エイベックス株式会社は1月21日、動画解析技術とデータサイエンスを活用しダンス技術のスコア化を実現したと発表。
人間の骨格を検出してダンス技術をスコア化
エイベックスは、2018年からダンス技術のスコア化を実現するプロジェクトを始動し、ダンスの定量評価に挑んできた。プロジェクトには、ダンス解析を担うアビームコンサルティング株式会社、人間の骨格を検出する独自開発の人工知能エンジン「VisionPose(ビジョンポーズ)」によりダンスの動きを捉える姿勢解析技術を提供する株式会社ネクストシステムが参画している。
人間の骨格を検出する仕組みを活用している
ダンス分野では、育成や評価システムにおいて個人の感覚や感性に左右されることが多く、データサイエンスなどの科学的アプローチの活用が議論されていた。さらに、2012年度からは中学校の体育でダンスが必修化されたものの、教育現場では指導者のダンス技術の理解習得や、評価・評点方法の不明瞭さなど、指導者の大きな負担も課題となっていた。
スマートフォンなどで動画を撮影するだけ
今回、エイベックスが発表したのはダンス技術のスコア化を活用したスキルチェックアプリ「Dance COMMUNE(ダンス コミューン)」だ。これまでエイベックスが培ってきたダンス育成ノウハウをもとに、動画解析技術と独自のデータ分析およびアルゴリズム開発など科学的アプローチを取り入れることで、ダンスの定量評価(=スコア化)を実現している。
エイベックスが発表したダンススコア化アプリ画面
同アプリは2019年10月から「エイベックス・アーティストアカデミー」のダンスクラスで導入中。新たなレッスンプログラムを展開いている。経験豊富なダンスインストラクターによる週1回のダンスレッスンに加え、アプリを活用した自主練習とスキルチェックを合わせることで、受講生の成長サイクルを加速させているという。
今後は、学校教育におけるダンス指導をはじめ、より多くのダンス育成の現場への導入拡大やダンス育成ノウハウの海外展開も見据えているそうだ。
>>プレスリリース(PR TIMES)
ディープラーニングで人のポーズを解析
さて。人の動きを解析するといえば、OpenPoseが非常に有名な技術のひとつ。
OpenPoseはカーネギーメロン大学(CMU)のZhe Caoらが「Realtime Multi-Person pose estimation」の論文で発表した、深層学習を用いて人物のポーズを可視化してくれる手法だ。
OpenPoseの解析画面
Ledge.aiで記事化した2018年当時から、静止画を入力するだけで人間の関節点を検出することが可能で、さらにGPUなどの高性能プロセッサを使えば動画像内に複数人の人物がいてもリアルタイムに検出できるということで注目を集めていた。
実際に、公開されていたプログラムを試したところ、身体だけでなく顔と手まで解析可能。激しい動きの動画でも検出でき、かなりの精度だった。
ゴルフのフォームの写真を解析させたがかなり正確
関節点情報の取得は、モーションキャプチャーという技術を使えば可能だった。しかし、人間の身体にセンサーを取り付けないと、間接点の情報を取得できないという課題もあった。OpenPoseの当時画期的だと言われていたのは、特殊なセンサーは不要なのに解析ができるという点にある。
ダンス以外の採点競技なども、いずれはすべてAIが判定する時代になりそうだ。エイベックスが発表したダンススコア化アプリのように、練習時からスコア化できる仕組みが広まれば、競技人口の拡大にもつながりそうだ。さらには、競技中の採点項目が可視化されれば、ふだんその種目に詳しくない人に対しても“わかりやすい”競技になるかもしれない。