トンネル点検での人員不足や作業負担 AIシステムの活用で解消を目指す

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応用地質株式会社は9月10日、トンネルの点検業務を人工知能(AI)により効率化し、インフラメンテナンスの担い手確保や技術の品質維持・向上に貢献する「トンネルAIシステム」を開発したことを発表した。

応用地質は、これまでにもトンネル覆工コンクリートの健全度をAIにより自動判定するシステムを開発・運用しているが、今回はトンネル近接目視に関わるさらなる効率化と精度向上を可能とするものだ。

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トンネル点検にかかる人的ミスや担い手不足、AIの活用で点検作業の高精度化へ

従来、トンネル点検では、高所作業車を用いて覆工コンクリートの異常を近接目視や打音検査によって確認し、異常個所をマーキングしたうえで、手書きのスケッチによって記録する方法が一般的だ。

しかし、こうした作業はトンネル全線に渡って人海戦術で点検するため、多大な時間を要するほか、作業員の技能の差や見落とし、記録漏れなど、人的ミスが起こりやすい環境となっている。

また、国土交通省によると、道路トンネルは全国に約1万1千箇所存在し、2033年には、そのうちの42%が建設後50年以上が経過するという。

道路トンネルは、道路法にもとづく国土交通省令により、国や地方公共団体など道路管理者が5年に1回の近接目視による点検を実施して健全性を診断することが義務付けられている。さらに、適正な点検をするため、点検者には十分な知識と技能が必要であることも明記されている。

だが、市町村などの自治体では、少子高齢化にともなうメンテナンス事業の担い手不足により、点検にかかる負担は高まっている状況だ。

こうした非効率や作業負担を解消するため、応用地質は、トンネルの近接目視時に並行して3Dレーダー計測を実施し、得られた点群データをもとに、自動的に展開画像の作成と変状箇所を抽出するAIシステムを開発したという。

本AIシステムの開発により、これまで人によるスケッチからCAD上での図化作業までを大幅に効率化するとともに、技能の差による検知のばらつきを解消し、点検作業の高精度化が可能となる。

さらに、医療用MRIにも使われている画像解析技術「超解像/圧縮センシング技術」を応用することで、スキャナー画像の端部に発生する陰影を補正し、鮮明な画像を取得する。そのため、3Dレーダースキャナによる画像解析で見落とされがちな、画像の欠損部も見落とさずに解析できるようになる。

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撮影動画から支柱の腐食を検出するAI 作業負担の軽減に貢献

点検作業にAIを活用することで、業務効率化や負担軽減を実現する例はほかにもある。

凸版印刷株式会社、株式会社イクシス、株式会社ケー・エフ・シーは2020年8月28日、ディープラーニングによるAI画像解析技術を活用し、ガードレール支柱の腐食部分を検出する「ガードレール支柱腐食点検システム」を開発したことを発表した。

本システムは、高速(80km~100km/時)で走行する車両から撮影したガードレールの支柱の動画をAIで解析する。これにより、全支柱への個体番号の採番および腐食部分の有無を自動検出し、補修が必要なガードレールの腐食箇所を簡易的かつ迅速に自動判定できる。また、交通規制をせずに補修個所を特定できるようになるため、点検作業の負荷を削減することも可能だ。

本システムの導入で、交通規制や作業員による実点検をすることなく、効率的かつ定量的に腐食部位の特定および判定が可能になる。多くの人員を集めることなく人手を最低限に抑えることができるため、新型コロナウイルス対策への貢献も期待されている。