ヤフーが、11月からネットオークション・フリマサービス「ヤフオク!」における偽物出品対策に、従来の機械学習に加えてヤフーのスーパーコンピューター「kukai」とディープラーニングの活用を開始したと発表しています。
「偽物出品検知AI」で検知精度が3.1倍に向上
この「偽物出品検知AI」は、出品物および出品者に関するあらゆる情報を活用し、出品完了後数秒以内にその出品物が偽物である確率を判定します。
偽物である確率が高いと判定した場合には優先的に人手による削除検討へ移行。そのため偽物の削除率が上昇し、削除までの時間も短縮されるんだとか。
実際の出品情報50万件を用いて「偽物出品検知AI」による判定を行ったところ、これまで使用していた、機械学習を用いた不正出品検知システムと比較すると検知精度が約3.1倍に向上したといいます。
ヤフーが誇るスーパーコンピューター「kukai」で処理速度も70倍に
また、「偽物出品検知AI」ではGPUサーバーではなくヤフーのスーパーコンピューター「kukai」を使用。過去にはYahoo!知恵袋の“クソリプ”をディープラーニングで自動検出するなどで話題になりました。
ヤフーが開発したディープラーニング活用に特化した省エネ性能の高いスーパーコンピュータ。スパコンの省エネ性能ランキング「GREEN500」において世界第2位を獲得(2017年6月発表)。GPUを使用した従来の社内環境と比較し、演算処理性能が理論上約225倍。消費電力あたりの処理性能も世界トップクラスの値を記録しており(2017年6月時点)、より大規模なディープラーニング処理を短時間かつ低コストにおこなえる。
これまでサービスで活用していたGPUサーバでおこなうと、約110時間かかっていた新たな検知モデル構築が、「kukai」使用により約70倍の処理速度となり、約1時間半で完了したそう。これによって検知モデルの更新頻度を飛躍的に向上でき、新たなパターンの偽物出品が発生しても早急に対策を進められます。
これまでも偽物出品問題への対策に取り組んできたヤフー
ヤフーはこれまでも、「ヤフオク!」内の偽物出品問題への対策に取り組んできました。たとえば、
- 2005年から機械学習を用いた不正出品検知システムを導入
- ユーザーからの通報機能も活用した人手による「24時間365日パトロール」の実施
- 知的財産権の権利者との連携制度「知的財産権保護プログラム」の運用
などの取り組みです。今回、1000万件以上の膨大な取引データと独自に開発したディープラーニング特化型スパコン「kukai」を活用。検知精度の大幅な向上が見込めるディープラーニングを用いた「偽物出品検知AI」を開発したという経緯のようです。
toCサービスの裏で進むディープラーニング活用
ヤフーは、今後も「ヤフオク!」において、「偽物出品検知AI」の更なる検知精度の向上、及び安全な売り場を提供するため、多角的な不正対策を強化するとしています。
ヤフーはほかにも、
- ヤフーの音声認識エンジン「YJVOICE」
- 「Yahoo! JAPAN」アプリ
- 「Yahoo!知恵袋」
などのtoCサービスの裏側にディープラーニングの実装を進めています。2017年にディープラーニング活用特化スパコン「kukai」を開発し、2018年には2基目を増設。
同じtoCサービスという切り口では、メルカリでも不正出品の検知にAIが活用されていたり、マッチングアプリ「Pairs」を提供するエウレカでも、サクラやブラックリストのユーザーをAIで検知するなどの取り組みがされていたりします。
toCサービスでは、ユーザーのモラルに反した行動や発言をいかに抑え、人が集まるコミュニティとして健全化できるかという視点が重要になってきます。サービスの健全性を確保し、より多くのユーザーに使ってもらうことでサービスは成長します。
そのサービスの健全化のためにAIが活用されるのは素晴らしいこと。Ledge.aiでも今後取り上げていきます。