「ロボットと人の心が通じるために必要なもの」サイバーエージェントのAI研究

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2018年1月31日に開催された『THE AI 2018』。その中からサイバーエージェントによる講演「人をAIが接客する世界」を前半と後半に分けてお伝えします。

後半部は、サイバーエージェント ロボットサービス事業部主任研究員の岩本さんによる、「HCI(※)領域の研究」紹介です。
(前半部はこちらをご参照ください。)





岩本 拓也
株式会社サイバーエージェント、ロボットサービス事業部 主任研究員として学術的な研究からビジネス化まで携わる。専門はHCIとDating Science。


HCIとは
HCIは、Human Computer Interactionの略語。人間と機械のインタラクション(交流)に関する研究領域のこと。情報科学や人間工学、認知エンジニアリング、心理学、社会学といった関連分野は多岐にわたる。

今後のロボットには、コミュニケーション技術が必要

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――岩本
「ロボットは、音声認識や画像認識の技術が注目されがちですが、『今後はコミュニケーション技術が大事になる』と思います。

完璧なコミュニケーションができるロボットも、『人間とのインタラクションが不十分だと、人間の心を動かすことはできない』ので。だからHCIの分野が重要です。」

岩本さんが研究をしているHCIは、『人とロボットが通じ合う』ための研究なんですね。

技術が発展し、ロボットとの共生をしていくため、深層学習などの技術的な分野以外に、HCIのような人とロボットの関わり合いを研究する心理学的分野も重要になるのは間違いない話。

そういった観点で、講演を振り返っていきます。

近距離コミュニケーションは発展していない

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岩本さんは、HCIの中でも『対面でのコミュニケーションをテクノロジーでいかに発展させるか』を研究しているそうです。

――岩本
「これまでLINEや電話など、遠距離でのコミュニケーションは進化してきました。

しかし、目の前の人との近距離コミュニケーションは原始時代から進化をしていません。

なぜかというと、コミュニケーションにおけるテクノロジーは、『相手がその場にいるようにすることがゴールだった』ためです。」

言われてみれば、物理的な距離をゼロに近づけようとするテクノロジー活用はこれまで多くありました。一方で、ゼロ距離での精神的なつながりを近づけるテクノロジー活用はつい最近になってからですよね。

岩本さんはテクノロジーによる近距離コミュニケーションの発展を『恋愛』の切り口で研究をしているそうです。その一つとして認知科学の観点で『愛を作れるか』を研究していました。

講演では、実際の研究内容や実験を3つご紹介していただきました。その中から2つを取り上げていきます。

AIと人の対話には、ことば以外の表現が必要

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紹介いただいた一つ目の内容は、『対話者の心拍情報は相手への好感度につながるか』を実験したもの。

初対面の男女を個室にいれ、それぞれの擬似心拍数を表したハートのアニメーションを会話相手に提示してもらったそうです。

――岩本
「実際の心拍に関係なくハートを激しく動かしたのですが、それをみた相手の好感度が上がりました。

ここからわかったことは、

  • 相手が自分に対して好感度を持っていると明確にわかると、事実に関係なく相手への好感度が上がる
  • 容姿の見栄えがよくても、ハートが動かなければ好感度が上がらない
  • ノンバーバル情報を提供してあげると、男女間の好感度が変化する

ということです。」

普段のコミュニケーションでは、相手が自分に対してどう思っているかを探ることは簡単ではないです。一方、嘘でも相手に対する好感度を明確に示すと、人間は好感度を抱いてしまうのですね。

――岩本
「人間と人間の対話の場合、話している言葉だけなく、表情や身振りなどの『ノンバーバルな情報』も重要になってきます。

本当の意味でのコミュニケーションを実現するためには、『ことば以外の情報をロボットでいかに表現するかも重要になってくるのではないか』と考えています。」

言葉が通じない相手でも気持ちが通じたと思う瞬間があるように、人間はことば以外の情報も受け取ってコミュニケーションを取っています。身体をもつロボットだからこそ、ことば以外の表現がないと不自然になりますね。

最近のチャットボットは、テキストに注力したものが多くなっていますが、ロボットの発展を見据えてロボットのインタラクションをキャッチアップしておく必要がありそうですね。

心拍と精確に連動させた場合はどうなるか

二つ目の実験は、一つ目の実験結果を踏まえて、『正確な心拍情報を可視化することで、どんな反応が起きるか』を目的にしたものです。

初対面の男女が隣り合わせの椅子に座り、座った人の緊張に反応して、椅子を光らせる実験をしました。ちなみに、今回は、座った人の緊張を正確に反映させています。

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座った人の心拍に呼応して光る椅子を用意した

出典:Takuya Iwamoto
――岩本
「先に光った人がめちゃくちゃ恥ずかしがっていました。

知らない女性と男性が会って、自分だけが光っている状況で話すのは苦痛のようでした。」

相手の緊張がわかることは、相手の真剣さが伝わり好感度につながるかもしれません。逆に、お互いがわかるように緊張が伝わってしまうことは、コミュニケーションをする上でマイナスなのかもしれませんね。

コミュニケーションに軸をおいたロボットの提供を目指す 

――岩本
「今日紹介したようなHCIの領域は、人とロボットが共存するために重要です。

サイバーエージェントロボットサービス事業部は、コミュニケーションロボットに軸を置いてソリューションを提供していきたいと思います。」

人間におけるコミュニケーションで、心の通じ合いが最も重要なものといえば、恋愛だと思います。恋愛における人と人のインタラクション研究から、ロボットに必要なものを探ろうとする岩本さんのアプローチ。

これらの研究が進むことで、いったいどんなコミュニケーションロボットが発表されるのか楽しみですね。コミュニケーションロボットが日常に溶け込んだ未来も近いかもしれません。

馬場さん、岩本さんありがとうございました。