東芝、数日かかっていた精査時間をAIでわずか1日に短縮 専門家は「『これは上手い!』と思った」

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株式会社東芝および大学共同利用機関 法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所は12月10日、半導体工場など製造現場の不良原因解析AI(人工知能)において、現場技術者の知見の反映を可能にすることなどで、従来数日かかっていた解析結果の精査時間をわずか1日に短縮できるAI「Transfer Least absolute shrinkage and selection operator(Transfer Lasso)」を共同開発したと発表。

製品の品質低下は生産コストに直接影響するため、製造現場においては、製品の品質を監視し、品質低下がみられる製品の検出、原因の特定、対策の実行を素早く実施する必要がある。

とくに、半導体の製造現場では、製造装置の経時変化やメンテナンスによる装置の状態、また、納入される材料の特性変化などにより、製品の品質が日々変動するため、定期的(毎週〜毎月)な品質監視が求められる。監視データから品質が低下する原因を特定するには、AIで原因を推定し、現場技術者による推定結果の妥当性の確認(解析結果の精査)が必要とのこと。

しかし、製造現場には多数の工程および製造装置があり、それぞれが複雑に連携している。また、1つの製造装置あたり、必要な監視項目は約400にのぼると言われ、監視データは極めて膨大になる。現場技術者が効率的に解析結果を精査するには、より効率的な原因を推定するAIの開発が不可欠だったという。

大規模な監視データから品質に影響する原因を自動的にあぶりだす手法として「Least absolute shrinkage and selection operator(Lasso)」というAIがある。しかし、同AIは前回の解析から原因に本質的な変化がない場合においても、データのなかに存在するノイズの影響で誤った原因を提示し、解析結果が変わるといった課題があるという。現場技術者の知見による解析結果と異なることから、解析結果の精査には数日間必要だったとのこと。

そこで、東芝および統数研は、解析結果の精査時間を大幅に削減できる新しいAI「Transfer Lasso」を共同開発したとしている。本AIは、現場技術者が過去に精査した製造プロセスの知識や物理的な法則といった知見を反映することで、過去に実施したことがある解析結果の精査のやり直しが不要になる。また、技術者のAIに対する不安を払拭(ふっしょく)し、より納得感のある原因解析の提供にもつながるとうたう。

さらに、本AIでは、前回の原因解析結果をもとに、取得した監視データの傾向の変化を検知し、変化(差分)があるときのみ、新たな原因や解消された原因を提示できる。差分のみに着目することで、データにおけるノイズなどの影響を受けにくくなり、膨大なデータの中から本質的な原因を安定的かつ高精度に提示できると説明する。

「『あ。これは上手い!』と思いました」

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 教授 藤澤洋徳氏は、本AIに関するアイデアを最初に聞いたときを振り返り、「今でもありありと思い出せるのですが、『あ。これは上手い!』と思いました。これは絶対に役に立つし、汎用性が高いです」と語った。

具体的に、何を「上手い!」と感じたのか。藤澤洋徳氏は「極端なことを言うと、罰則を付け加えただけですが、現場にいないとなかなか浮かばないと思います。聞いた瞬間に『上手い!』と思ったのは、それです。実際、類似したアイデアは論文のなかで触れていますが、このタイプのアイデアは浮かびづらいです。企業で普段データを解析されているからだと思いました」と述べている。

東芝では、2020年度末までに、パワー半導体工場において「Transfer Lasso」を適用する予定。また、2021年度末を目処(めど)に、化学プラントなどを対象としたプラント監視制御システムへの搭載を目指すという。今後、工場・プラントを含む、さまざまな分野の実課題への適用を検証し、生産性・歩留り・信頼性の向上に貢献するとのこと。

※記事のタイトルを一部変更しました。(12月10日 20時28分)