台風の勢力を推定するAI 精度は76.8%、琉球大学が約4000枚の衛星画像を認識で

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画像は「Typhoon Haishen located to the southeast of Okinawa on September 4, 2020, after completing an eyewall replacement cycle.」より

琉球大学は6月25日、単一の衛星画像から台風の強度クラスを推定する人工知能(AI)を開発したと発表。沖縄タイムスの報道によると、AIに衛星画像約4000枚を繰り返し認識させたという。推定精度は先行研究よりはるかに高い76.8%、最強クラスである「猛烈な台風」でも72%を達成した。

同AIを開発したのは琉球大学工学部の宮田龍太助教、理学部の山田広幸准教授、伊藤耕介准教授らの共同チームだ。今回の研究では2つのアイデアで先行研究の問題点を解決した。1つ目は「より層が深い」ディープラーニング(深層学習)を活用することである。

先行研究で使われていたのは5層構造と比較的浅くて単純なモデル3だった。本チームは台風のもっと細かい雲のパターンを衛星画像から捉えるためには多層化が必要と考え、16層のモデル4を活用したところ、精度を68.9%まで改善できた。しかし、まだ課題は残っており、猛烈な台風は28%しか当てらなかった。

本論文の提案モデル。オリジナルの衛星画像(a)を魚眼レンズ加工した台風画像(b)をディープラーニングに入力することで、正答率76.8%で台風の強度クラスを分類できる。

そこで、2つ目の「衛星画像を魚眼レンズ風に加工する」というアイデアを採用した。筆頭著者の比嘉舞輝氏らは、山田准教授や伊藤准教授との議論を通じて、気象学の専門家は台風の衛星画像を見る際「台風の眼が画像にはっきり現れているか」「眼の周りに雲が同心円状に分布しているか」といった台風の中心付近に現れる特徴をよく見ていることを知った。

共同チームは衛星画像を魚眼レンズ風に加工し、台風の眼や中心付近の雲の分布を強調することで、ディープラーニングが台風の特徴的な雲パターンを認識しやすくなるのではないかと考えた。本アイデアは長年の台風研究で衛星画像を見続けてきた山田准教授によるものだ。

実際、魚眼レンズ風に加工した衛星画像をディープラーニングした結果、推定精度を76.8%まで(先行研究より約20%)改善できた。この方法だと、猛烈な台風でも72%の精度を達成したという。

AIが画像のどこを見てクラス分類したかヒートマップで可視化(赤色部分はAIが重視した領域)。オリジナルの衛星画像(前処理なし)ではAIが注視できていなかった台風の眼と中心付近の雲分布(最強クラスである「猛烈な台風」の特徴)について、魚眼レンズ風に加工した(前処理あり)画像ではしっかりと認識できていることがわかる。

また、ディープラーニングがクラス分類で画像のどこを見て判断したのか可視化したところ、オリジナルの衛星画像では猛烈な台風で1番わかりやすい特徴「はっきりとした眼」をきちんと捉えられていなかった。魚眼レンズ風に加工した画像ではしっかり眼に着目しており、簡単な前処理で専門家と定性的に似た視点をAIが獲得できていることがわかった。

共同チームは「今回はたった1枚の衛星画像からAIがどのくらい台風の勢力に関連する情報を引き出せるかに重点を置いた研究でしたが、衛星画像を撮影した時点での台風の緯度経度や台風が発生してからの経過時間といった情報も取り入れると、さらなる精度向上が見込めるかもしれません」「今後はこれまで培ってきたノウハウをもとに台風勢力の解析や予測をしていく予定で、台風が急速に発達する前兆をAIで捉えたいと考えております」と述べている。

なお、本研究成果は2021年3月に大学院理工学研究科博士前期課程を修了した比嘉氏の修士論文テーマだった。6月21日にNature Researchが刊行する国際誌『Scientific Reports』のオンライン版に掲載された。

>>ニュースリリース

>>沖縄タイムスによる報道