感情を読むAI?! MITの “Tega” が実現する(かもしれない)パーソナライズの革命とは

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こんばんは、ひろきです。結構以前からデジマ界隈では叫ばれてますよね。『パーソナライズ』って考え方。

要するにユーザー一人ひとりに合わせた戦略と戦術を上手く使おう!みたいな話なんですが、ここに来てこの界隈にちょっとしたイノベーションが起こる…かも知れません。今回はそんな話を。

SOURCE:Robot Reads Faces to Personalize Student Learning

MITが開発した学習支援ロボ “Tega” に搭載された新たなAIが起こすイノベーション

“Tega” はMITの開発した社会支援ロボット。子供との長期的なインタラクションを可能にすることを目的として、ある特殊なAIプログラムの入ったAndroid端末を内蔵した形で開発されました。

機能としてはまぁ要するに家庭教師ロボットってことなんですが、凄いのはその機能や役割ではなく『過程』の部分。Tega はその内臓Androidに入れられたソフトでもって、以下を実現したらしいんです。

    1. 相手の『知覚』『思考』を、動きや言葉という情報から取得・解析する
    2. 解析したデータから『人間の感情』を類推して対応を変異させる

中でも飛び抜けて衝撃的なのが2つめの『人間の感情を読み取って対応を変異させるという部分。

Affectiva Inc. が開発したアフェクティブ・コンピューティング技術を用いることで実現した…とのことなんですが、実はこれかなりとんでもない話。

要するに相手が笑えば一緒に笑い、悲しそうにすれば慰める。みたいなことをAIが自律的に実現してしまったってことなんです。

ついに可能になる『本当のパーソナライズ』アプローチ

今回Tegaが成功させた実験は、ざっくりまとめると以下の通り

  • 3~5歳の子供たち38人に専用のタブレット配布
  • Tegaと1対1で、スペイン語(非母国語)の単語学習ゲームをやってもらう
  • 毎日1セッション15分×8週間実施してみた

で、実際Tegaがどんな対応をしたか?なんですが、凄まじいです。

Tega setup

実際にTegaが子どもたちに対し取った行動

  • 子どもたちを応援し、必要であればヒントを与えた
  • 相手がいらだちや飽きを感じたときは一緒に遊んでみせた
  • 相手が興奮していれば同じく興奮し、集中力が切れたときは同じく気を散らすなどの対応を行った

などなど。子どもたちの感情を読み取り、共感してみせ、そこからさらに学習中に起こる生徒の感情や態度の変化を把握。さらにはその変化が起きたきっかけまたはその理由を分析し、対応を徐々にパーソナライズしていった。…とのこと。

はい。もはやSFです。

もちろん当然学習効率も(従来の学習補助ロボットやアプリと比べて)極めて高く、子どもたちのストレスも低減。

TegaはそのAIによって、本来であれば充分な教育と訓練、そして経験によってのみ少数の教師が身に付けることができる(かもしれない)理想的な『個々人に完全にパーソナライズされた教育』を提供してみせた。

と、言えるのかも知れないですね。

Tegaの実験成功が意味するものとは何か?想像しうる未来について

さて、では完全なパーソナライズを自律学習でもって可能にしていく、実装も簡易なAIロボットの登場。このことが実際のビジネスの現場においてどんな展開につながっていくんでしょう?

ちょっと考えただけでもその可能性の高さと広さにゾクゾクしてしまいます。例えば…

  • 誰よりも自分の性格や生活リズム、仕事を知っているダイエットトレーナー
  • 今まさに取り組んでいるプロジェクトで活かせる言葉から効率よく教えてくれる英語教師
  • 現在の体調と冷蔵庫の中身、気分を把握して食べる(or つくる)レシピを教えてくれる専任栄養士
  • ワードローブの中身まで分かった上で『今買うべき服』を買っておいてくれるスタイリスト
  • 世界中で一番自分の好みを解っていて、常に癒やしをくれる理想の恋人

などなど。そんなサービスの展開も、今後はわざわざ面倒なフォーム入力や情報登録などの手間無しに可能になっていくのかも知れません。(ラストはちょっと切ないですが)

まとめ

さて、もうお気づきの方も多いと思いますが、今回Tegaによって実現されたパーソナライズは、これまでデジマ界隈で使われてきた行動ベースのパーソナライズ(≒○○をした人には■■を見せる…みたいな)とは全く異なる技術とアプローチから生まれています。

で、今回の結果を受けて今後どんどんと情動ベースの(人間同士が構築するような)本当のパーソナライズが、AI × アフェクティブ・コンピューティングによって進んでいく。と言われてもいるわけです。

では、その時僕らが考えるべきは何でしょう?

願わくば、「やばい仕事奪われる!」ではなく、『何と何の間で何を学び何を提供するよう設計すればより役に立つか』という、一種クリエイティブな考えを持っていたいものですね。

ではまたー。