「ディープラーニングの世界は早い者勝ち」差をつけるのはデータの量と課題を見つける力

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2018年7月26日、六本木アカデミーヒルズで開催された大型AIカンファレンス『THE AI 2018 2nd』。「未来ではなく、今のAIを話そう。」をテーマに、さまざまなトップランナーたちが最先端の事例を交えつつ「今のAI」を語りました。

『THE AI』
株式会社レッジが「未来ではなく、今のAIを話そう。」というテーマで主催する、大型のAIビジネスカンファレンス。具体的すぎたり抽象的すぎる話ではなく、ビジネスにおいてどの程度のコストで、どこまで活用可能か? という視点で、AIのスペシャリストたちが語ります。

THE AI 2nd の詳細はこちら

本記事では、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社のシニアマシンラーニングリサーチャー、小林 由幸氏の講演「Deep Learningのもたらすゲームチェンジと、飛躍へのヒント」の内容をご紹介します。

小林 由幸
ソニー株式会社 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 / シニアマシンラーニングリサーチャー
2003年より機械学習技術の研究開発を始め、音楽解析技術「12音解析」のコアアルゴリズム、認識技術の自動生成技術「ELFE」などを開発。近年は「Neural Network Console」を中心にディープラーニング関連の技術・ソフトウェア開発を進める。

ディープラーニングは「簡単で扱いやすい」技術

小林氏の講演は、ディープラーニングの認識精度の話から始まりました。ディープラーニングの認識精度は急速に向上しており、すでにいくつかの作業については、人よりもディープラーニングを用いたほうが、早く、安く、しかも高品質な結果が得られるという状況になりつつあります。

――小林
「ディープラーニングは2015年に人の認識精度を超えたと言われています。ただ、ここで重要なのは『人を超えた』かどうかではありません。この傾向が続くと何が起きるのか、そちらの方が重要です。」

Ledge.aiが本イベントを開催しているのにもそういった背景があります。技術的にすごいことには価値はあまりなく、どういったことに使えそうか? というアイデアを生む部分と、それをどう現場まで落としていくか? ということが非常に重要です。

小林氏はアイデアの部分に関しても、ディープラーニングの汎用性の高さに注目し、そこから派生する可能性について言及。

――小林
「ディープラーニングは、従来の機械学習と比較すると、高い性能を実現できると同時に扱いやすい技術といえます。また、ディープラーニングは、入出力次第で実現する機能が変わります。画像認識や音声認識、自然言語処理まで幅広く使える高い汎用性を備えた技術なのです。」

そういう状況なので、ビジネス活用を検討する方も多いのですが、ディープラーニングと聞くと、「複雑で難解」という印象をどうしても受けてしまいます。しかしそうした一般的な認識を、小林氏は真っ向から否定しました。

――小林
「ディープラーニングは最先端の技術なので、利用が難しいと感じている人がたくさんいるようです。ですが今のディープラーニングは、おそらく皆さんの想像以上に、簡単に利用できます。」

確かに、簡単にディープラーニングを試せるような環境も今はそろってきています。ソニーが昨年リリースしたNeural Network Consoleもそのひとつ。同ツールは、ソニーの内部でも研究部門以外のさまざまな部署で運用されており、専門家以外でも簡単に使えるほど利用のハードルが低く、かつ、ビジネス用途での要求水準にもしっかり応えられるように設計されているとのこと。

Neural Network Console
2017年11月にソニーが発表したGUIベースのディープラーニング開発環境。研究や商用レベルでの技術開発に対応する一方、GUIによる直感的な開発が可能であり、専門的知識を持たない部署での運用も可能。

Neural Network Consoleが生んだ1000人以上のAIエンジニア

――小林
「Neural Network Consoleは、ソニーグループの社内でも、もう1000人以上が利用しています。今回のデモムービーは3分ほどでしたが、同じことをPythonでやろうとすると1時間以上かかります。Neural Network Consoleくらい簡単であれば、いろんな人がいろんなことを、短時間のうちに試すことができます。」

単純に1000人以上のAIエンジニアがいるようなものだと考えると、使いこなせれば非常に社内に大きな影響を生めるツールですよね。ソニーでは、Neural Network Consoleで開発した製品を次々投入しているそうです。

これまでディープラーニングは、限られた人が限られた目的でしか使えないものでした。扱いが難しいうえ、手間やコストがかかるからです。しかし「Neural Network Console」を利用すれば、専門的な知識を持たない人でも、気軽に、そして短時間でディープラーニングを試せます。

そうやって社内でいろいろなプロジェクトにNeural Network Consoleを推進してきた小林氏。ディープラーニングの登場によってこれから社会人として必要になるスキルも大きく変わるといいます。そしてそのキーとなるのはやはりデータのよう。

ディープラーニングは早期の取り組みが有利

――小林
「ディープラーニングの性能を決定するのはノウハウではなくデータです。これから企業価値を生み出すために必要なスキルは、『課題を見つけ出す力』です。それを見つけ出し、そして、どこにディープラーニングを使えばいいのかが分かれば、あとはどんなデータが必要で、それを集められるかが問題となります。」

技術的にできることが増えたので、課題を見つけることができれば、いろいろなところに反映できるということなのでしょう。確かに現状では、企業の中で積極的に課題を見つける人が少ないのかもしれません。とにかく早く取り組むことがこれからの企業の優位性になると、強く語っていました。

――小林
ディープラーニングは破壊的テクノロジー。この手の技術には早く取り組むほど有利です。だから、少しでも早く始めるべきなんです。」

技術的な部分や、データ量が足りないなどの理由で、どうしてもやること自体を後回しにしてしまいがちですが、とにかくまずはやってみることが大事という小林氏の言葉が胸に刺さります。

そして、それが簡単に体験できてしまうのがNeural Network Console。こう言われてしまうと、グッと使ってみたくなりますね。

ディープラーニングはソニーだけでは活用しきれない

――小林
「ディープラーニングの応用は無限の可能性を持っています。はっきり言いまして、ソニーだけでは活用しきれません。いろんな人に、いろんなアイデアを発掘してもらう。それが世の中を発展させ、よい未来を導けるはずです。」

ソニーという大企業ですら活用しきれない。それほどディープラーニングの可能性は計り知れないもののようです。しかし、たしかにNeural Network Consoleを活用すれば、これまでディープラーニングとは無縁だった分野や業界の人々も、開発に携われるように状況が変わっていくかもしれません。そして、そこから新たなアイデアや発想が生まれることも、十分に期待ができます。

なお、Neural Network Consoleはこちらから利用することができます。また、Neural Network Consoleの学習エンジンとして利用している、オープンソースフレームワーク『Neural Network Libraries』はGitHubからダンロードできます。

講演後に、筆者もNeural Network Consoleのクラウド版を実際に体験してみました。ディープラーニングの開発経験もなく、知識も乏しい筆者でも、サンプルプロジェクトを試しているうちに、数時間程度でおおよその操作が理解できました。自分の手でニューラルネットワークが組み上げられていく様子は、なかなかの快感です。


*「Neural Network Console」(https://dl.sony.com/ja/)より

正直な話、ディープラーニングは複雑で難解な技術であり、専門的な知識がない人には手が届かない世界と考えていました。しかし、今回の講演を聴き、そして実際に自分でNeural Network Consoleを利用してみて、もう遠い世界の話ではなくなっているのだな、そう強く実感しました。

ディープラーニングが早い者勝ちの世界であるのなら、少しでも早く手をつけるにこしたことはありません。しかも、Neural Network Consoleなら、専門的な知識がなくても、すぐにディープラーニングを体感できるのです。ならば今、やらないなんてもったいない! そう思いませんか?

講演資料は下記からダウンロード可能

今回の講演資料は、下記からダウンロード可能です。