DATAFLUCTが歴史ある企業のトランスフォームを目指す理由 社会に必要な産業を100年継続させるための伴走者に

DATAFLUCTの共創イメージ
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2022年4月に事業会社を中心とする投資家グループ7社を引受先とし、総額11億円の資金調達を実現した株式会社DATAFLUCT。引受先にはリード投資家である東京大学エッジキャピタルパートナーズのほか、「国分グループ本社」、「竹中工務店」ほか名だたる企業が名を連ねた。そのうち数社とはすでに資本業務提携を締結し、新規事業の共同開発も進んでいる。

データビジネスを軸に幅広い業界で躍進を続けるDATAFLUCTが、日本の産業をリードしてきた歴史ある企業と積極的に協業を進める背景には何があるのか? またそうした企業は、なぜ数あるスタートアップ企業の中からDATAFLUCTをパートナーに選ぶのか? 同社が進行中の協業事例を交えながら解き明かしていきたい。

11億円の追加資金調達。支えるのは、歴史あるリーディングカンパニー

DATAFLUCT

データサイエンスにより社会の課題解決を目指すDATAFLUCTは、2022年4月、シリーズBラウンド(※1)として総額11億円の資金調達を行ったと発表した。調達した資金は今後、事業・サービス開発、人材採用強化、セールス・マーケティング投資などに活用されるという。

※1:シリーズBラウンド
スタートアップ企業に対する投資ラウンドの段階の1つ。すでに一定の収益を生み出しており、軌道に乗り始めた企業が、事業規模の拡大やさらなる製品・サービスの進化などを目的として資金調達をするタイミングを指す。

引受先には、「株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ」「国分グループ本社株式会社」「株式会社竹中工務店」「東芝デジタルソリューションズ株式会社」「三井住友海上キャピタル株式会社」「株式会社ポーラ・オルビスホールディングス」「東京貿易ホールディングス株式会社」と、各業界のリーディング企業とも呼べる、歴史と実績を備えた会社の名が並ぶ。

この中で国分グループ本社、竹中工務店、東芝デジタルソリューションズは、すでにDATAFLUCTと資本業務提携を締結済み。また、三井住友海上キャピタル、ポーラ・オルビスホールディングス、東京貿易ホールディングスとも、両社の事業面でのシナジー創出に向けた検討が進んでいるという。

DATAFLUCTの共創イメージ

引受先の企業が期待を寄せるのは、同社の持つ技術力はもちろん、ビジネス創出に向けた企画力や構想力、推進力だ。資本業務提携を締結した2社は、DATAFLUCTとの協業についてそれぞれ下記のコメントを送っている。

国分グループ本社   
                             
「DATAFLUCT社の持つ、構想力・技術・知見・推進力に揺るぎのない信頼を寄せております。DATAFLUCT社の高度なデータサイエンスの技術とデータビジネスに関する知見、国分グループが持つネットワークと長い歴史の中で蓄積してきた膨大なデータを掛け合わせ、持続可能な食品流通システムを実現し、食を通じて世界の人々の幸せと笑顔を創造して参りたいと考えております」     
                        
(イノベーション推進部イノベーション推進課長 目加田 雄亮氏)       

           

竹中工務店 
                                     
「DATAFLUCT社には、データ分析の開発委託等にお付き合いいただき、その技術力だけでなく、企画構想力に対しても信頼を寄せています。今回の業務資本提携によって、両社の関係強化に加え、互いの不足する技術を補完されることで、スピード感のある課題解決とサービス開発につながると確信しています。建設業に関わる多くのステークホルダーのDXを実現するとともに、社会課題解決にも繋げていきたいと考えています」   
      
(情報エンジニアリング本部 情報エンジニアリング1グループ チーフエンジニア 粕谷貴司氏)                                     

 

歴史ある産業を残していくには、データ活用によるトランスフォームが不可欠

DATAFLUCT

では、DATAFLUCTはなぜ自社が誇るデータサイエンスの力を、こうした“老舗”ともいえる企業との協業に生かしていこうと考えたのか。

DATAFLUCTによれば、現在の日本のデータ活用には「ビジネスモデル」「データ基盤」「分析ツール」の3つが不足しているという。そこで同社は、「ビジネスとして価値のあるデータ活用の実現」と「データ活用の民主化」を目指し、音声や画像などの非構造化データを簡単に活用できるデータ基盤を普及するため、集めたデータを誰もが使えるようにした安価な分析ツールを「SaaS(※2)」/「PaaS(※3)」として提供。創業わずか3年で、13領域にもわたるデータ活用サービスを展開している。

※2:SaaS(Software as a Service)
インターネット環境を通して使えるソフトウェアのこと。

※3:PaaS(Platform as a Service)
インターネット環境を通して使えるプラットフォームのこと。

こうした手段を用いて「データ活用で企業と社会のサステナビリティに貢献したい」と考えるDATAFLUCTにとって、今回引受先となった各企業との資本業務提携や共創に向けた検討には、大きな意味がある。各社がそれぞれの産業のリーディングカンパニーとして長年蓄積してきたデータや拠点、製品などの資産と、DATAFLUCTの技術・ノウハウを掛け合わせることで、業界全体と社会にインパクトを与えるようなデータビジネスを創出できる可能性があるからだ。

さらにDATAFLUCT代表取締役の久米村隼人氏は、歴史ある企業との協業に込めた想いを次のように語った。

DATAFLUCT代表の久米村隼人氏

久米村氏:日本の歴史ある企業は、このままだと99%が立ち行かなくなる可能性があると見ています。莫大な予算をかけてシステム開発・リプレイスできるのはごく一部の大手企業だけで、そこまで投資できない会社がほとんどです。しかし、それでは(環境や精度が低くなり)顧客から選ばれなくなってしまう。ですから、歴史ある企業を残すための方法は、データを活用したトランスフォームしかありません。  
   
われわれは「サステナブルアルゴリズム」と呼んでいますが、“企業の経営が持続可能に回っていくための仕組み”を作るための後押しをしたい。DATAFLUCTは、日本の企業全体がビジネス変革とサステナブル両方を成し遂げるための、支援の仕組みを作ろうとしています。その推進のためにも、各産業に影響を持つリーディングカンパニーと一緒に仕事ができればと考えています。

また、資金の提供だけにとどまらず、長期的な視点をもって「一緒に事業を創出していける会社」との協業は非常に重要だと話す。

久米村氏:私たちは、サステナブルな視点で企業や社会変革を目指している会社なので、100年後も変わらずクライアントとお付き合いをしていきたいと思っています。江戸時代や昭和初期に創業し、業界をけん引してきたような会社の変革をお手伝いしたい。そんな熱い気持ちが裏側にあり、資金調達や事業提携を進めました。 
          
食も、建築(防災)も、社会に必要なもの。そういった産業を100年後もきちんと残していけるようにするのが当社のミッションです。社会全体の持続可能性を考えていくと、多岐にわたる業界への水平展開が必要だと思います。今後もエネルギーや金融など、歴史ある産業でデータの蓄積がある業界に働きかけて、どんどん共創していけたらうれしいですね。                                 

食品廃棄ロスの解決に向けた、国分グループとの協業事例

このような考えのもと、DATAFLUCTと国分グループ本社、竹中工務店は協業して新規事業の創出を検討している。

国分グループ本社とは、DATAFLUCTのAI技術を活用した需要予測システムを活用し、受発注や在庫管理の高度化、精度向上により在庫削減を目指す。

Perswell

食品流通においては、生産、出荷、流通、加工・販売、消費などの商流・物流が多岐にわたりデータ連携が進んでいないため、サプライチェーンの各過程における需要予測が難しく、その過程で食品ロスの発生が避けられない状況が続いている。

DATAFLUCTでは、機械学習と外部データを組み合わせた高精度の自動需要予測により、最適な仕入れ・生産を実現するSCMサービス「Perswell(パースウェル)」、青果物のデータを統合し、現在価格の可視化・将来価格の予測で、流通や仕入れのロスを解消、リアルタイムな販促を実現する「Fresus(フレサス)」β版を展開中だ。

DATAFLUCT

一方の国分グループは、国内外の約10,000の仕入先から約60万もの商品を仕入れ、296カ所の物流センターによって国内全域をカバーする物流ネットワークを形成。卸売業という立ち位置を生かし、サプライチェーンの最適化に向けた取り組みを続けてきた。

今後、DATAFLUCTのデータサイエンス技術とデータビジネスに関する知見、国分グループの大規模ネットワークと蓄積されたビッグデータを掛け合わせ、持続可能な食品流通システムの実現を目指していくという。

複数データの組み合わせ活用や一元管理で、建設業界のデジタル化を後押し。竹中工務店との協業事例

建設・不動産業界が抱える課題について、DATAFLUCTは「ステークホルダーの多さやデジタル化の遅れにより、データの一元管理が進んでいない」と指摘する。表計算ソフトで管理されている情報群は、横断的な管理をするには使い勝手が悪く、ファシリティマネジメント業務におけるIT活用が求められているという。

DATAFLUCTのビルボ

DATAFLUCTが展開する「builbo(ビルボ)」はAIによる業務効率化・標準化、データの一元管理による 検索性向上でファシリティマネジメント業務を支援するクラウドサービスだ。予算管理機能や、確認すべき業績指標を表示できるダッシュボード機能、見積書・請求書の情報をデータ化・会計仕訳を自動提案するAI機能などを備え、データに基づく適切な現状把握や意思決定を可能にする。

今後のさらなる取り組みとして、DATAFLUCTは地形や建物、交通などのさまざまな空間データを重ねてデジタル上に再現できる「GIS(Geographical Information System:地理情報システム)」に注目している。

工事の効率化や自然災害の被害をシミュレーションするなど、建設業のDXに役立つことが期待されているGISだが、形式の異なるデータを組み合わせての活用や、時系列で比較するには高度な技術が必要だ。DATAFLUCTでは、そうした従来のGISソフトでは扱いにくい位置情報、SNS、衛星画像、モビリティ、CO2濃度などのビッグデータを組み合わせ、リアルタイムの位置情報分析、人流モニタリングなどの高度なデータ分析によって、まちの最新状況を把握できるEBPMプラットフォーム「TOWNEAR(タウニア)」を開発している。

DATAFLUCT

竹中工務店とは、同社が「まちづくりを通したサステナブル社会の実現」をテーマに実施したプログラム「TAKENAKAアクセラレーター」をきっかけに「builbo」の共同開発を開始。ほかにも「建設DX」をテーマにしたオンラインイベントの開催など、建設・まちづくり領域のデータ活用をともに進めてきた。

資本業務提携により、竹中工務店が持つBIM(Building Information Modeling)をはじめとする設計・施工データや、維持管理において収集されたセンサーデータなどのノウハウを組み合わせた事業開発を進めている。DATAFLUCTによれば、こうしたデータを活用することで災害時の被害予測や適切な避難経路の策定など「サステナブルなまちづくり」が可能になるという。

また、GISやBIMなどの建設に関連するデータをカタログ化し、より高度な分析を行うほか、それらのデータを活用した建設・不動産領域のデータ活用を推進する新規事業開発を目指すという。

事業会社からの出資は、「一緒にビジネスを作っていこう」という想いの表れともいえる。提携企業の想いに応え、DATAFLUCTもまた、ともに新規事業を創出することで持続可能な関係性を築いていくことを目指している。「私たちは既存の非デジタル産業が、デジタルに踏み入れる際の伴走者になりたい」(久米村氏)。そうした決意のもと、歴史ある企業との協業を進める同社の挑戦は始まったばかりだ。

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