ホームページのPVを500万増加させたウィンブルドンのテック活用 ── 1440万本のハイライト動画を「Watson」のみで制作

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スポーツにおけるAI活用と聞いて、みなさんは何を想像しますか?

一見、スポーツとは無縁に見えるテクノロジーですが、意外とAIが活躍を見せています。今回は、その中でも「テニス」に絞ったAI活用事例をご紹介します。

試合のハイライトを一瞬で作成。「IBM Watson」がウィンブルドンで活躍

毎年50万人近くが訪れ、合計で800試合以上がおこなわれるウィンブルドン。毎年何百時間もの映像が記録として残されています。

テレビ中継などで放映される試合のハイライトは、人が試合の動画をフルで見て、面白い部分を切り取り、それをつなげ合わせて制作します。

2017年には、約480万ポイント分のラリーが映像として記録されました。しかし、これを人の手で面白い部分だけを抜き取るのは極めて重労働といえます。

そこで「IBM Watson」の出番。ファンの歓声、選手の動き、試合のデータを分析し、ハイライト動画の作成に活用されました。

Watsonによる分析の手順はこちら。

  • ポイント選定
  • 観客の歓声、選手の動作、選手の点数から比較的盛り上がりが激しかったポイントを見つけ出す

  • 映像をトリミング
  • 選手の動作から、ハイライトに含むべき部分を映像から探し出し、テニスをしていない部分を切り取る

  • 映像の順番の整理
  • それぞれの映像にタイムスタンプを押し、順番が逆にならないようにする

  • アップロード
  • 最後にそれをウィンブルドンのウェブサイトにアップロード

観客の歓声のみで判断しない理由としては、客の歓声だけでは面白いポイントなのか判断できないため。たとえば、あと1ポイント取られたら負ける状況にいる選手が点をとった場合など、どんなプレーであっても歓声が起こりうるからです。

こちらが実際に行われたWatsonによる分析結果。ファンの歓声、選手の動き、試合のデータから総合的な観客の興奮度を表して、選定しています。

Watsonのハイライト作成が導入された結果、下記の成果が得られたそうです。

  • ウィンブルドンのホームページのPVが500万増加
  • 1440万本の動画をIBM Watsonによってのみ制作
  • 動画1本につき30分の作成時間短縮

歓声や動作を読み取って状況を判断できるようになれば、ほかのスポーツでも応用が効きそうです。テニスに限らず、ほかのスポーツでもハイライト動画を作れるようになるのではないでしょうか。

選手育成など、スポーツに直接関わる領域にAIが使われることもありますが、このような周辺業務の効率化にも注目してみると、違ったものが見えてくるかもしれません。

ウィンブルドンではWatson以前にもAIが活躍していた

Watsonによるハイライト作成が始まる前も、AIはウィンブルドンで使われていました。

2015年には公式サイトのバックグラウンドでは、データストリーム内の情報を処理する「IBM InfoSphere Streams」と、顧客対応や質問対応をおこなう「Watson Engagement Advisor」を組み合わせ、サイト運営スタッフの支援をおこなっていました。

ユーザーが質問すると、試合の進行状況に応じてプレーを動画から分析したり、過去のデータを提供したりしています。そばに専門家がいるかのように試合が分析され、共有できるようになりました。

また、試合以外の会場に関わる質問に関しても、このようにしっかり答えてくれます。

微妙なラインの口論がなくなる。AI審判デバイス「In/Out」

私たちの身近なところでも、テニスでのAI活用事例があります。

プロテニスの試合において、ボールの落下点を機械で判断する「ホークアイ」はおなじみですが、アマチュアでもそれを体感できるデバイスが「In/Out」

ネットに取り付けるだけで、ボールがアウトだったか判定できるデバイスで、2017年に発売されています。

ネットの端に取り付け、スイッチを押すとコートをスキャンし、判定を始めます。搭載しているAIでボールの落下点を識別し、アウトであれば赤く、入っていた場合は青く光ります。

また、試合の記録やスタッツ(アンフォーストエラーやサーブの確率など、統計的な数字)も分析可能。落下点が際どい場合でも、この機械を使えば安心。プレイヤー同士で揉めることもなくなるでしょう。

テニス選手育成にも活用されるAI

NTT西日本では、中・高校生のソフトテニス部を対象にAIを使った練習強化システムの開発が進んでいます。

  • 練習場に設置した二台のビデオカメラで練習風景を撮影
  • 同時に、強豪校の練習データを基に作成した「模範プレイ」を生徒の練習と比較
  • 撮影後、得点につながる試合構成や戦略などをタブレットにてアドバイス

全国の学校の数を考えると、競技経験のない教員が指導担当になってしまうことは往々にして起こります。このシステムで、教員の負担がかなり軽減されるのではないでしょうか。生徒の練習と模範プレイと比較することで、練習効率のアップにも期待できそうです。

テニスだけじゃない?ビジネスサイドにも活用の可能性

今回はテニスにおけるAIの活用をメインに紹介しましたが、これらの技術はスポーツに限らず、ビジネスサイドでも活用が期待できます。

たとえば、セミナーやイベントでもカメラを複数台設置しておけば、どのプレゼンのどの部分で観客の興奮度が高まったか、どういう分野に視聴者が興味あるのかなども分析できます。

テニスに限らず、さまざまな領域に技術が活用されていくことに期待です。