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2026/1/31 [SAT]
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技術の思春期に入ったAI──Anthropic CEOダリオ・アモデイ氏、国家安全保障・経済・民主主義へのリスクに警鐘

AI開発企業AnthropicのCEOである ダリオ・アモデイ 氏は2026年1月27日、強力なAIが社会にもたらすリスクについて論じた長文エッセイ「The Adolescence of Technology(技術の思春期)」を[公開]{target=“_blank”}した。同氏は、AIが急速に能力を高める一方で、制度や社会の成熟が追いついていない「危険な過渡期」にあると指摘し、国家安全保障、経済、民主主義の3領域で深刻な影響が生じうると警告している。 ## 「技術の思春期」とは──能力が先行する危うい段階 アモデイ氏は現在のAIを、人間の成長過程になぞらえて「技術の思春期(Adolescence)」にあると表現する。この段階では、技術的な能力が急速に拡大する一方で、それを安全かつ安定的に運用するためのガバナンスや社会制度が十分に整っていない。 強い影響力を持ち始めながらも、判断力や自制が成熟していない――同氏は、こうした「能力の増大」と「未成熟さ」が同居する状態こそが、現在のAIを最も不安定で危険な存在にしていると論じている。 ## 国家安全保障:AIが不安定化させる軍事・サイバー空間 国家安全保障の領域では、AIの高度化が軍事、諜報、サイバー分野に新たな不安定要因をもたらす可能性があると指摘した。 サイバー攻撃や情報操作の高度化により、従来の抑止や防御の枠組みが機能しにくくなる恐れがあるという。 また、国家間の技術競争が激化する中で、安全対策や慎重な検証が後回しにされる構造的リスクにも言及しており、AIは一度広く普及すると制御が難しくなる点を強調している。 ## 経済:生産性向上の裏で進む急激な再編 経済面では、AIが生産性を大きく押し上げる可能性を認めつつ、その恩恵が均等に分配されないリスクを挙げた。雇用構造の急変や、特定の企業や国家への権力集中が進めば、社会的な不安定化につながりかねないとしている。 技術進歩のスピードに制度的・社会的な調整が追いつかない場合、短期間で大きな歪みが生じる可能性があるとし、経済的影響を過小評価すべきではないとの認識を示した。 ## 民主主義:情報環境の脆弱化と「共通の現実」の喪失 民主主義への影響について、アモデイ氏は特に強い懸念を示している。AIによる情報生成・拡散能力の向上は、世論操作や偽情報の高度化を招き、民主主義が前提としてきた「共通の現実」や情報の信頼性を損なう恐れがあるという。 同氏は、こうした情報環境の変化が、有権者の判断基盤そのものを弱体化させる可能性がある点を、深刻なリスクとして位置づけている。 ## 米ミネソタ州での出来事が浮き彫りにした「国内の民主主義」 アモデイ氏は、このエッセイが主にAIと将来を論じたものであるとしつつも、公開時点で米ミネソタ州をめぐって起きている出来事に触れ、民主主義的価値と権利を国内で守る重要性が一層切実になっていると述べている。 同州では連邦当局の強制執行をめぐる死亡事件などをきっかけに、権利や法の在り方を巡る議論と抗議が広がっており、アモデイ氏はこうした現実の緊張が、エッセイで論じた「民主主義の脆弱性」を現実の問題として浮き彫りにしていると示唆した。 なお、ミネソタ州での出来事をめぐっては、Reutersが、OpenAIの サム・アルトマン CEOが従業員向けの内部メッセージで、移民当局ICEの対応を「行き過ぎ」と批判したと報じている。 ## 前作「Machines of Loving Grace」との関係 アモデイ氏は今回のエッセイを、約1年前に発表した「[Machines of Loving Grace]{target=“_blank”}」(強力なAIを正しく活用できた場合に何が実現できるかを論じたエッセイ)の“対”に位置づけている。 前作では、AIがもたらしうる可能性や理想像に焦点が当てられていたのに対し、今回のエッセイでは、その裏側にあるリスクや、社会が備えるべき課題が正面から論じられている。 ## 「止める」か「進める」かではなく、どう向き合うか アモデイ氏は、AI開発を止めるべきだと主張しているわけではない。一方で、無条件に加速させる姿勢にも警鐘を鳴らしている。必要なのは、ガバナンス、制度設計、国際的な協調を含め、社会全体でAIと向き合う枠組みを整えることだとし、「技術の思春期」にある今の判断が、将来の安定性を大きく左右すると結論づけている。 :::box [関連記事:Anthropic、LLMを活用した影響力請負ネットワークを摘発──100超の偽ペルソナが複数の政治キャンペーンに関与] ::: :::box [関連記事:OpenAI「安全性のチーム解散」Anthropic「既存ポリシー反省」新たなAIの安全性に関するポリシー構築へ] ::: :::box [関連記事:Anthropic、アジア初の東京オフィスを開設──高市首相とアモデイCEOが会談、AIセーフティ・インスティテュートと協力覚書を締結] ::: :::box [関連記事:2024年選挙でのAI不正使用対策協定に世界の主要テック企業20社が署名 ミュンヘン安全保障会議] ::: :::box [関連記事:国連安保理、AIの国際規制を議論──グテーレス事務総長「人類の運命をアルゴリズムに委ねてはならない」] :::

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