ラーニング

ラーニング
2025/2/17 [MON]
エンジニアの新たな道を切り拓く、42 Tokyoの就職支援プログラム「Road to」が描く未来 企業と学生双方の大きなメリットとは?のサムネイル画像

エンジニアの新たな道を切り拓く、42 Tokyoの就職支援プログラム「Road to」が描く未来 企業と学生双方の大きなメリットとは?

実践的なカリキュラムでエンジニアを育成するユニークな教育機関である42 Tokyo。その革新的な取り組みの中で、今回注目したのは、“誰でも企業に平等に挑戦できる機会提供”と銘を打った42 Tokyo独自のカリキュラム「Road to」だ。このカリキュラムは、単なる就職支援ではなく、42 Tokyoで学ぶ学生がエンジニアとしての“実力”で就職を掴む機会を創出したものだ。 本取材では、42 Tokyoの矢追氏と「Road to」第二弾に参画する株式会社フォアーゼットの田中氏、蔀氏の3名に話を伺い、立ち上げの背景やプログラム内容、そして今後の展望までを深掘りした。 ※インタビューは2025年1月28日にzoomにて行われた。 :::box **一般社団法人42 Tokyo** **CTO** **矢追良太** フランスのプログラミングスクール『42』で約3年間ソフトウェアエンジニアリングを学び、42における最高の学習レベルに到達しカリキュラムを修了。合同会社DMM.comの亀山会長からの依頼を受け、2019年に日本初の42キャンパス『42 Tokyo』の設立に従事する。42 Tokyo開校後、教材開発や学習環境・学習システムの構築等を幅広く手掛ける。 ::: :::box **株式会社フォアーゼット** **CEO** **田中 悠斗** 防衛⼤学校卒業。陸上⾃衛隊に⼊隊、幹部自衛官として勤務。情報戦略およびサイバーセキュリティを専門とし、10年以上にわたりレッドチームオペレーションやインシデント対応に従事。政府機関および民間企業に対して、各種セキュリティソリューションを提供する。 ::: :::box **株式会社フォアーゼット** **蔀 綾人(しとみ あやと)** 株式会社フォアーゼット Hacker / ベトナムDuyTan大学 レッドチーム講師。42Tokyoへの在籍後に株式会社フォアーゼットへ入社。バグバウンティやOSSプロジェクトにて多数のゼロデイ攻撃手法を発見。得意分野はレッドチームオペレーション、ペネトレーションテストのほかWEBアプリケーション開発にまで及ぶ。 ::: ## 「Road to」設立の背景 42 Tokyoは、従来の教育機関とは一線を画す、教師不在のユニークな学習環境を提供している。学生たちは互いに教え合い、学び合うことで、自律的な成長を促す。 42 Tokyoで学ぶことにより実践的な技術力を身に着けることができる。しかし、将来有望な学生たちも、卒業後の進路を獲得することは簡単ではない。 「Road to」の発案者であり、42 Parisの卒業生でもある矢追氏は、かつての自身の経験からこのプログラムを着想した。矢追氏は、42 Parisで熱心に課題に取り組む日々を送る一方、いざ就職活動を始めた時に書類選考で落とされてしまうことも多く、なかなか思い通りの結果が得られない時間が続いたという。 ![42tokyo_road to_1.png] 「42で課題を解くように、問題に取り組んでいくうちに自然と就職できた、というようなルートを作れれば、技術者の進路の可能性を広げられるのではないかと思った」。矢追氏のその思いが形となり、学歴などの書類上の情報ではなく、エンジニアとしての実力を活かして社会で活躍する道を開く手段の一つとして、「Road to」は誕生した。 ## 技術力を評価する「Road to」の取り組み 「Road to」は、42 Tokyoに所属する学生であれば誰でも挑戦することができる。通常のカリキュラムとの違いは、就職を目的としているかどうかであり、課題の進め方は従来と同様で、学生同士の相互レビューを経て課題を提出しなければならない。現在、5社の「Road to」が展開されているが、通常カリキュラムと並列で、何社の課題に挑戦してもよいとのことだ。 企業から提供される課題のテーマはアプリケーション開発やセキュリティなど多岐にわたり、参画する企業が自社のニーズを交えながら作成している。学生たちは、これらの課題に挑戦することで、自身のスキルを磨くと同時に、企業が求めるレベルを肌で感じることができる。 企業は学生たちの提出物を通して、技術力だけでなく、問題解決能力やチームワークなど、総合的な能力を判断することができる。「Road to」は就職を目的としているため、優秀な学生に対して、書類選考や技術テストの免除といった特別なインセンティブを提供することもできる。これにより、学生たちは、よりスムーズに選考を進めることができ、自分のスキルをアピールする機会を得やすくなる。実際に2021年に実施した第一弾へ参画した企業で42 Tokyoの学生を雇用した企業もあり、就職後の活躍も耳に入ってきているという。 「Road to」は、企業側と学生側の双方にとって、メリットのある仕組みと言えるだろう。 「Road to」第二弾に参画する株式会社フォアーゼットも、42 Tokyoの理念や「Road to」のコンセプトへ共感し、参画を決めた。42 Tokyoの卒業生であり、フォアーゼットでホワイトハッカーとして働く蔀氏は、参画の背景を以下のように語った。 ![42tokyo_road to_3.png] 「『Road to』は私の在学中からあったプログラムで、すでに存在は認知していた。42 Tokyoの卒業生として私ができることは、在校生に『Road to』を提供することだと考えた。また、今の会社でセキュリティエンジニアとして働くようになってから、マニュアルを深く読むことができる人材が非常に貴重であると痛感した。42には優秀な人が多いことは在学中から感じており、『Road to』から今の会社で一緒に働く仲間を見つけたいと思った」 CEOの田中氏は蔀氏からの提案を受け、42 Tokyoを見学したのち、参画を決めたという。 「我々の会社には、知的好奇心が高く、夢中になれる人材が必要だと思っている。42の学生たちは、知的好奇心が旺盛で、相互学習を通して課題を解決する力に長けていると感じた。『Road to』を通して、彼らの成長を支援することは、企業の成長にも繋がると期待している」 フォアーゼットが学生向けに提供する課題は、特定のサーバーへの侵入を試み、最終的に管理者権限まで取得する内容になっている。その過程で、42 Tokyoの通常カリキュラムで扱うWebセキュリティやバイナリーセキュリティの要素を組み込み、学生のセキュリティに関するスキルを網羅的に見れるように設計している。矢追氏曰く「セキュリティ系の総合格闘技」のような課題になっているとのこと。本記事を見ている42 Tokyoの学生は、ぜひフォア―ゼットの課題へチャレンジしてほしい。 ## 今後の展望 42 Tokyoの教育理念は、就職を最終目標とするものではない。挑戦したい人に質の高い教育を提供することを目指している。そのため42 Tokyoでは、企業と協業しながら様々なイベントやワークショップを開催している。「Road to」もまた、内定をゴールとするのではなく、あくまでもその過程における重要なステップとして位置づけられている。学生たちは、プログラムを通して、自身の適性や興味関心を深め、卒業後のキャリアを考える上で、貴重な経験を得られるのだ。 今後、42 Tokyoは「Road to」を通して、より多くの学生にエンジニアとしてのキャリアを拓く機会を提供していく考えである。将来的には、様々な分野の企業と連携し、より多様な課題やキャリアパスを提供することを目指している。 矢追氏は、今後の展望について次のように語った。 「42を実際にパリから誘致してくる時は、このカリキュラムが日本に馴染むのか、非常に不安な部分もあった。しかし、実際に開校すると、様々な方から”このような学び方もあるんですね”と、ポジティブな意見をもらえた。現段階はまだ、実践的なスキルを学ぶ学習環境の提供しかできていない。大きなビジョンになるが、この『Road to』に全ての企業が参加し、学生たちが自身の興味や才能を活かせる道が見つけられるよう、参画企業を広げていきたい」 ## インタビューを終えて 今回のインタビューを通して、42Tokyoの「Road to」が単なる就職支援プログラムを超え、まさに「道」を切り拓く存在であることを強く実感した。印象的だったのは、42Tokyoの学生たちが持つ、自主学習能力に対する企業からの期待だ。42 Tokyo特有の教師不在という環境が、自ら学び、考え、行動することができる力を育み、それらが企業からの高い評価へと繋がっている。この好循環こそが、「Road to」の成功を支える重要な要素なのだろう。 「Road to」は、これからのエンジニア育成の在り方を示す、一つの指針となる可能性を秘めている。42Tokyoと「Road to」が、これからも多くの才能を世に送り出し、社会に貢献していくことに期待したい。 :::box 特集:[42 Tokyo、知ってますか? AIも学べるパリ発の究極のエンジニアスクール 特別インタビュー]{target=“_blank”} :::

アクセスランキング
FOLLOW US
各種SNSでも最新情報をお届けしております