AIによる代替が最大の生存戦略となる。労働力が不足する社会で警備業が存続するために

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2019年2月13日、株式会社レッジは日本最大級のビジネスAIカンファレンス『THE AI 3rd』を開催。「AI時代の適者生存 ── 生まれ変わるために“今”すべきこと」をテーマに、業種や産業を跨いだAI、ディープラーニングの活用事例が業界のトップランナーにより語られました。

「AI・4K・5Gで進化するALSOKの警備サービス 」と題して講演した綜合警備保障株式会社(ALSOK)の干場 久仁雄氏は、警備業界における人手不足は深刻なため、AIによる代替が急務だと語りました。

干場 久仁雄氏
営業総括部 次長(商品サービス企画担当)
沖電気工業、日本ルーセントテクノロジー(現ノキア)、インターネット総合研究所、ウィルコム(現ソフトバンク)にて通信システムの開発、サービス企画、事業開発に従事。 2010年に綜合警備保障(ALSOK)に入社し、ユーザー企業の立場からICT利活用を推進中。

警備業の全貌から浮き彫りになる課題

ラグビーW杯や東京五輪など、歴史に残る大規模イベントの開催が目前に迫る日本。

その影の立役者ともいえる存在が警備会社です。

日本の法律では、警備業は4種類に分類されており、公的な施設の警備から、交通誘導一般人の身辺警護まで網羅しています。

干場氏は常駐警備、イベント警備における労働集約的な環境を第一の課題として挙げました。

――干場
「2018年3月期は、イベント業務を含む常駐警備業務の売上高が前期と比べて9.7%成長しました。

しかし、労働力不足という縛りがなければ、さらに大きな成長が可能でした。

実際、警備業界では東京五輪などの誘致が決まった影響で、需要が急増しているにも関わらず依頼を断らざるを得ない状況が続いています」

人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業』の中でも代替される可能性が高いとされている警備業務ですが、人手不足による失注などを鑑みると、『AIで代替できるならしてほしい』という状況です。実際、警備員の有効求人倍率は8.65倍となっており、警備業全体の人手不足は明らかです。

ALSOKは、35年以上前から将来的な人手不足を予期しており、人の行う警備業務を代替するためにロボット開発を進めてきました。2002年からは警備ロボットを商用化し、施設の夜間警備などに活用されています。

人手不足以外の課題として、犯罪の質が変化したことを挙げた干場氏。ALSOKは、その他の新しい警備ニーズへの対応にも着手しているといいます。

――干場
「空き巣などの窃盗事件は、機械警備の普及により10年前と比べて激減しています。一方、子供やお年寄りなどを狙った凶悪犯罪が増加しています。力の弱い個人を狙った犯罪に対応するための新しい仕組みを普及させていく必要があります」

犯罪の質が変化したことで新たに生まれる課題への対応が急務になっている中、ALSOKはどのように課題解決に取り組んでいるのでしょうか。

最先端の情報技術で取り組む都市空間セキュリティ

――干場
「警備ロボットはもちろん、4Kや5GをベースにしたIoTデバイスによる、社会全体に警備網を広げるゾーンセキュリティマネジメントの実現に向けて動き出しています。

近年増えつつある無差別殺人に対応するために、誰もが助けを呼べる仕組み作りを進めています」

ALSOKが掲げるゾーンセキュリティマネジメントは、無数のセンサードローンIoTデバイスの連携、高品質な画像の連続的な送受信の上で成り立つ仕組みとなっています。

夜間の警備業務を警備ロボットが代替し、イベント警備においては、AIが効率的に警備員を配置することで、労働集約的な警備業が変わる。

さらに、警備対象が地域住民にまで広がることで、社会全体が変わっていくとのこと。

組織全体を巻き込んだ大規模AI導入への足掛かりは、社内の簡単な問題解決から始めることだといいます。

AI導入成功の勘所

――干場
「事業会社にとって、最初から大規模なAI導入構想に向かって動き出すのは危険です。リスクの高いAI導入プロジェクトから始め、そこでつまづいてしまえば今後のAI導入の足かせになるだけ。リスクの少ないところから成功体験を積み重ねることで、より大きなプロジェクトに全社で取り組むことが可能になります」

ALSOKの例では、IT化の進んでいた機械警備の改良から取り組みが始まり、静止画像内の人や物体の検知、動画からリアルタイムにウロウロ、キョロキョロなどの特定の動きを検出し、現在は万引きを検知する防犯カメラシステムの構築へと、徐々に難易度を上げていることがわかります。

AIの商品化を進めるためには、導入とは違う5つの視点が必要だといいます。

  • 優秀な開発パートナーの選定、確保
  • デバイス、システム化のパートナー確保
  • AIに詳しい顧客とPoCで共同開発
  • 知的財産に関する正しい理解(契約ガイドライン)
  • 営業マンへのAIトレーニング

ALSOKの経験したAI導入プロセスから見えてくるキーポイントは、「当たり前のことを当たり前にやる」ということ。新しいことに挑戦するにしても、結局1番重要なのは、通常のシステム導入業務と同じように、基本的なことをしっかりとこなしていくことです。

AIによる代替は、生存戦略となる

身近な仕事がAIに代替されていくことに対して恐怖を覚えている人は、少なくありません。

一方で、日本の人手不足は今後も深刻化の一途をたどるといわれています。

どんな業種であれ、AIによる代替が不可欠な業務はいくつもあるはずです。

そんな中、ALSOKは、将来を見据えた課題の発見と解決にいち早く取り組んできました。製造業であれ、サービス業であれ、課題の先送りは致命的な決断となり得ます。

今後、ALSOKの先行例は他企業の指針となっていきそうです。

『THE AI 3rd』その他企業の講演資料は下記からダウンロード可能