コールセンターなどを含め、「お客様」から問い合わせがあった際、AI(人工知能)が受け答えをする企業が増えつつある。
東京都水道局は2月19日から、AIを活用したお客様対応を開始した。ただし、あくまでも「活用」するだけであって、受け答えするのはオペレーターのようだ。
迅速かつ的確な対応を実現する
これまで、水道局に対するお客様対応時は、問い合わせの内容に応じて膨大なマニュアルなどの情報から必要事項を探し出し、その内容を確認してから回答していた。マニュアルなどの情報は、電子や紙などさまざまな形だったそうだ。
当然、受け答えをこなすには経験が求められる。ときには、保留時間が発生したり、折り返したりするケースもあったという。
そこで、今回AIの導入に至ったそうだ。問い合わせの内容に応じて、回答例の候補などの有益な情報をリアルタイムでオペレーターが見る画面上に表示する。オペレーターは回答候補となる表示内容を確認し、問い合わせに回答するだけなので、迅速かつ的確な対応ができるようになる、とのこと。
お客様側からすれば、問い合わせ時間の短縮につながるメリットがある。オペレーター側にも、業務に対する習熟をより早くできるとしていて、問い合わせという部門全体で大幅な改善が見込める。
このシステムにはIBMのWatsonが使用されている。IBM Cloud上で稼働し、音声認識(IBM Watson Speech to Text)機能と、情報探索(IBM Watson Discovery)機能を利用している。
Watson Speech to Textは、ディープ・ラーニングを活用し音響的な特徴と言語知識から音声を正確にテキストとして書き起こす機能を、Watson Discoveryは、問い合わせ対応に関連するマニュアル等の文書を取り込み、情報を抽出・意味付けをした情報の中から自然言語による文書探索機能を提供する。
AIが直接受け答えをするわけではなく、回答するのはオペレーターなのは従来と変わらず。ただ、その回答に至るまでの「候補」となる回答例をAIがすぐさま出してくれるというわけだ。膨大なマニュアルからすぐに調べて対応する必要もなくなるので、オペレーターの負担も減るし、問い合わせ側も回答を得られるまでの時間が短縮されるので、かなりいい取り組みになりそうだ。
画像はプレスリリースより
IBMのAIは青森県庁でも使われている
今回、東京都水道局に導入されるIBMのAI技術は、青森県庁でも別の使い道として導入されている。
青森県庁では株式会社イグアスが販売するクラウド型AI議事録作成支援ソリューション「AI Minutes for Enterprise」を使っている。
クラウド型AI議事録作成支援ソリューションAI Minutes for Enterpriseの機能は、IBM WatsonのSpeech to Textの機能により自然言語を処理し、マイクを通じて話者の言葉をリアルタイムにテキスト化。編集クライアントによって、複数人で編集可能となり、これまでの長時間の議事録作成時間を大幅に削減する。
青森県としては今後、内部業務の議事録作成だけでなく、ろう学校、郷土館等の教育部門での学習・理解支援や観光客対応部門での外国語翻訳支援などの県民に対するサービスや福祉の向上にも活用し、音声や言語に関わる格差の解消という行政課題を解決することを目指しているという。