7月26日に行われたレッジ主催の大規模AIカンファレンス『THE AI 2nd』。
株式会社レッジが「未来ではなく、今のAIを話そう。」というテーマで主催する、大型のAIビジネスカンファレンス。具体的すぎたり抽象的すぎる話ではなく、ビジネスにおいてどの程度のコストで、どこまで活用可能か? という視点で、AIのスペシャリストたちが語ります。
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今回の記事でお届けするのは、組込みディープラーニングという分野で業界を走り抜けるLeapMind株式会社 代表取締役CEO 松田 総一氏の講演です。
LeapMind株式会社 / 代表取締役CEO
エンジニアのスキルを可視化・マッチングするサービスを2010年に立ち上げ、シンガポール支社を設立同事業を事業譲渡。その後、個人投資家からの出資と自己資金で2012年LeapMind株式会社を設立。インターネットと同じくらい重要な技術である「ディープラーニング」をあらゆるモノに適用させる「DoT(Deep Learning of Things)」を加速させるため、ディープラーニング技術を「コンパクトに、シンプルに」する組込み向け技術を開発・提供。
自動運転やロボット、モノ × AIに挑戦するLeapMindは、何に取り組み、その技術でなにができるようになるのか。そしてLeapMindの技術が総結集された組込みディープラーニングの開発が容易になるパッケージプロダクト『DeLTA-Family』はビジネスをどう加速させるのか。
機能拡張で機械と人間が共存する世界を目指すLeapMind、さっそく講演を振り返っていきましょう。
IoTの一歩先『DoT』。ディープラーニングは圧倒的なスピード感で浸透する
「我々のミッションは、より小さく、より高速化し、消費電力効率化を上げた、安いチップをばらまいていくことです。
IoTの一歩先『DoT』、 “Deep Learning of Things” を通じて人の機能を拡張した世界を広めていきます。」
チップをばらまく、DoT、人間の機能拡張と、冒頭からなにを言っているのか? と思う方も少なくないでしょう。
DoTとは、クラウドなどで処理するのではなく、モノ側(エッジ)だけでディープラーニングを動かす『エッジAIコンピューティング』です。
膨大な計算が必須の従来のディープラーニングは、GPUやクラウドによる処理が主流ですが、課題もあります。
「ディープラーニングを動かすには、コンピューター側の計算量が多く、それに対応するためにGPUなどが不可欠でした。しかしGPUは消費電力が高く、チップ一枚あたりの単価も高い。
一方でクラウドはというと、通信コストがかかり、即時性も低い。そもそもインターネットに繋がらないと動かないという欠点もあります。
LeapMindがやるのは、計算量を小さくし、高効率の回路処理をセットにすることで、小さいデバイスでもディープラーニングが動くようにすることです。」
小さいチップ上でディープラーニングのすべてが完結するマーケットを作っていくと、松田氏。
ディープラーニングと馴染みがない方からするとクラウドでもエッジでもどっちでもいいよ、と思うかもしれません。が、小さいチップでディープラーニングが動くことで、圧倒的な勢いで私たちの生活に浸透してくるでしょう。
超低消費電力&高速IPソリューション!LeapMindの技術力は何を変えるのか
講演では、LeapMindが誇る技術の裏側も生々と公開されました。マーケットの創造、DoTと簡単には言いますが、LeapMindの技術があってこそです。
「我々が使用しているのは、『FPGA』という、回路処理を再構築可能なチップです。回路自体をプログラムで制御することが可能になり、消費電力も低く、かつコストも低い。
ニューラルネットワークモデルの改善や独自のアルゴリズムを研究し、FPGAチップと組み合わせることで、Auto Motive(自動運転)やFactory Automation(工場生産工程の自動化)といった分野で威力を発揮しています。」
GPUやクラウドに変わる再構築可能なFPGAを利用
「ベンチマークとして論文ベースで実装したニューラルネットワークと、我々が独自に研究・実装したものでは、大幅に軽量化できています。精度に関しては多少は落ちてしまうものの、わずか5%ほどの下落率です。
ハードウェア側でいうと、同じネットワークを走らせた際の高速化に成功しています。電力効率に関してもGPUと比べると、飛躍的に改善されています。」
ニューラルネットワークの大幅な軽量化と高速化、さらには電力効率の飛躍的改善と、アップデートが今この瞬間にも起き続けている、それを実現している企業が日本にある、それだけでも驚くべきことです。
気になるのは、「結果どんなことができるの?」という点。LeapMindはその実績も多く持っています。
手話をするロボットは常に稼働し、かつ一般の施設に配置されることが想定される。重要なのは電力コストや通信コストで、エッジだからこそ一般に普及が可能になる。
異常検知のケースでは、カメラなど既存のデバイスにAIを組み込む必要があり、常に動作することが必須。エッジであれば、通信やネットを介さず比較的低コストで導入可能。
上記2つのユースケースはまさにエッジだからこその恩恵であり、わたしたちの日々の生活や業務改善にも繋がります。
モノ × AIの世界『DoT』を実現する ──『DeLTA-Family』の可能性
ここまでの話でLeapMindが『DoT』を通じて人間の機能を拡張した世界、それを実現させるだけの技術を持っていることはわかりましたが、気になるのは実際にAIを自社の製品や業務にAIを取り入れたいときに「どこから手をつければ良いの?」というところですよね。
講演では、LeapMindの技術を総結集したプロダクト『DeLTA-Family』の発表もおこなわれました。
「ビジネスにAIを乗せていくステップとしては以下のような流れです。
- 目的設計
- 学習データ作成
- ディープラーニング設計
- ハードウェア実装
- 保守、運用
しかし、上記をすべてオーダーメイドでやると、期間として1年以上、コストも相当かかってきます。」
「この一連の流れを分割して、組込みディープラーニングをあらゆるビジネスに導入しやすくしたプロダクトが『DeLTA-Family』です。」
たとえば、モデル構築のための学習データ作成支援をしてくれる『DeLTA-Mark』を使えば、準備するのはデータのみ。webインターフェースのクリック操作で面倒なデータの前処理が終わります。
さらに『DeLTA-Lite』を使えば、ディープラーニングモデルの構築が可能。もちろんプログラミングは一切不要です。
「もうすぐリリースされる組込みディープラーニングモデル構築スイート『DeLTA-Core』を使えば、モデルをハードウェアに組み込む際の回路も自動で生成してくれます。
内部ではPythonで書かれたプログラムを最終的にハードウェアの言語まで変換させています。ハードウェア言語で組込みまでやるのはかなり大変なので、そこは楽になりますね。」
つまりこれらのプロダクトを使うことで、人材を確保していなくとも、データの前処理からソフトウェアの開発、ハードウェアの組込み、運用までノーストップで回せてしまう、という。
もうおわかりですよね? DeLTA-Familyを使うことで、「製品や業務にAIを導入したい!」という状態から、クリック操作だけでAI導入まで辿り着けるわけです。
さらにLeapMindは『Modelite』というサービスも提供。簡単にいうと、すでに構築済みのモデルをダウンロードできます。ここまでくると正直、ほとんどなにもしなくてもAIが導入可能ですよね。
AI導入の一歩を踏み出せない、ハードルが高いなと躊躇している、そんなことを吹き飛ばしてくれるプロダクトと技術を持つLeapMind。『DoT』を通じて人間の機能が拡張した世界が見れるのもそう遠くなさそうです。
今回の講演資料は下記からダウンロード可能
LeapMind株式会社の講演資料は、下記からダウンロード可能です。