ICTとは|IT・IoTとの違い、情報通信技術の活用事例、Society 5.0まで

このエントリーをはてなブックマークに追加

ICTは蒸気機関や電気などに続く現代の汎用(はんよう)技術であり、今の社会の仕組みや、私たちの暮らしに大きな影響を与えています。本稿ではICTの定義や活用方法、情報通信技術の歴史から、予想される新形態まで解説します。

ICTとは

ICT(アイシーティー)とは、「Information and Communication Technology(インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー)」の略で、情報コミュニケーション技術、情報通信技術と訳されます。

ICTと一口に言っても、限定的な意味はなく、むしろ「情報通信技術」という幅広い概念だと捉えて良いでしょう。人、モノ、地域、サービスなど、さまざまなものを情報技術で「つなげる」スマートフォン、コンピュータ、インターネットもICTと総称され、多くの人にもイメージしやすい情報通信技術です。

IT・IoTとの違い

ITとICTは、非常に近い意味を持ちます。

IT(アイティー)とは「Information Technology(インフォメーション テクノロジー)」の略で、情報技術と訳されます。

ITはその定義にもある通り、「情報技術」という意味を持ち、ソフトウェア、ハードウェアなど情報技術そのものを指すときに使われることが多いです。

対してICTは、さまざまなものを情報技術で「つなげる(Communicateする)」ことを重視し、IT技術の活用方法を示すときに使われることが多いです。

ITを活用したモノやサービスのほとんどはICTに該当するため、ITはICTという言葉に属する関係にあると言って良いでしょう。

IoT(アイオーティー)は、「Internet of Things(インターネット オブ シングス)」の略で、「様々な物がインターネットにつながること」「インターネットにつながる様々な物」を指しています。 IoTは、日本語で「モノのインターネット」と訳され、PCに限らず、さまざまなモノがインターネットにつながります。(総務省 ICTスキル総合習得教材より抜粋)

IoTは「様々な物がインターネットにつながること」を指しますが、IoTが出現する以前からもサーバー、パーソナルコンピュータ、携帯などはインターネットに接続されていました。しかし、これまでインターネットとは無縁だったテレビ、スピーカー、エアコン、時計などがインターネットに接続されることで誕生した言葉がIoTです。

ICTの歴史

photo by pixabay

ICTの歴史は、インターネット登場の背景とICT端末の歴史を紐解くことで見えてきます。

1985年、私たちの身近で通信回線につながる端末は固定電話や公衆電話に限られていました。しかし、日本では同年に、日本電信電話公社(電電公社)がNTTとして民営化され、独占市場だった国内通信市場と国際通信市場に競争原理が初めて導入されました。

通信が自由化した1985年以降から、ICT産業は日本の成長産業として大きく発展しました。その後、パソコンが回線につながり、データ通信やインターネットが利用可能になりました。20世紀末に普及し始めたインターネットは世界規模で大きなインパクトを与えることになります。今では、誰もが日常的に世界中の膨大な情報に瞬時にアクセスしたり、遠隔地にいる人とリアルタイムでやり取りしたりできます。

携帯電話の普及でモバイル無線通信が一般化した後、ICT分野に革命を起こしたのがスマートフォンの普及です。スマートフォンの登場により、インターネットのモバイル化が実現しました。コンパクトながらもパソコンに匹敵するようなスペックを持つスマートフォンは、これまでの情報収集、コミュニケーション、レジャー、売買などのあり方を一変しました。

現在では、アメリカのGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)、中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)のような、特定の分野で圧倒的なシェアを持ち、他者がサービスを提供する上での基盤「プラットフォーム」を持つ事業者も生まれています。また、Netflixなどの動画配信サービスも拡大しています。

ICTの新形態

photo by pixabay

ICTには革新的なサービス、産業、商品を生み出す力があることは、先にICTの歴史で述べたインターネットやスマートフォンの普及の例から見て取れます。それではインターネット・スマートフォンの次に普及するICTとは一体何になるのでしょうか。

今後、世界規模で大きなインパクトを与えると予想されているICTが、ウェアラブルデバイス、コネクテッドカー・自動走行車、パートナーロボットです。これらのICTは、パソコンやスマートフォン、タブレットといった従来型のICT端末ではなく、「人」と「モノ」の間での通信が可能なIoTに属されます。

ここ数年で、IoTは、21世紀の最も重要なテクノロジーの1つになりました。内蔵されたデバイスを介して、日常のあらゆるモノをインターネットに接続するIoTが、これからのICT産業の進化をリードすることを期待されています。

ICTの活用事例

photo by pixabay

ICTは教育、医療、防災などの分野で積極的に活用されています。

・教育
教育現場では、教師の負担軽減や、生徒が効率的に学習するためにICTが活用されています。新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響で対面での授業が減ったことにより、教材プリントやテストのオンライン化、生徒へのタブレット端末支給、学習支援ツールの導入など、すでにICT化が進められています。

・医療
医療分野でもICT化が進んでいます。少子高齢化が進む日本では、介護施設や医療現場での人手不足が大きな課題となっています。最近では、自宅にいながら医師の診察を受けられるオンライン診療の取り組みや、介護現場へのAIやロボットを利用した自動診療などの導入が始まっています。ICT活用は業務の効率化、人手不足解消につながることが期待されています。

・防災
災害大国の日本では、災害体制の強化にICTが活用されています。取り組みの一つに、リアルタイムで津波の観測を予測し、被害が予想される住民に注意喚起を促すシステムがあります。ICTを活用した防災システムは、災害の被害や、避難までの時間的ロスを最小限にとどめることが期待されています。

Society 5.0実現を支えるICT

photo by pixabay

政府が推進しているSociety 5.0では、社会全体のICT化の実現を試みています。

Society 5.0では、フィジカル空間のセンサーや、スマートフォンなどのIoTデバイスなどからの膨大な情報がサイバー空間に蓄積されます。サイバー空間では、このビッグデータを人工知能(AI)が解析することで、個人のニーズに合った有効な情報が、すぐにフィジカル空間にいる私たちのもとに届きます。政府はこのようにSociety 5.0では、サイバー空間とフィジカル空間を隔たりなく結びつけることを目指しており、その実現にはICTの活用が求められます。今後もICTの新たな活用法の誕生に期待が寄せられます。