【野球球団AI武装】6年で5度日本一に導いた実績の秘密

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2019年2月13日、株式会社レッジは日本最大級のビジネスAIカンファレンス『THE AI 3rd』を開催。「AI時代の適者生存 ── 生まれ変わるために“今”すべきこと」をテーマに、業種や産業を跨いだAI、ディープラーニングの活用事例が業界のトップランナーにより語られました。

「スポーツへのAI活用」と題して講演したライブリッツ株式会社の村澤 清彰氏は、プロ野球球団を6年で5度日本一に導いたチーム戦略システム構築の実績を基に「勝利に貢献するAIシステムの裏側」を語りました。

村澤 清彰
ライブリッツ株式会社

2001年フューチャー(株)入社後、R&D部門や大手コンビニエンスストア案件等を経て、プロ野球団のチーム戦略システム開発プロジェクトのリーダーを務める。17年より現職。AI、IoT、データ分析、映像解析を駆使したシステムでプロスポーツのIT武装を支える。

プロ野球球団を日本一に導いた戦略システムの威力

2017年4月、スポーツに特化したシステムを提供するライブリッツの社長に就任した村澤氏。NHK教育の『人間ってナンだ?超AI入門』にも出演しています。

ステージへ登場した村澤氏は、さっそく同社が開発したシステム導入後の説得力がありすぎる結果から語ってくれました。

――村澤
「ライブリッツが開発したチーム戦略システムは、複数のプロ野球球団に導入いただき、当社としては6年間で合計5度の日本一達成という実績を挙げております。このように、ITを活用すれば勝利に近づくことが事実として示せています。現在は6球団、NPB(日本プロ野球機構)とも協働し、ITを活用してどうやってプロ野球を盛り上げていくか、日々取り組んでいます」
――村澤
「例えばセンサーを活用し、ピッチャーが投げたボールがどこを通過したか、センサーを使って計測し、視覚的にわかりやすいようにマッピングした事例があります。データを審判員ごとに分けてみると、それぞれの判定の特徴がわかり、事前に分析、把握しておくことで、より有利に試合を展開できるようになります」

成績以外のデータを可視化し、強化/トレーニングへ活用

――村澤
「近年のITの進化により、ピッチャーであれば球の回転数や球速、リリースポイント、バッターであれば打球の速度や角度など、成績以外の選手能力を可視化できるようになりました。

当社のチーム戦略システムでは、そうした様々なデータが試合後に自動でクラウドにアップロードされます。選手はスマートフォンなどで自分のデータをチェックできるので、試合の振り返りや試合前に準備したりと、自身の成長に活かせます」

データを分析してみると、ヒットになりやすいボールは角度が20度ということが分かり、2017年はメジャーのバッターはみんな角度20度で打つようなスイングをしたそう。その結果、過去最高のホームラン数を達成したといいます。

フィールド全体をデータ化し、戦術策定まで貢献

投手や打者、球だけでなく「フィールド全体の選手のデータ化も進めている」と村澤氏はいいます。

――村澤
「私どもの開発した選手AIトラッキングシステムでは、フィールド全体を1台の高性能カメラで撮影し、走者や守備についてもデータ化を可能にしました」

ファースト付近に1塁ランナーがいる際、一方向からの映像だけではファーストなのかランナーなのか正確な判定が難しそうです。しかし、ユニフォームの色を学習させることで、正確にデータを取得できます。

――村澤
「フィールド全体の選手の動きをデータ化することで、ライトとセンターの間に飛んだボールに対して、ライトとセンターはどう追いかけているか、まったくボールに関係のないレフトがどういう動きをしているか、ピッチャーはカバーに回っているかなどを分析できます。

こうしたデータを溜めることで、どのポジションが一番動くのか、逆にあまり動かないポジションはどこかなどがわかります。すると、“ベテランは疲れがたまる夏場にはセカンドではなくサードにすることで体力を温存しパフォーマンスの向上を見込む”といった、新しい発見や戦略に活かせます」

テクノロジーとは縁がなかった領域もアップデートされていく

――村澤
「現在は、クラスタリングの活用も進めています。例えば、投手のデータを約15グループに分類しました」
――村澤
「球の回転数や変化量など成績に関係ない要素も含めて、1軍だけでなく、2軍の選手も対象にしました。

これにより、例えば1軍で活躍している選手と似た球質を投げる2軍のピッチャーは誰か、1軍で活躍している選手と2軍の成績が似ている選手は誰かなどを探すことができ、選手起用やチーム構想に役立てられます」

淡々と選手やフィールドのデータ化、その活用方法を聞いてきましたが、ライブリッツのAIシステムは、今後のスポーツのあり方を根本から変えてしまう事例でしょう。日々のトレーニングから試合の振り返り、他チームの分析まで、すべてがデータドリブンで可能になります。

テクノロジーは日々アップデートし、より精密に、より高い精度になっています。その傍らで、今までテクノロジーとは縁のなかった領域にテクノロジーが入り込んでいく。その動きがますます加速することで、もはや我々の生活はAIなしでは語れなくなる未来も、そう遠くないでしょう。

『THE AI 3rd』その他企業の講演資料は下記からダウンロード可能