汎用人工知能とは|特化型人工知能との違い、労働からの解放について考える

このエントリーをはてなブックマークに追加


人工知能の発達はまだ序章に過ぎません。フィクションの世界で多く語られてきた汎用人工知能が、現実世界でみられる日が刻一刻と近づいてきています。
本稿では、人間をも凌駕すると言われている汎用人工知能の実態や、その実現により問われる人間の存在意義を解説していきます。

汎用人工知能とは

photo by pixabay

汎用人工知能(Artificial General Intelligence)とは
特定の課題にのみ対応するのではなく、人間と同じようにさまざまな課題を処理可能な人工知能を指します。

人間は、想定外の出来事が起きた場合でも、これまでの経験に基づいて総合的に判断し、問題を解決できます。このように、人間のような問題処理能力をもつAIが汎用人工知能です。

汎用人工知能は、プログラムされた特定の機能以上の状況に対しても、自ら学習を行い、能力を応用することによって問題を処理できるとされています。実用化に高い期待が寄せられているものの、未だ実現はしていません。

汎用人工知能はSFの映画などで多く描かれています。一例として、2015年に公開された映画、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」では、汎用人工知能が悪役として登場します。この映画では、人間が自らの手で造り出した汎用人工知能が、人間を滅ぼすために暴走してしまうストーリーを鮮明に描いています。このように、汎用人工知能は今までフィクションの世界で描かれる虚構に過ぎませんでした。

汎用人工知能vs特化型人工知能

photo by pixabay

汎用人工知能は、人工知能がいくつかの種類に大別される中のひとつです。その汎用人工知能がよく比較されるのが特化型人工知能(Narrow AI)です。

特化型人工知能とは
限定された領域の課題に特化して自動的に学習、処理を行う人工知能を指します。具体的には、画像認識や音声認識、自然言語処理などの技術を持つ人工知能です。現在ビジネス領域で広く活用されているAIは特化型人工知能に当たります。

このふたつは混同されやすいのでしっかりと違いを抑えておきましょう。汎用人工知能はまだ実現していないとガッカリする人もいるかもしれませんが、特化型人工知能でさえ、すでに人間の能力を超えています。特化型人工知能の代表といえる例が、プロ囲碁棋士のイ・セドルに勝利したAlphaGoです。

AlphaGoは,

①16万局、約3000万の局面を3週間かけて学習する

②さらにAlphaGoを自己対決させ、一手のみランダムに打つだけで、新たに3000万局面を生み出す

③そしてその局面と勝敗結果を1週間で学習する

それに対して、人間の棋士は毎日一局打ったとしても、30年で1万1千局に過ぎません。これは、特化型人工知能でさえも、人間と比べて学習能力に天と地ほどの差があることを意味します。

強いAIと弱いAI

加えて、アメリカの哲学者ジョン・サールが提唱した、強いAIと弱いAIという分類もあります。

強いAIとは、人間のような自意識を備え、全認知能力を必要とする作業も可能なAIを指します。

強いAIは人間のように考えて行動できるため、人間のように「想定外の状況に、過去の経験に基づいて学習、処理する」といった対応も可能になるとして期待が寄せられています。汎用人工知能は強いAIに分類されます。

対して、弱いAIとは、与えられた仕事に対しては自動的に処理ができる一方で、プログラムされていない、想定外の状況への対応はできません。

つまり、人間の知性の一部分のみを代替し、特定のタスクだけを処理するのが弱いAIです。先ほど紹介した特化型人工知能、「アルファ碁」も、弱いAIに分類されます。

汎用人工知能はいつ実現するか?

photo by pixabay

そもそも人工知能が人間のような知能を持つコンピューターであれば、汎用人工知能こそが真の人工知能であり、特化型人工知能は課題解決を自動化する機械に過ぎない、という考え方もあります。そんな人間の域を超えた汎用人工知能はいつ誕生するのでしょうか。

米国の未来学者レイ・カーツワイルは著書「The singularity is near」にて、2029年に汎用型AIが誕生すると述べています。

一方で、ロボット研究者として有名なロドニー・ブルックスは、未来学者のマーティン・フォードの著書「Architects of Intelligence」のインタビューで「2200年までに、汎用型AIが50%の確率で実現される」と述べています。

このように汎用型AIが実現する時期の予測はさまざまです。

汎用人工知能の研究

汎用人工知能を実現するために、日本を含む世界各国の様々な研究機関で研究が行われています。日本では、汎用人工知能研究会(SIG-AGI)などが汎用人工知能の開発に力を入れています。現段階では汎用人工知能は次の2つの方式のいずれかによって実現されると言われています。

1つは、「全脳エミュレーション」というもの。これは人の脳の細胞やシナプス結合をすべてコンピューター上にコピーし、そのデータを元に汎用人工知能をつくる方式です。

2つ目に、「全脳アーキテクチャ」と呼ばれるもの。これは人間の脳を真似て、人工的に構成された機械学習器を組み合わせる事で人間の能力をも凌駕する汎用人工知能を実現する方式です。全脳アーキテクチャは2030年には完成されると言われています。

どちらの方式も人間の脳をモデルとして、自律的に考え判断する能力の再現を試みています。

汎用人工知能による労働からの解放

photo by pixabay

人工知能による影響を経済学の観点から研究する駒沢大学講師、井上智洋氏が考える機械に置き換えられる可能性が低い仕事は、「CMH」という概念により定義されます。

C:”Creativity” 小説や映画の作成、研究開発、商品開発
M:”Management” 企業経営、店舗・工場の管理
H:”Hospitality” 介護、看護、ホテルマン、マッサージ師

しかし、汎用人工知能の実現によっては、こうした仕事からも解放される可能性があると井上氏は言います。

「全脳アーキテクチャ方式の汎用人工知能は、人為的に作って模倣しただけなので完全に人間の脳と異なり、生命の壁は乗り超えられません。(中略)しかし、人間の真似をすることで、どんどん学習していくので、ホスピタリティのレベルを追い越す可能性も十分にあり得ます。」
「人工知能の経済学」視点で考える第4次産業革命――雇用なき経済成長と認知アーキテクチャより抜粋)

汎用人工知能が実現したらすぐさまに人間の労働を代行してくれるかというと、そうとは限りません。人件費とAIを一時的に導入する費用を比べたとき、人件費の方が安い場合があるからです。人件費がAIの導入コストを上回らない限り、人は労働をする必要があります。人間が労働から解放される日は、まだそう近くはなさそうです。

汎用人工知能との共存

photo by pixabay

汎用人工知能が実用化されれば、人間の存在価値がなくなるのではないかと懸念する人も少なくはないと思います。現に汎用人工知能は映画でも悪く描かれることも多く、何かとマイナスのイメージが植え付けられています。しかし、汎用人工知能が実用化されたとしても、仕事や娯楽において人は人に熱狂し喜怒哀楽を抱き続きます。

これに似たようなことが安宅和人氏が著作の「シン・ニホン」にも述べられています。

「ただし、プロの碁や将棋の意味がなくなるかどうかといえばまったく別だ。人間がクルマに走りで勝てなくなってから100年以上だが、いまだに人間がもっとも興奮するスポーツの1つは陸上競技の100メートル走だ。人としての限界を極めることの価値は、人間が自分たちの限界を理解したい、人間としての進化を感じたい、と思う気持ちがある限り続く。」
(安宅和人著作、「シン・ニホン」p23、8〜11行目より抜粋)

科学技術によるイノベーションは留まることを知りません。人間が汎用人工知能と共存するためにも、私たちがAIなどの新しい技術に対しての知識やリテラシーを身に付ける必要があると感じます。