レシート・領収書からデジタル情報へと移行している会計のデータ管理。
OCR(光学的文字認識)によるペーパーレス化に伴い、会計の自動化も進み、なかにはAIが使われているものもあります。
「会計のAI化」の現状、気になりませんか?
そこで今回は、レシート・領収書の読み込みから仕訳までを自動化する「YAYOI SMART CONNECT(以下、スマート取引取込)」を提供する弥生株式会社の橋本武志氏、吉岡 伸晃氏、牛尾 哲朗氏に
- 会計の自動化
- 機械学習を用いた仕訳
について、お話を聞いてきました。
開発本部 システム開発部 部長
吉岡 伸晃 氏(写真真ん中)
マーケティング本部 マーケティング部 ビジネス戦略チーム シニアマネジャー
牛尾 哲朗 氏(写真右)
開発本部 システム開発部【スマート取引取込】チーム テクニカルリーダー
取引データを会計データにサクッと変換。「スマート取引取込」でストレスフリーな会計業務を
――さっそくですがスマート取引取込、気になります。
「スマート取引取込は、会計ソフト『弥生会計』をはじめとした弊社の会計製品・サービスとリアルな世界をつなぐためのインターフェースです。
レシートや領収書などを自動で取り込み、仕訳します。仕訳されたデータは弥生会計などへシームレスに取り込むことが可能です」
取り込み可能なものは、
- 金融機関明細
- CSVデータ
- レシート画像
- POSレジデータ
- 電子マネーの利用明細
など多岐に渡ります。
従来、人手でおこなっていたデータの入力作業が自動化されることで、人間は振り分けられた項目をただ確認するだけ。
大幅な手間の軽減と時間の削減につながり、日々会計情報の入力に追われている人を作業から解放してくれます。
自動で会計データに取り込んでくれるとなると、手間や時間の短縮はもちろんですが、利点はそれだけではありません。
「人の手による作業は、どうしてもミスが起きます。会計情報を自動で取り込むことで人手を減らせるだけでなく、同時に品質を保つことができます。
また、仕訳においては機械学習で勘定科目に振り分けるため、使えば使うほど精度も上がり、一定以上の精度が保証されます」
機械学習を使うことで、作業者によるバラつきが出ることもなく一貫性があり、精度向上にも繋がるのはもちろん、作業の効率化も期待できます。
会計業務は繰り返しが多い業務。やはりAIが活用できる部分は多いです。
スマート取引取込の強み、「豊富なサービス連携」と「集約されたデータ量」
「スマート取引取込が支持される点として
- 導入の簡易さ
- 使いやすさ
- 取り込み可能なデータ種類の多さ
の3点が主に挙げられます。
レシート・領収書の読み込みが、事前設定せずにすぐ使うことができるなど、あらゆる点において、会計業務で発生するユーザーの負担を減らします」
多少フローは変わってしまいますが、手間・時間が削減されることを考えれば、ハードルは低いです。
このようにスマート取引取込が良質なサービスを提供できるのは、多様なサービスと連携し、豊富な会計データをもとに仕訳の学習ができるからです。
特に、機械学習において欠かすことのできないデータ量という観点では、弥生会計は中小企業・個人事業主など様々な業種・属性のユーザーが利用されており、豊富なデータが集められているという長所があります。
スマート取引取込が、連携可能なサービスがこちら。

750万人以上が利用している支出入が管理できる「Zaim」やクラウド請求管理サービス「Misoca」などを含むさまざまなサービスと連携しているそう。
そのまま同じサービスを使い続けられるのは、ユーザーにとって非常に嬉しいポイントです。

スマート取引取込はクラウドベースの機能ですが、クラウドアプリの「弥生会計 オンライン」、「やよいの青色申告 オンライン」はもちろん、デスクトップアプリの「弥生会計」、「やよいの青色申告」でも利用することができます。
「多種多様なサービスと連携することで他社との差別化を図っていますが、強みはなんといってもデータ量ですね。それぞれの連携サービスのユーザー数が多いため、膨大なデータを蓄積できます」
「豊富なサービス連携」「集約されたデータ量」の2つによって、スマート取引取込は会計という分野で圧倒的なシェアが誇っています。
具体的にどのように機械学習が使われているのか、少し技術的な観点も気になります。
個人学習と全体学習を用いた機械学習よる仕訳の自動化
――スマート取引取込では、実際にどのような流れで取引データを処理しているのでしょうか?
「スマート取引取込は取引データのスキャン、自動仕訳、弥生シリーズへの連携の3つのフェーズから成り立っています。スキャナーやカメラでレシート・領収書を読み込ませると、取引・勘定科目の提案がおこなわれます」
レシート・領収書のスキャンではOCRの技術が、自動仕訳では機械学習が使われているそうです。
スキャナーやデジタルカメラで読み取った手書きや印刷された文字を、コンピューターが利用できるテキストデータ変換する技術。
「OCRを用いることで日付や取引の内容を認識しています。手書きの書類の場合、認識精度に多少バラツキが発生しますが、それ以外では高い精度を発揮します」
手動で入力する代わりに、OCRを使いスマホのカメラやスキャナーで読み込むことで、大幅に時間を節約できます。
そして、OCRでレシート・領収書を読み込むだけでなく、OCRの先に自動で仕訳してくれるスマート取引取込を用いていることが最大のポイントです。
「機械学習は、取引データを仕訳するための勘定科目の提案に使っています。
仕訳は、ユーザー自身でも特定の文字列による検索などを用いておこなうことができますが、どのように勘定科目に振り分けていいのか分からないユーザーも多くいます。それを補うためにも、過去のビッグデータから解析し仕訳をおこなっています」

膨大な会計情報を人間がミスなく振り分けることは、至難の技。
提案された仕訳は修正することが可能なので、AIと人間の二重チェックで、見落としを大きく減らすことができるそう。
「スマート取引取込の特徴は、個人学習と全体学習の2つの機械学習を用いている点です。
個人学習は個人の過去に仕訳したデータをもとにしており、全体学習は全ユーザーの4年分のデータから解析をおこなっています。同業種の集合知を用いることで精度の高い仕訳が実現できます」
使えば使うほど正解率は上昇し、定型化された会計情報を扱う企業であれば、3ヶ月程度で高い水準が実現できるそう。
「使えば使うほど精度が上がる」のは、まさに機械学習だからこその恩恵です。
会計情報は事業者の財産となりうるか
「現在、仕訳の精度をさらに上げるために、社内でも推論の研究をおこなっています。
また、OCRだけではなく機械学習を用いた推論による自動仕訳をおこなっている点をもっと認知させたいです。利用ユーザーを増やし、さらにデータを貯め、より優秀なAIにしていきたいですね」
会計分野において機械学習による自動化はあまり浸透しておらず、導入している事業者はまだまだ少ないです。
仕訳の精度を向上させ、手間を大きく削減する機械学習による会計の自動化が、より多くの場所で活用されて欲しいと、橋本さん。
レシート・領収書をデジタル化し、高い精度で仕訳することは、もちろん会計業務としてありがたいこと。正規化された会計情報の蓄積は事業者の財産になります。日々進化している統計分析を用いれば、そこから会社経営のヒントも得られるでしょう。
スマート取引取込は会計情報の正規化において一役買いそうです。