ制作
  • 動画1本につき30分の作成時間短縮

この事例のように、歓声や動作を読み取って状況を判断できるようになれば、ほかのスポーツでも応用が効きそうです。

微妙なラインの口論がなくなる。AI審判デバイス「In/Out」

プロテニスの試合において、ボールの落下点を機械で判断する「ホークアイ」はおなじみですが、アマチュアでもそれを体感できるデバイスが「In/Out」です。

ネットの端に取り付けるだけで、ボールのイン/アウトを判定できるデバイスで、2017年に発売されています。

ネットに装着後、スイッチを押すとコートをスキャンし、判定を始めます。搭載しているAIでボールの落下点を識別し、アウトであればデバイスのライトが赤く、入っていた場合は青く光ります。

また、試合の記録やスタッツ(アンフォーストエラーやサーブの確率など、統計的な数字)も分析可能。落下点が際どい場合でも、この機械を使えば判定してくれるので、プレイヤー同士で揉めることもなくなるでしょう。

AIがバスケコーチに。選手・ボールの動きを分析し戦術作成まで

出典:Pixabay

AIはチームスポーツでも活用されています。

富士通の女子バスケチーム「レッドウェーブ」が練習する体育館には、8台のカメラが天井に設置されています。カメラと人工知能(AI)は試合中の選手全員を追いかけ、フォーメーションやシュートを認識して記録します。

映像はパソコンに送られ、画面にシュートの成功・失敗が分布図で表示されます。成功・失敗のそれぞれのポイントをクリックするとシュート場面の映像を再生します。選手ごとのシュート成功率や失敗率の高い位置なども分析可能です。

現在はチーム内での運用に留まりますが、今度は精度を高めた後に外部へ販売する見込みです。
このようなサービスが発展すれば、自分のチームはもちろん、対戦選手1人1人を分析し、戦術を練ることも可能です。

参考:www.nikkei.com/article/DGXMZO19831000Z00C17A8000000/(外部リンク)

サッカーに特化した戦術・分析支援アナリティクスツール「Pitch Brain(β版)」


出典:https://www.sportstechnologylab.com/#products

博報堂DYグループの「AIビジネス・クリエイション・センター」は、スポーツアナリティクス事業の実行可能性調査(フィジビリティスタディ)を行う、Sports Technology Labを設立しました。

機械学習、深層学習技術における日本のユニコーンPreferred Networksと包括的共同開発契約を締結し、新たなソリューションを開発しています。そのひとつが、サッカーに特化した戦術・分析支援アナリティクスツール「PitchBrain(ピッチ・ブレイン)」。

出典:https://www.sportstechnologylab.com/#products

Pitch Brainは次のことを可能にしたといいます。

  • サッカーで選手がボールを持っていない瞬間、すなわちオフ・ザ・ボールの動きを捉えられるようになったことで、90分を通じたチームの特徴を可視化すること
  • 膨大なサッカー映像を学習させることで、サッカーに特化した姿勢推定アルゴリズムに基づくパスコース判定

スポーツアナリティクスを充実させることで、勝敗の予測と、試合の作戦戦略に幅を持たせることが可能になります。

参考:https://www.sportstechnologylab.com/#products(外部リンク)

スポーツ観戦が変わる。スポーツ観戦へのAI導入事例

スポーツへのAI導入によって、スポーツ観戦の仕方が変わりつつあります。AIが選手の動きなどを分析することで試合展開や結果の予測が可能になり、観客は今までになかった新しい視点での試合観戦の楽しみ方ができるようになってきています。スポーツ観戦へのAI導入事例をご紹介します。

サッカーの試合展開を完全予測?!「WARP」

WARP」は選手の動きを含めた試合展開と試合結果を予測します。

Jリーグの

  • 各選手データ
  • スタッツデータ
  • トラッキングデータ
  • を反映した22体のAIを使い、最も確率の高い試合展開を予想します。

    対戦予定のカードをAIが実際に100回対戦させることで、試合の流れ、得点数など、試合結果を予測可能です。また、ユーザーによる予測・コメント機能も搭載されていて、サポーター同士で戦況の予測をシェアできます。

    野球解説者もAIに。AIスポーツ解説システム「ZUNOさん(ズノさん)」

    プロ野球の解説にもAIが導入され始めています。電通の制作チーム「Dentsu Lab Tokyo」(電通ラボ東京)は、「AIスポーツ解説プロジェクト」の展開を開始しました。その中で、2017年4月、NHKとDentsu Lab TokyoはAIスポーツ解説システム「ZUNOさん(ズノさん)」を共同開発し、注目を集めています。

    AIスポーツ解説システム「ZUNOさん」にできること

    • 2004年から記録されている300万球を超える打席データを学習することで、配球順位を独自に予測
    • データマイニングを応用することで、これまで人間の解説者では見つけることのできなかった選手の傾向試合状況に応じた投球の解析

    さらに、「ZUNOさん」を用いてAI(人工知能)と視聴者が対決するという新たな取り組みも行われました。

    AIと視聴者が直接対決!?「プロ野球投球予測バトル」

    2017年10月29日に開催されたプロ野球日本シリーズ第2戦で、テレビとネットを連動した視聴者参加型企画「NHKプロ野球! 投球予測バトル」が実施されました。

    参加者は、スマホやタブレット、PCなどを手にテレビ中継を見ながら、次の一球の「球種」と「コース」を予測し、ZUNOさんと対決します。

    出典:http://dentsulab.tokyo/rad/?p=328(外部リンク)

    結果、「球種」「コース」ともに「ZUNOさん」の正答率を上回った参加者は4484人中4人だったそうです。

    参考:http://dentsulab.tokyo/rad/?p=328(外部リンク)

    チケット価格もAIが決める。価格変動制「ダイナミックプライシング」

    試合観戦チケットの価格決定にもAIが導入され始めています。

    横浜F・マリノスは、2018年7月以降に開催されるホームゲームの日産スタジアム一部エリア「ニッパツ三ツ沢球技場全指定席エリア」で、Jリーグ初となる価格変動制「ダイナミックプライシング」によるチケット販売を開始しました。

    ダイナミックプライシングとは
    需要、市況、天候、個人の嗜好などに関するビッグデータをクラウド上のプラットフォームで迅速に分析。需要の予測を基に価格の上げ下げを自動的に行なうことで、ファンの皆様のニーズに即応する仕組みです。チケットを購入するタイミングにより、価格が変動する可能性があります。
    引用:https://www.jleague.jp/fxsc/2019/special_lp/dynamicpricing_qa.pdf

    ダイナミックプライシングの導入により、需要に応じた「適正価格」でのチケット販売が可能になり、収益アップ観客数増員不当な高額転売の防止が見込めます。

    2018年9月から10月にかけてのニッパツ三ツ沢競技場でのチケット価格の変動を示した図。
    出典:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00099/00003/

    上の図によれば、標準価格で販売した9月24日から、一時は定価より4000円以上価格が上昇したチケットもありました。

    ダイナミックプライシングそのものの効果とは判断できませんが、横浜F・マリノスは、全試合、全席種でダイナミックプライシングを導入した2019年シーズンの売上、入場者数は2018年シーズンを上回っているそうです。

    ダイナミックプライシングはJリーグだけでなく、ほかのスポーツやコンサート、食品スーパーなど様々な場面で導入され始めています。福岡ソフトバンクホークスは2020年シーズン、福岡PayPayドームで開催するホークス主催オープン戦、公式戦全試合のチケットをダイナミックプライシングで販売すると発表しました。

    AIを活用することで、需要と供給が一致する適正価格をより正確に設定することが可能になり、今後「定価」というものがなくなっていくかもしれません。

    参考:https://real-sports.jp/page/articles/306704824622122065(外部リンク)

    パーソナルトレーニングを進化させるAI機器

    AIの進化によりパーソナルトレーニングも変わりつつあります。ウェアラブルデバイスから得たデータを分析したり、トレーニングや食事内容を提案したりするのにAIが活用されてきています。

    心拍数や心拍変異度などをもとにコンディション状態を可視化するアプリ「WHOOP」


    WHOOPは、心拍数や心拍変異度などをもとにコンディション状態を可視化し、疲労回復と怪我防止が可能にするアプリです。心拍数などのデータは、手首に巻けるウェアラブルデバイス「WHOOP STRAP」で計測できます。

    WHOOPアプリは、1日の運動量を計測し、疲労度と回復度を0〜21の範囲で記録します。

    出典:https://www.whoop.com/

    出典:https://www.whoop.com/

    トレーニングデータが可視化されることで、最適なトレーニングができているか、それとも負荷が掛かり過ぎたトレーニングをしているのか、ユーザー自身が簡単にチェックできます。

    WHOOPを使うことによって無理ないトレーニングができ、トレーニング中の怪我を負う確率が60%減ったという結果が出ています。

    睡眠をサポートする機能では、身体の疲労度と回復度を記録したデータが使われます。最大限のパフォーマンスレベルに達するために、どれだけ睡眠が必要かを可視化できるのです。

    メンタルサポートによって運動のモチベーションを上げてくれる「Vi」


    Viは、基本機能として、以下の6種類の値をバイオセンサーやGPSなどから計測してくれます。室内でも屋外でも計測可能です。

  • 心拍数
  • 道の勾配
  • ペースの変化
  • 移動速度
  • 移動時間
  • 移動距離
  • Viは、計測した値の結果を蓄積、分析するだけでなく、運動中に聞きたいことを質問すれば、それを音声で答えてくれます。

    また、専用アプリにはチャットボットが搭載されています。ボットからの質問に答えることで、睡眠時間や体調、生活習慣を記録。データドリブンなメンタルサポートによって運動のモチベーションを上げてくれます

    Viには、運動の種類に応じたオリジナルプレイリストを作成してくれる機能もあります。その他豊富なサポートにより、自分1人で運動するよりも高いパフォーマンスを引き出します。

    利用方法はアプリをインストールするというもので、AndroidにもiOSにも対応しています。

    参考:https://vitrainer.com/pages/vi-trainer-c(外部リンク)

    あなたの目標に応じたトレーニング、献立を提案「RocketBody」

    出典:https://gorocketbody.com/index.html

    RocketBodyは、目的に合ったトレーニングを紹介してくれるアプリです。選択肢には

  • 脂肪燃焼
  • 筋肉増量
  • 体型維持
  • などがあります。また、チャット機能と通知機能によって、目標達成を確実なものにしてくれます。

    注目すべきは、ユーザーの好みに合った献立を提案してくれる機能です。好みの食べ物を入力すると、AIがカロリーを計算し、目標に合わせた複数の献立を提案してくれます。

    参考:https://gorocketbody.com/index.html(外部リンク)

    AI搭載食事トレーニングアプリ「food coach」

    出典:http://foodcoach.jp/

    food coachは、最強レスリングチームを育んだ至学館大学が開発した、国内初のAI搭載食事トレーニングアプリです。IBMのAI「Watson」を使ったビジネスモデルコンテスト「IBM Watson Build Challnge2017」において、日本部門で準優勝しています。

    1)国際大会、プロ、事業団向け
    2)国内大会、市民ランナー向け
    3)フィットネスクラブ向け

    の3段階から自分に合ったレベルを選べます。

    food coachは、家庭料理からコンビニ、ファミレスなど、10万件の食事データを収録しています。食べた料理を一覧から選ぶと簡単に栄養価が計算できます。
    また、

  • 体重
  • 体脂肪
  • 筋肉量
  • 競技種目
  • ポジション
  • などの細かいデータをAIが分析し、栄養素の過不足をグラフ化や点数化をしてくれます。

    ほかにも、

  • おやつを「捕食」と捉え、足りない栄養素を補う軽食を提案する
  • 試合前に適した食事と、試合後の疲労から回復するための食事を提案する
  • など、従来のヘルスケアアプリには無かった機能が詰め込まれています。

    出典:http://foodcoach.jp/

    「AI×スポーツ」の今後の可能性・未来予想

    AIのスポーツへの導入は拡大しています。AIが一つ一つのプレーや試合結果予測を行なうことで、必要のない動きや戦術が削ぎ落とされるなど、競技そのものを変化させていくかもしれません。

    また、AIの活用の仕方によっては、選手の動きや戦術の予測情報を片手に観戦するなど新たなスポーツの楽しみ方が生まれ、視聴者が多様な視点でスポーツ観戦を楽しめるようになっていくかもしれません。

    それだけでなく、チケット価格の決定へのAI導入事例のように、ビジネスへの応用も見られ、今後新たなスポーツビジネスの広がりが見られるのではないでしょうか。

    いずれにしても、すでにAIはスポーツに密接に関わってきています。