Ledge.aiは、1月31日に AIカンファレンス「THE AI 2018」を開催いたしました。
「未来ではなく、今のAIを話そう。」をコンセプトに、ビジネスでのAIの活用方法を、豪華な登壇者が講演してくださいました。来場者は500人を超え、大盛況のうちに終えることができました。
イベント最初のセッションは、日本マイクロソフト プリンシパルソフトウェアデベロップメントエンジニアの畠山 大有さんによるセッション。
日本マイクロソフト株式会社 プリンシパルソフトウェアデベロップメントエンジニア。最新技術を必要とするお客様への技術的な支援とその学びを共有するためにイベント・セミナー等にも登壇。コンテンツ(動画、Search含む)関連、Big Data、AI/Machine Learning、Botアプリ関連を得意とされています。
REST APIで簡単に使える学習済みAIサービス群、「Cognitive Services」の活用例を中心に講演していただきました。

今すぐにでも活用できる「Cognitive Services」。どんな活用ができるのでしょうか?
翻訳のコストが1/100に!? 複数国の言語にも対応
まず語っていただいたのは、「AIを使い、講義動画を複数言語に翻訳」した事例。
マイクロソフトでは、北海道⼤学⼤学院 ⼯学研究院⼯学系教育研究センターによる「e-ラーニング教育プログラム」の実施支援をしています。
「地方大学では、特色のある学部を置いて海外の学生を呼び込んでいます。そのため、授業を日本語以外の外国語に翻訳し 、字幕を作成していました。」
人がその部分をやろうとすると、非常に多くの工数がかかってしまいます。効率化を目指して、字幕作成ができる「Azure Media Indexer」や翻訳ができる「Microsoft Translator」を導入したそうです。
「ここで大事なのは『どんな効果があったか』です。こういう翻訳と字幕を付ける作業に関してよく言われるのが、『アルバイトを雇えばいいじゃないか』という話。でも、そうはいかないです。
90分の授業の字幕起こしをする際にかかる時間は、10倍の900分(15時間)かかるそうです。時給が1,000円だとしても15,000円ですよね。
AIを使うと、150円で翻訳できます。時間に関しても30分ほどで可能です。正確さの話よりもまず、『大量のものが同時にできる』ことが重要です。
新しくできることを評価するのではなく、『すでに人がやっている作業』と比較すると、効果がわかりやすいと思います。」

「こういうことをやる際に言われるのが、精度が完璧ではないからやらないという話。ただ、Deep Learningはまさに今発展中なので、精度だけに注目して導入をやめるのはもったいないです。
いま、人がやってる作業で切り替えられるものを洗い出して、シミュレーションしていただきたいですね。」
自動翻訳を使ってみるとわかりますが、いくら精度が向上しているとはいえ、まだまだAIのミスは多いです。そのミス修正を踏まえても、大幅なコストカットを期待できるとなると、AI導入のハードルは下がりますね。
大量の文章を解析。単語と単語の関係を自動検出
「Microsoft Cognitive Services」を活用し、ケネディ大統領の暗殺文書を解読する事例も紹介されました。
2017年11月に公開されたケネディ大統領の暗殺事件の資料は三万ページにもおよび、人間が解読するには、数十年かかるといわれていた資料です。
そこで、「Microsoft Cognitive Services」を活用することで、文章解読のスピードを劇的にあげることができたそうです。
内容としては、
- 画像や手書き文章、音声データをデジタルデータとして抽出
- データを解析し、単語同士の関係性を分析
- データを分析し、人物同士の関係図を表現
などをしています。
「この事例でやっていることは、文章管理や文章検索を効率よくすることです。そのために、AIを使っているのは画像解析やテキスト解析などの一部分だけで、AIを使わない方がいい部分ももちろんあります。」
AIはあくまで道具なので、「どこにAIを使い、どこはAIを使うべきでないか」を考えて使用したほうがよさそうですね。
プログラムコード自体は、GitHub上で公開されています。現状は英語文章に関しては、自分の社内でもすぐに利用することができるそうです。
既存ビジネスを加速させるツールとしてのAI
マイクロソフトの「Cognitive Services」を用いた事例は、ビジネスサイドのエンドユーザーが「サービスを一から開発する」よりも、「自分のビジネスの何にAIが使えるか?」を考えることに時間をかけることができます。
「AIは、これまでの仕組み、サービス、人の流れが基盤になって導入していくものです。
また、AIは技術的にすごいことをしていますが、ビジネスの全てに活かせるわけではないです。それを理解した上で、手段として選択していくことを忘れてはいけないですね。」
AIは無から有を生み出すものではなく、今あるビジネスを加速させるためのものとして使っていくことがAIを活用する上で大事な観点ですね。また、「AIを使用するためのデータを準備できるか」も考える必要があります。ただ、以前よりもデータを用意しやすい状況になりつつあると畠山さんはいいます。
「これまでは、おきている事象を入力してデータ化する必要がありました。
しかし、今は写真や動画をすばやくデータ化できますし、IoTで最初からデジタルデータを取得できるようになります。」
まさに、AIの技術だけでなく、AIを使うためのツールも整備されつつあるわけですね。最後に畠山さんのメッセージで締めくくりましょう。
「実は、世界の中でも日本企業は、データのデジタル化や入力を丁寧にしています。入力が大変な部分をもうすでにやっている可能性があるので、それを活用できる可能性があります。
今一度、会社のフローを分析してみて、改善できるポイントを洗い出してみてください。」