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2025/6/30 [MON]
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プロジェクトを動かす組織をどう作るか パナソニックが進めるAI活用の実装体制づくり

生成AIの進化は目覚ましく、もはや一部の専門領域にとどまらず、ビジネス全体の競争力を左右する存在となっている。そうした中、パナソニック株式会社のBtoC、DtoC向け国内マーケティング部門は、AI活用の理解促進を目的とした研修を2025年4月23日・24日の2日間にわたって実施した。本研修の参加対象者は、コンシューマーマーケティングジャパン本部PXドリブンセンターと関連部門に所属するメンバーで、研修講師は株式会社レッジのAIコンサルタントやエンジニアが担当した。 本記事では、当該研修の内容や参加者の声から見える学びと課題についてレポートする。 ## DX推進に必要な“教育機会の創出” 研修開催に踏み切った理由として、DX企画部門の研修推進担当は、「DXやAI活用推進を進める組織として、社内のリテラシー水準向上や技術理解、さらにはプロジェクト推進や教育展開に関するナレッジのインストールが不可欠と考えている」と述べた。内容設計にあたっては、参加者の理解度の把握、AI活用への動機付け、技術トレンドのキャッチアップといった要素を重視したという。 ### **生成AIを軸とした技術理解 1日目:理論と全体像の把握** 研修初日はAIの進化の歴史から始まり、従来のルールベース・機械学習型と近年注目を集める生成AIとの違いについての解説が行われた。 ![パナソニック_2.png] また、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(LLM)の中核技術「Transformer」や、人間の意図に沿った出力を可能にする「RLHF」など、単なる用語解説を超えた技術的な背景まで踏み込んだ解説がなされた。さらに、画像生成AIの基盤となる「拡散モデル」や、少ないデータと計算資源でファインチューニングを可能にする「LoRA」の紹介など、生成AIの応用領域の広さが伝えられた。実務につながる内容として、セキュリティや倫理といった社会的課題も言及され、ハルシネーションやプライバシーリスクの実情が議論された点も実践を重視する受講者にとって大きな関心を集めた。 また、AIエージェントやマルチモーダルAIといった最新のAIトレンドについても触れ、受講者からは「説明資料の質と量のバランスが適切」「初日の終盤から新しい知見が多く、参考になった」との声が寄せられた。1日目は、単なる“知識習得”ではなく“業務への応用”を意識した、実践的な理解を促す講義となった。 ### **RAGとハンズオンで実践へ**──**2日目**:**体験を通じた学びの深化** 2日目は、近年注目されるRAG(Retrieval-Augmented Generation)の理解と体験を中心に講義が展開された。RAGとは、検索と生成を組み合わせることで、特定の業務文脈に即したAI活用を可能とする仕組みである。研修では「Dify」と呼ばれるノーコード開発ツールを用いて、受講者自身がRAGアプリケーションを構築するハンズオンに取り組んだ。 ![パナソニック_3.png] :::small 研修中の様子 ::: DifyはGUIベースで扱いやすく、初心者でも基本的な流れを体験しやすい。参加者からも「自分で最初から作ったことで理解が深まった」「テンプレートに頼らず構造を把握できた」などの前向きな声が上がった。理解度に関しては、「内容は理解できたが何に活かせばよいか見えづらい」といった意見も寄せられ、構造理解と業務適用の間にある“目的意識の醸成”が今後の課題として浮かび上がった。 ### **研修を終えて** 2日間にわたる研修を通じて、参加者からは「より詳細な解説を求めたい」「業務への具体的な活用方法を知りたい」といった前向きな声が多く寄せられた。こうした反響を受け、研修推進担当者は「今後は、実務に直結するシステムの導入や具体的な事例の構築に取り組み、導入組織への展開も視野に入れている」と研修の手応えを語った。 ![パナソニック_4.jpg] :::small パナソニック株式会社 コンシューマーマーケティングジャパン本部 PXドリブンセンター DX企画部 研修推進チーム ::: また、参加者の多くが自身のスキルレベルにかかわらず積極的に学ぶ姿勢を見せた点について「想定以上に幅広い層が前向きに取り組んでいた。今回の研修は、AIを特定の職種やスキルに限定しない“民主化”の第一歩になった」と振り返った。 最後に「本研修は、業務変革へのきっかけであり、社内のAI・DX推進を加速させる起点になる。今後も技術への関心を高め、推進体制の基盤強化に努めたい」と展望を語り、総括とした。 ## 業務改善を支える基盤づくりに向けて 本研修の本質的な意義は、単にAIの知識を得ることではない。パナソニックのDX関連部署に所属する参加者たちは、同社における業務改善・生産性向上の中核を担うプロジェクト推進の担い手である。今回の取り組みは、そうした人材が社内での変革をリードしていくための“基盤づくり”として実施されたものである。現場の業務課題を的確に捉え、AIやデジタル技術を活用して解決に導くには、技術を「使える」だけでは不十分である。なぜその技術が有効なのか、どのような前提で構築されているのか、そうした“仕組みの理解”こそが、企画や導入判断の質を高め、プロジェクト全体の成果を左右する。 技術用語の表面的な説明を超え、業務適用の視点で学ぶ今回の研修プログラムは、「プロジェクト実行の土台を築く研修」として設計された。受講者から「理解できたことで、今後の検討フェーズに進める」との声が上がったように、この学びは単なる座学ではなく、次のアクションを生み出す準備でもある。 社内の業務改善に向けたツール導入を推進する部署において、“DXを企画する人材”が正しい知識と判断軸を持つことは、成功の鍵を握る。今回の研修は、パナソニックがその重要性を理解し、未来への投資として人材育成に踏み出した一例といえるだろう。

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