東京大学ら、人間の睡眠パターンは16種類に分類できると発見 約10万人の睡眠データを解析で

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国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)と国立大学法人 東京大学は3月15日、腕時計型のウェアラブルデバイスで得られたデータから睡眠状態を判定する機械学習アルゴリズム「ACCEL」を開発し、大規模な睡眠解析を実施したことを発表した。

今回の解析では、英国のUKバイオバンクにある約10万人の加速度データを睡眠データに変換し、詳細に解析した結果、睡眠が16種類のパターンに分類できることを発見した。

ライフスタイルの多様化によって、現代人はさまざまな睡眠パターンを取るようになっている。しかし、睡眠習慣の多様化には健康面に関するリスクがともない、「社会的時差ぼけ(平日と休日で睡眠時間が異なる傾向)」から、肥満や高血圧、精神的なストレスなどの健康への悪影響が懸念されている。

また、現代人の一部は中途覚醒や入眠困難を特徴にもつ不眠症と診断されている。不眠症の睡眠パターンは脳波の測定などで正確に検査できるが、装置が煩雑で日常的な睡眠状況の把握には適していない。不眠症の診断には週単位の睡眠パターンの把握が必要なため、現在は睡眠日誌や問診といった主観的な指標による診断が中心となっている。

本研究では、このような背景を受けて、UKバイオバンクにある約10万人の腕の加速度データから「ACCEL」を用いて、約10万人分の睡眠データを生成した。得られた睡眠データを21の睡眠指標に変換した後、データの重要な情報を抽出する「次元削減法」と、データをクラスターに分ける「クラスタリング法」を用いて睡眠パターンを8つに分類した。

その中には、「社会的時差ぼけ」に関連するクラスターや、中途覚醒を特徴にもつ不眠症と考えられるクラスターも含まれ、生活習慣や睡眠障がいのそれぞれに関連があるクラスターを抽出できた。

次に、本研究グループは睡眠障害に関連がある睡眠パターンをより詳細に調べるために、21の睡眠指標のうち睡眠障がいに深く関係している睡眠時間や中途覚醒時間などの6指標に着目した。

いずれかの指標が、一般的な睡眠から大きく外れるデータに同様の解析を適用することで、新たに8種類のクラスターに分類した。この中には朝型や夜型に関連するクラスターが含まれている。

本研究の結果、大規模かつ長期間の睡眠を解析することで、現代人の睡眠構造が16のクラスターに分かれることが明らかになった。また、脳波による測定などでは判定が困難な「社会的時差ぼけ」や朝型・夜型といった生活習慣に関連するクラスターを定量的に分類できるようになった。

睡眠障害に関係する可能性が高いデータを詳細に解析し、睡眠パターンを分類したところ、不眠症に関連する7種類のクラスターが判明した。7種類のクラスターは従来と異なる新しい指標で分類したため、不眠症の診断や治療法の提案の面において、新たな手法の構築に役立つと見られる。

今後、実際に睡眠障害と診断されている人の睡眠データを用いて、各クラスターと睡眠障害の関係性をより正確に解明し、定量的な指標にもとづく新たな睡眠障害の診断パイプラインにつながると期待される。また、本研究で不眠症に関する睡眠パターンを分類できたことと同様に、ほかの睡眠障がいについても細分化できる可能性がある。

これまで同一の病名で診断されていた睡眠障害がより詳細に分類されることで、適切な治療法の確立や、その背後にある遺伝的・環境的な要因の解明が進む可能性がある。睡眠をかんたんに測定する環境が整い、自動的に睡眠パターンを判別する技術が生まれることで、気軽に個人が睡眠を測り、自分自身の健康状態の把握が身近になることも考えられる。

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