180種類以上の学習済みAIモデルを使い放題 AI開発の“痒いところ”に手が届くプロダクト

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あらゆるデバイスにAIが載る未来――。

AI(人工知能)の活用が盛んになり、我々の生活の下支えになってきている。多くの企業がAIの開発や実装に取り組み、「AI活用」「DX推進」といったニュースが飛び交い始めるようになった。

しかし、AIは“これから”の技術。満足に実装が進んでいない業種や業界も数多い。そのなかでも、エッジ領域へのAI実装はいま多くの企業が取り組み、頭を悩ませている。この理由はいくつかあるが、作ったモデルをさまざまなデバイスに対応させる作業にハードルがあることが頭を悩ませるポイントのひとつになっている。

ax株式会社が提供する「ailia SDK(アイリア エスディーケー)」は、そんなハードルを下げてくれるパートナーになってくれるかもしれない。同社の寺田氏、客野氏、品部氏の3人に、ailia SDKについて話を聞いた。

プラットフォームごとにモデルを作り直す必要がない

―― 品部氏
「我々axは、株式会社アクセルのグループ会社として設立されました。

アクセルでは、パチンコやパチスロなどの遊技機における液晶を制御する半導体の開発を主とする事業を推進しています。そのなかで、画像や映像、音声を圧縮する技術を独自開発しています。

ハードウェアやソフトウェアへの知見や独自の開発力は、いま我々が手掛けるAI事業にも大いに役立っています。とくに、動画(映像)圧縮の基礎技術は、実はAIの画像処理などにも応用できる技術です。

そして、AI事業のなかで『ailia SDK』というプロダクトを開発し、現在はax株式会社から提供しています」

ax株式会社 アカウントマネージャー 品部 仁志氏

ailia SDKとはいったいどういうプロダクトなのだろうか。

―― 品部氏
「我々axが目指しているのは『あらゆるデバイスにAIが載る未来』です。パソコンやモバイル端末、Jetson、Raspberry Pi、さらにはお客様専用のハードウェアにおいても、同じエンジンが動く、ということです。

たとえば、日ごろよく使うスマートフォンアプリ。現状ではiOS向けとAndroid向けで、アプリの開発環境は異なっており、厳密には別々にアプリを開発する必要があります。AI実装も同様の課題があり、元となるアプリケーションが同じだったとしてもプラットフォームごとにそれぞれでAIを実装する必要がある、というのが実状です。また、AI処理は複雑な演算処理のかたまりのため、一つひとつのプラットフォームに個別に実装していくのはなかなか難度が高い、というのも課題としてあります。

そこで、ailia SDKを使えば、一気通貫でひとつのSDKからさまざまなプラットフォームに手軽にAI対応させられるのです」

―― 客野氏
「これまで、AIモデルを別のプラットフォームにそのまま変換しようとするとエラーが出ることがありました。Pytorchで作ったONNXのモデルをAndroidで動かしたくても、そもそも手段がなかったり、変換に失敗して動かなかったり……という問題は“あるある話”ではないでしょうか。

また、モバイル環境にAIモデルを実装させる際、iOSにはCoreML、AndroidにはTensorFlow Liteしか選択肢がありませんでした。そのため、PCで動くような複雑なモデルをモバイルに実装するには限界がありました。実際、我々のお客様にもこのような課題を抱えられている方は多かった印象を受けています。

ailia SDKをお使いいただくと、作成したモデルはデバイスを選ばずに動かせるようになります。

PytorchやTenrosFlowで作ったモデルを、SDK内で自動的に読み込み、WindowsやMac、iOS、Android、Linuxなどさまざまなプラットフォームとつなぎ合わせ、さまざまなエッジ環境へのAI実装を実現します」

ax株式会社 取締役 CTO、株式会社アクセル 取締役 客野一樹氏

エッジ領域へのAI開発は、プラットフォームごとに使えるモデル形式が異なったり、ハードウェアの性能や相性に依存したりするため、複数のプラットフォームに同じAIモデルを実装させることは難しかった。そこでailia SDKでは、AIモデルをONNXに共通化することでSDKが自動的に解釈し、さまざまなプラットフォームに対応させるようにしているそうだ。

続けて客野氏はailia SDKはエンドユーザーが特別なベンダーライブラリをインストールせずとも使える、と紹介してくれた。

―― 客野氏
「ailia SDKは『Vulkan』や『Metal』に対応していて、特別なベンダーライブラリのインストールが不要な点も特徴です。

AIを高速に実行するためにGPUなどを活用したいとき、とくにアプリ開発会社様としては、アプリを利用するエンドユーザーの方それぞれでベンダーライブラリのインストール作業を強いるのは現実的ではありません。ailia SDKはVulkanでの高速実行に対応しているので 、個々のエンドユーザー様が特別なベンダーライブラリをインストールする作業も不要になります」

180種類以上の学習済みAIモデルを自由に使える

話を聞くと非常に高機能で、ailia SDKはまさにAI開発向けの「痒いところに手が届く」SDKだ。

ひとつのモデル開発をするだけで、さまざまなプラットフォームにAI機能を搭載できるようになることでさえ便利なのだが、axではさらに利便性を高めたプロダクトも提供している。

―― 客野氏
「お客様から、いろいろなモデルを学習しなくても使えるようにしてほしい、というご要望をいただきました。企業様によってはAIモデルの学習をするエンジニアの方が不足している場合もございます。

そこで、手軽にさまざまなモデルを使っていただけるように、180種類以上の学習済みAIモデルを使える『ailia Models』も用意しました。お客様にどのモデルを使いたいかだけ選んでいただければ、環境が整っているPCの場合だと5分程度でAIモデルをご利用いただけます」

ailia SDKはさまざまなプラットフォームでAIを実装させたい方にとって、PytorchやTensorFlowで作ったモデルを手軽に個別のプラットフォーム向けに変換もしてくれるだけでなく、ailia Modelsを利用すれば180種類以上の学習済みAIモデルを使う開発も可能なのだ。

まさにAI開発におけるハードルを取り払うSDKである。

多くのAI開発に携わる企業にとってぜひとも注目いただきたいailia SDK。axとしては、どのような企業にとくにオススメなのだろうか。

―― 客野氏
「お客様の会社のなかにAIの学習チームがあり、ONNXモデルまでは作れたものの、プラットフォームごとに動かす方法がわからない、などで悩まれている方。変換作業が難しく、エッジ実装に進めないというお客様といった企業様は、ailia SDKを使っていただくと、簡単に実装までもっていけます。

それこそ、いま、リモートワークなどで手元にAIモデルを実装したいJetsonなどのエッジ端末がないけれど、Jetsonに実装したい方は結構いらっしゃると思います。ailia SDKをご使用いただければ、MacやWindowsを使って開発したモデルを、そのままJetsonに実装させることも可能です。

実デバイスがなくてもモデルを作成し、実装前段階までできることは非常に優れている点かと思います」

―― 寺田氏
「客野がお話した内容は、我々axが目指していたビジョンによるものです。

我々はAIがさまざまなデバイスに搭載する際、いろいろな問題が起きると考えていました。導入した際に起きる問題を解決したいということが、axのビジョンになっています。

また、AIを導入するときに『まずどうすればいいかわからない』という方向けに、最新のAIモデルを自由に選んで使えるようにしたものがailia Modelsです。さまざまなモデルを組み合わせて使いやすくしたことで、AI導入のハードルを下げる狙いがあります」

ax株式会社 代表取締役社長 寺田健彦氏

―― 客野氏
「AIを評価することは難しくなってきています。『いま使っているAIが本当にベストなのか』など、専門の研究者の方でないと判別が難しいというのも現状のAI業界の課題であると考えています。

そこで、ailia SDKとailia ModelsによってさまざまなAIモデルに触れられる環境を提供することで、『AIはこんなこともできるんだ』『こっちのモデルのほうが精度も良くて自社に合う』など、PoCも進めやすくしました」

ユーザー端末内でのAI推論を実現 クラウドコストを低減

では、ailia SDKを使っている企業事例はどのようなものがあるのだろうか。いくつも導入実績があるなかで、2つ紹介してもらった。

―― 品部氏
「セルシス様が提供している『CLIP STUDIO PAINT』への導入実績をまずご紹介します。

CLIP STUDIO PAINTは、プロの漫画家さんなども使われるペイントツールで、家電量販店のペンタブコーナーなどで見かけたことがある方もいるのではないでしょうか。

CLIP STUDIO PAINT内では作家さんの支援のため、さまざまなAI機能を実装されています。そのなかのひとつに、スマートスムージング機能があります。

そのほかにも、AIを利用した『自動彩色』『トーンを消去』『ポーズスキャナー』などがありますが、これらの各機能はインターネットに接続してセルシス様のサーバーで実行する必要がありました。ailia SDKの採用により、エッジ端末側(PC・スマートフォンなど)での高速推論が可能となり、インターネットに接続することなく、AIを活用した『スマートスムージング』機能が実現されています。

また、CLIP STUDIO PAINTのユーザー様はさまざまなPC環境で利用されているため、ailia SDKを使うことで、GPUを使用できない環境においても、CPUでのAI推論にも対応し、幅広い環境で一貫したAI処理を行える点もailia SDKをご採用頂いている強みです」

画像はプレスリリースより転載

画像はプレスリリースより転載

―― 品部氏
「NTTドコモ様との事例では、ドコモ様が実用化を推進する、久留米工業大学様の『対話型AI自動運転車いすパートナーモビリティ』の開発に協力させて頂きました。

パートナーモビリティの自律走行・遠隔制御を実現するため、通路にある障害物の認識及び障害物や通行する人までの距離を測定する『障害物検知』、遠隔地に映像を伝送する際、映り込む人の顔にぼかしを加えた状態で転送する『プライバシー保護処理』の主に2つの機能を ailia SDKを用いてAI実装しました。

このAI実装においては、車いすの遠隔操作を実用レベルで実現するため『カメラ入力からAI処理、映像ストリーム伝送と、始点から終点までの伝送遅延を限りなく短くしたい』というのがNTTドコモ様からの強い要望でした。AI処理は膨大な演算フィルタ(レイヤ)を通して演算処理を行い、その演算処理によって実現されます。ailia SDKは完全自社開発のため、どのレイヤ、どの演算処理がネックになっているか即座に社内で解析できるため、複数種のカメラ映像を用いたAI実装においても高度なリアルタイム性を短期間の開発で実現しました」

画像はプレスリリースより転載

画像はプレスリリースより転載

ailia SDKは「パソコンで動けば、エッジでも動く」を実現

本稿冒頭から何度も触れたとおり、ailia SDKが目指すのはあらゆるデバイスにAIが載る未来だ。

実際、ailia SDKはさまざまなプラットフォームへのAI実装を手軽にすることを実現している。

―― 客野氏
「ailia SDKは、クロスプラットフォームでのAI開発を容易にするプロダクトです。これまで、プラットフォームごとに作り替えないといけなかったモデル変換作業を手軽にすることで、さまざまなエッジ環境へのAI実装を実現します。端的に言えば、『パソコンで動けば、エッジでも動く』を実現させるSDKです。

これに加えて、ailia Modelsでは2021年12月時点で180種類以上の学習済みモデルを公開しており、ユーザー様は自由に組み合わせ使っていただけます。たとえば、製造業向けの異常検知として有名なPaDiMや、日本語OCR向けのモデル、日本語に対応した自然言語モデルなど、幅広く用意しました。

ailia Modelsで公開しているモデルは日々増えており、お客様から『●●に使えるモデルもほしい』と要望があれば、その都度公開しています」

続けて客野氏は「新しいモデルを試したいニーズ」にもailia SDKは応えられると話す。

―― 客野氏
「AIモデルは日々進化しているものの、現状では、新しいAIを手軽に試す、というフローがなかなか難しい状況です。その点、ailia SDKならびにailia Modelsをご利用いただければ『気になるモデルをちょっと試してみる』というこれまでのAI開発では難しかったことも実現できます。

開発者目線で言えば、さまざまなモデルに触れられ、情報をキャッチアップできるプロダクトという側面もailia SDKとailia Modelsでは担っているのです」

取材の最後に、ailia SDKが目指す未来を聞いた。

―― 寺田氏
「ailia SDKは、AIをエッジ実装したくても苦労されている方にオススメのプロダクトです。

最新のAIをいくつも試せるため、これからAI開発に着手される会社様もスピード感をもって取り組めると思います。

当然、SDKを提供しているため、さまざまなAIモデルの実装にも非常に知見が集まっているのも弊社axの特徴です。

何かAI開発や実装でお困りごとがあった際は、ご連絡いただけますと幸いです」

axについて
axは、アクセルのAI・機械学習及びミドルウェア領域の事業を推進するグループ企業として2019年5月に設立されました。独自開発したディープラーニング・フレームワーク ailia SDKの販売に加え、AIの実装コンサルティングや学習支援、各種プラットフォームのポーティングなど、お客様の様々なニーズに応じて、AI実用化に向けたトータルソリューションを提供しています。
axホームページ:https://axinc.jp/
ailia SDK WEBサイト:https://ailia.jp/
ailia Models Githubページ:https://github.com/axinc-ai/ailia-models

アクセルについて
アクセルは、高度なアルゴリズム開発から製品化を担うソフトウェア・ハードウェア開発まで一貫した開発体制を保有する先端テクノロジー企業です。大規模LSIの設計開発に加え、機械学習/AIや暗号・ブロックチェーン技術等の先端技術を社会実装することで、デジタル技術によるビジネス改革に貢献します。
アクセルホームページ:https://www.axell.co.jp/