エッジAIとは|クラウドAIとの違い・活用シーン・参入企業・プロセッサー・IoTの未来まで解説

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IoT(Internet of Things)とは、「モノのインターネット」と訳され、モノがインターネットを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みを意味します。

野村総研の調査によると、2019年の国内IoT市場全体の規模は約6,100億円で、前年比約45%増となりました。2023年には約1兆9000億円となり、市場規模がおよそ3倍に拡大すること予想されています。巨大な産業を担うIoTにおいて、エッジAIは重要な技術です。

本稿では、エッジAIとは何か、クラウドAIとの違い、活用シーンや参入企業まで、詳しく解説します。

エッジAIとは

そもそも、AI(人工知能)とは、明確な定義はありませんが、人間の知能のようにふるまう機械ことを指します。AIはデータ入力に対し、推論および判断をし、データを出力します。エッジAIは、AIの1つです。

エッジAIとは

エッジAIとは、端末近くにAIを搭載し、学習・推論させる技術です。この場合エッジ(端)は端末を指します。エッジAIが搭載されている端末を「エッジデバイス」と呼び、例としてスマホ、センサー、車が挙げられます。

このように、端末の近くにサーバーを配置し、データ処理することを「エッジコンピューティング」(Edge Computing)と言い、エッジAIはエッジコンピューティングにAIを搭載したものと言えます。

クラウドAIとは

一方で、クラウドAIとは、大量の端末が取得したデータをネットワークを通して、中央のサーバーなどに送信し、学習させる技術です。

GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの4社)や、GAFAM(GAFA各社Microsoftを加えたもの)のサービスをはじめ、一般的にAIと呼ばれるものの多くはクラウドAIのことを指します。

エッジAIのメリット

エッジAIは、取得データを端末内で処理するため、ネットを介してクラウドに送信する必要がありません。それによるメリットを解説します。

1)通信コストの削減
必要なデータだけをサーバーに送信するエッジAIは、すべてのデータを送信するクラウドAIに比べ、通信データ量を抑えられるので、コストが下がります。

2)リアルタイム性
クラウドAIは、出力データをクラウドに送信し、結果を受け取るために再度通信するため、時間がかかってしまいます。一方、エッジAIは出力データを端末内で処理するので、よりリアルタイム性が増します。

3)セキュリティ強化
クラウドにアップロードしたくない、または通信に乗せたくない機密データも端末内でとどめておけるので、漏洩(ろうえい)を防ぐことができます。

IoTとエッジAI

IoTとは

IoTとは、モノがインターネットを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みを指します。

従来は、主にパソコンやサーバーなどのIT関連機器がインターネットに接続されていました。しかし、現在はスマートフォンやタブレットに加え、カメラ、テレビ、プリンターなどもインターネットに接続されるようになりました。

これら家電に加え、車、農機、工場の機械類も、インターネットを介して制御できるよう開発が進んでいます。このようにツールのデジタル化をDX(デジタルトランスフォーメーション)と言い、IoTはDXの中で成長しています。

エッジAIとIoT

IoTの普及により、膨大なデータをリアルタイムで処理する必要性が高まり、エッジAIが注目されるようになりました。

とくに、車の自動運転やファクトリーオートメーション(FA:工場の生産過程の自動化)など、命に関わる現場では限りなくリアルタイム性が求められます。

また、通信環境が悪い場所ではクラウドが使えないので、エッジAIで端末内で処理することのアドバンテージは大きいです。さらに、IoTによって身の回りのものがデータ化されるようになると、セキュリティ性の高いエッジAIがますます求められるとされています。

IoTを進めていく際に、エッジAIは欠かせない技術と言えるでしょう。

活用シーン

活用シーン

エッジAIは、すでにスマホなどには搭載されています。エッジAIの活用シーンを解説します。

自動運転車

自動運転車とは、人間が操作しなくても、自動で走行する車であり、エッジAIの活用がもっとも期待されている分野です。運転は命に関わるので、人間が運転するときと同等以上の運転性能が必要になります。

具体的には、自動車が周辺環境のあらゆる情報を常時収集して解析し、瞬時に判断しなくてはならない「リアルタイム性」が強く求められます。タイムラグを起こさず、安定的に自動走行するためには、エッジAIは欠かせません。

農業

農業では、スマート農機やドローン(小型無人機)の開発が進み、自動でデータを収集できるようになりました。これらのデータの処理をエッジAIに任せることで、大量のデータをクラウドに送るコストを省くことができます。また、田舎など接続状況が悪い地域でも、瞬時にデータを分析できます。

金融

金融サービスにおいて、顧客のデリケートな情報をエッジAIで処理すれば、情報をローカル機器にとどめ、セキュリティを強化できます。また、金融サービスはセキュリティチェックの際の生体認証の利用が増えています。たとえば、顔認証の場合、顔認証データを中央のクラウドデータベースに集めずに、ローカル機器だけに保存することで、データが盗まれる可能性を下げられます。

製造業

工場では、大量のデータが生成されます。解析のためすべてをクラウドに送ると、遅延が発生したり、コストが大きくなったりします。エッジコンピューティングの利用により、大量のデータを手元で処理し、遅延を減らせます。また、機械の制御は人命に関わるので、エッジAIによる通性障害のリスク低減は重要です。

プロセッサー

プロセッサーとは、AIが学習・推論する脳の役割を持っている部品です。エッジAIは端末に、クラウドAIはサーバーに搭載されています。プロセッサーは性能、コストパフォーマンス、消費電力などの違いがあるので、用途によって使い分けられます。AI用に作られたプロセッサーをとりわけAIチップと呼びます。いくつか紹介します。

GPU(Graphics Processing Unit)

GPUは、画像処理用のプロセッサーとして開発されたました。しかし、性質上AIに向いているため、AIに活用されることが多いです。高性能ですが、消費電力が高いことが課題となっています。

FPGA(Field-Programmable Gate Array)

FPGAは、日々改良されていくアルゴリズムをすぐに実装できる柔軟性があります。速度や消費電力の高さが課題となっています。

DSP(Digital Signal Processor)

DSPは、デジタル信号処理に特化した機能を持つマイクロプロセッサーです。高速に演算ができる一方、汎用性に課題があります。

ASIC(application specific integrated circuit)

ASICは、特定用途向けに、複数の機能を持つ回路を1つにまとめた集積回路です。コストパフォーマンスや消費電力が優れている一方、開発が難しいとされています。

また、日本のデンソーが米ThinCI社と共同で開発を進めている(DFP:データフロープロセッサー)という新たなプロセッサーもあります。

自動運転など、高精度かつ高速な判断が必要な現場では性能が優先されます。状況に応じて、手軽に作り直したり、流用したりする必要がある場合は汎用性が求められます。家電などの一般的なものに組み込むためには、コストパフォーマンスも必要です。

参入企業

ここではエッジAI業界をリードしているGAFAやGAFAMをはじめ、大小の企業を紹介しています。

Google

GAFAの中でも、クラウドAIの主力的な立ち位置にいるGoogleですが、エッジAIにも力をいれています。AIをエッジで実行する目的に特化した専用ASICであるEdge TPUを開発しています。TPUを搭載したローカルAIプラットフォームの「Coral」ブランドを展開しており、Coral Dev boardなどが販売されています。

Apple

Appleは、2020年1月15日にエッジAIを手がける米新興企業Xnor.aiを約2億ドル(約220億円)で買収したと報じられています。過去にTuri、Silk Labs、Lattice Data、Drive.aiなどのAI関連企業も買収しており、AI業界に力をいれていることが伺えます。

Microsoft

マイクロソフトは、クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を展開しています。その流れをくんだエッジAIの開発に力をいれています。現在、「Azure IoT Edge」やエッジAIのプラットフォームを構築できる「Azure Sphere」など複数のサービスを提供しています。

また、Azure Data Box Edgeの一般提供も発表しています。Azure Data Box Edgeは、Intel Arria 10 FPGAというプロセッサーを搭載したAI対応のエッジコンピューティングアプライアンスで、流通業、製造業、政府、その他さまざまなシーンで活用されています。

NVIDIA

GPUのリーディングカンパニーであるNVIDIAはGPUを搭載した「Jetson」という小型コンピュータでエッジ業界に参入しています。ビジネスから研究用途まで、Jetsonは特定のニーズにあったさまざまなラインナップを展開しています。

国内の企業も紹介しましょう。

富士通コンピュータテクノロジーズ

富士通コンピュータテクノロジーズは、容易に開発可能なエッジAIとして、成長型組み込みAI基盤「Sensing Network Cognitive SDK」を提供しています。富士通独自のAIであるFUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)が応用されたIoTソリューションです。

フツパー

フツパーは、「はやい・やすい・巧いAI」の開発、提供を目指しており、画像認識エッジAI「Phoenix Vision」「Phoenix Insight」を提供しています。あらかじめクライアントが使用できるようカスタマイズされたエッジAIサービスとしては、かなり安いです。

シンコム

シンコムは、「エッジ向けAIの受託開発企業」 として、学習データセット作成からエッジ向けハードウェアへの実装など、アプリケーションのエッジAI化をサポートしています。また、Edge AI 開発環境「GUINNESS DREI : GUI Based Neural Network Synthesizer」を提供しています。

AI業界をリードするGAFAやGAFAMに、日本企業が追いつくことは厳しいと言われています。しかし、エッジAIには日本のお家芸でもある半導体組み込み技術が必要であり、十分戦える可能性があります。

エッジAIの未来


日本では、一部で利用が開始された5Gは従来の回線(4G)に比べ、格段に通信速度や機器の接続可能台数が上がりました。IoTが進むと、データ量が増え、通信が複雑になりますが、5Gによって対応できると言われています。

エッジAIは、IoTや5Gの波に乗って普及が加速していくと確信しています。