「音声UI開発に必要な5ステップ」ZOZOが“コーデ相談”の成功事例を語る

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アマゾンのスマートスピーカー「Alexa」を使ったことはあるだろうか。スマートスピーカーが普及するのと同時にAlexaで活用できる拡張機能「スキル」を開発する企業も増えている。

2019年5月31日、「VoiceUI Show ~2019 Spring~」が開催された。これからスキルの開発に取り組む企業に向け「コーデ相談byWEAR」の開発ストーリー株式会社ZOZOテクノロジーズの中村友香氏が語った。

中村友香
株式会社ZOZOテクノロジーズ
イノベーション推進部 AIユニット

Alexaを毎日コーデを相談できる存在にしたい

コーデ相談 by WEAR」は、話しかけるだけで洋服のコーディネイトが見つかるAlexaのスキルだ。日本最大級のファッションコーディネイトアプリ「WEAR」と連携しており、多くのコーディネイトを参考にできる。

――中村
「音声UIプロジェクト自体は、2018年5月半ばから始まりました。コアメンバーはPMの私、そしてエンジニア、デザイナーの計3名です。試行錯誤を重ね、2019年5月23日に『コーデ相談 by WEAR』を公開しました」

音声UIでファッションサービスを提供するのは決まっていたというが、実際のサービスインにつなげるまでの1年間で「5つのステップ」があったと中村氏は語る。

Step1:音声UI×ファッションの最高体験を定義

――中村
「まず、ファッション分野で音声UIはどのように生かせると思うか、長期的な理想像を掲げるところからはじめました。

メンバーで話し合った結果『その日の予定や天気に合わせ、手持ち服からコーデを提案してくれるのが理想』という結論に至りました」

Step2:音声UI・ファッションに関する調査

しかし、Step1で考えた理想像をすぐに実現しようとするには難易度が高かったため、音声UIとファッションに関する調査を行ったそう。

――中村
「Alexaの海外事例を読み込み、解決できそうな課題を洗い出しました。そしてファッションやコーディネイトに関する困りごとをいろんな人にヒアリングし、ペルソナを作成しました」

Step3:課題とペルソナをかけ合わせ、サービスの種を洗い出す

その後、Step2で明らかにした課題とペルソナを掛け合わせ、サービスのアイディアを出していったと言う。

――中村
「出されたアイディアのなかで、筋が良さそうなものをいくつかピックアップしました。それらをもとに、Step4でプロトタイプづくりを進めました」

Step4:「サービス価値」を検証するプロトタイプづくり

プロトタイプでは、以下の4種類が作られた。ペルソナに近い人やチームで検証した結果、プロトタイプDでいこうと方向性が決まったという。




Step5:最大限プロダクトを磨き込む

コンセプトが決まり、プロダクトづくりに着手した中村氏だが、開発にあたり工夫した点がいくつかあったそうだ。

――中村
「プロトタイプとプロダクトは違います。

ユーザーがすぐに使い方を理解できるよう、プロダクトの機能を説明するチュートリアル動画を作るなど、ユーザー目線で工夫をしました。

また、ただ音声でコーデを検索できるだけではなく、『毎日コーデを一緒に相談できる存在』に感じてもらえるような仕組みも作りました。たくさん話しかけると『仲良し度』が上がり、AIがユーザーの好みを学習します」

音声UIの開発に限ったことではないが、ユーザーが毎日使いたくなる仕組みは新しいインターフェースづくりに欠かせない。

コンセプト構想から始まり、ユーザー目線で機能が盛り込まれるなど、ZOZOテクノロジーズのスキルは相当作り込まれている印象だ。

理想を忘れず、プロダクトを磨き続けたい

――中村
「サービスのリリースまでこぎつけましたが、これで終わりにしたくはありません。

Step1で考えた理想の『その日の予定や天気に合わせ、手持ち服からコーデを提案してくれる』Alexaスキルに近づけ、未来で当たり前に使われるサービスを目指したいです」

中村氏によると、「コーデ相談 by WEAR」がZOZOテクノロジーズのビジネスに寄与するポイントは主に3つだ。

  1. R&D部門の知名度向上
    • 自社開発ブログでの発信、イベント登壇や外部メディアへの露出
  2. 技術知見のプール
    • 開発で得た知見の既存サービスへの取り込みや、他チームへの共有
  3. 採用寄与
    • ZOZOテクノロジーズに興味をもつ人が増加

費用対効果を考えると明確にプラスになる訳ではないかもしれないが、マーケティング戦略としてAlexaスキルの開発は1つの選択肢となりつつある。

これから急速に増加するであろうスマートスピーカーのユーザーに対し、何かしらのアプローチを打っておいて損はないのかもしれない。

当日のスライドはこちら:「声で操作する体験」を ファッションサービスに落とし込むために