データの価値を守る。AI文脈で語られるブロックチェーンによる信用創造

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第三次AI(人工知能)ブームと言われて久しいが、近いタイミングでブロックチェーンも注目されるようになった。AI(人工知能)とブロックチェーンは異なった技術ではあるが、一概に無関係な技術とは言えない。現在注目を集めるこの2つの技術は、これから世界のシステムを根本的に変えうるブレイクスルーの技術になりつつある。

AI(人工知能)文脈でブロックチェーンが語られることはあまりないだろう。ブロックチェーンとAI(人工知能)合わせるとどのような価値を生まれるのだろうか。

本稿では、KPMGコンサルティングでブロックチェーンのプロジェクトに携わるシニアマネジャーの宮原 進氏にブロックチェーンとAI(人工知能)の関係性について聞いた。

ブロックチェーンとは?暗号通貨ブームを巻き起こした新たなデータ共有技術

――改めて、ブロックチェーンとはどのような技術なのでしょうか?

――宮原
「ブロックチェーンとは、暗号資産(仮想通貨)の取引を自動処理して記録する技術として2009年に誕生したデータ共有の仕組みです。

不特定多数の参加者が存在する市場において、ブロックチェーン誕生以前には、セキュリティを強化した特定のサーバーにて中央集権的に取引データを管理するほかありませんでした。ブロックチェーンの誕生で、複数のコンピュータに分散して取引処理およびデータを保存することによって、特定の管理者を不要とすることが可能となりました。

さらには取引の自動処理とデータの共有化により改ざんの難易度を上げ、取引および保存されたデータに信用を置くことで、取引相手への信用が不要となることがブロックチェーン最大の特徴です」

ブロックチェーンの革新的な点は、不特定多数のユーザーが参加して記録をシェアし監視することで、不正を防止できること。従来信用の担保が難しかった個人間の金銭取引でも利用ができるようになるところだ。

金融分野におけるブロックチェーンは以下の3つのメリットがあるという。

1.データが改ざんできないこと

ブロックチェーンは分散して記録されるうえ、その記録は暗号化されている。そのためデータを改ざんしたとしても、分散して記録されたデータと改ざんされたデータとを照合すれば不正を検出することができる。

2.中央集権を不要とすること

一元管理される取引データを扱う管理者は、信用が担保された金融機関での取り扱いしか成立しなかった。すると、特定の金融機関に集権的にデータが集まるため、独裁的なコントロールが生まれるリスクがある。

さらには中央集権の場合、システムがダウンすれば利用不可となるが、ブロックチェーンだと共有者間で同じデータを持ち寄っているため、1つのデバイスが落ちても、その他デバイスで補完できるためシステム自体はほぼ影響を受けないというのが特徴である。

3.信用創造のコストを下げること

ブロックチェーンは仕組みから取引および保存データに信用を置くことができるため、取引相手に信用を求めない。そのため、従来はコストでありリスクであった取引相手との信用創造が不要となる。


これらのメリットをもれなく享受できたのが暗号通貨をはじめとした金融分野だが、ブロックチェーンはこれからますます活用の幅が広がると考えられている。

――宮原
「ブロックチェーンは、ビットコインなどの暗号通貨で使われる技術だというイメージが先行していますが、じつはさまざまな場面で使われています。

以下の条件下であればブロックチェーンの活用の余地があるといえるでしょう。

  • 価値あるものを多数の参加者間で取引する
  • その取引に不正の余地がある
  • 取引参加者全員が分散してデータを持ち、取引やデータ自体に信用を持たせることで、参加者に信用がなくても、データそのものの価値を守ることができます。

    もともとはフィンテックとして認識されている技術でしたが、ブロックチェーンの仕組みが注目され、幅広い領域で広く活用されるようになりました」

    ブロックチェーンのメリット。データそのものに価値を持たせる

    ――それではどのような文脈でブロックチェーンが使われているのでしょう

    ――宮原
    「サプライチェーンやシェアリングエコノミー、不動産登記、コンテンツビジネスなどでもブロックチェーンは活躍します。これらの取引のなかで、ブロックチェーンはデータの品質を担保します。

    たとえば物流、生産から小売までの流路をつなぐビジネスです。流路の途中で不正が入ってしまう、または疑いの余地がある場合、最終的な商品の価値は下がってしまいます。

    確実な流路であることをブロックチェーンによって証明することで、商品の価値を保つことができ、ひいては生産者の価値を上げることにつながります。消費者にとっても、安心して商品を手に取ることができます。ブロックチェーンは、物流における商流の質を上げることに一役買っているのです」

    また、eスポーツ分野ではゲーム内に登場するトークン取引にもブロックチェーン技術が使われているという。実際の金銭ではなくても、価値が変動しうる取引に活用できるのだ。

    では、これからの時代を代表する技術である「AI(人工知能)」と「ブロックチェーン」はどのようなシナジーを生んでいくのだろうか。

    ブロックチェーンとAI(人工知能)の関係。シナジーは間違いなくある

    ――ブロックチェーンとAI(人工知能)の関連性を教えてください。

    ――宮原
    「AI(人工知能)はデータを学習してデータを処理する、アプリケーションの発展版です。一方ブロックチェーンはデータベースの発展版だと考えることができます。

    既存のシステムがルールベースで処理していたものを、AI(人工知能)はより柔軟に処理できるようになりました。

    従来のデータベースは、一箇所にデータが集まっているため、不正を防止するためにはひたすらセキュリティを強化しデータを隠すことで品質を維持していましたが、ブロックチェーン技術を活用することで、データの共有と品質維持を両立することを可能にしました」

    AI(人工知能)とブロックチェーンは技術のレイヤーが異なるため、両者がもつ特徴をそれぞれ活かしてシナジーを効かせることが可能だという。具体的にどのような相乗効果があるのだろうか。

    ――宮原
    「AI(人工知能)の文脈で言うと、学習の質を高める際に大量のデータを必要とします。

    たとえば医療データを用いてAI(人工知能)に推論させる際、医療データは個人情報保護の観点から、患者が通う医院だけに閉じていて、十分なデータ量を確保できていませんでした。

    ブロックチェーン技術を活用し患者データのセキュリティを上げることで、個人情報を除いた形で多くの症例データを確保することが可能となります。それをAI(人工知能)に学習させることができれば、学習の質も飛躍的に向上します。

    つまりデータ量を確保し、AI(人工知能)に高精度な学習をさせるプラットフォームとして、ブロックチェーンを使うことができます」

    AI(人工知能)は精度が命である。その精度を向上させるにはアルゴリズム選定のほかにも、データの質・量が重要だ。データの質・量をブロックチェーンで担保することで、新たなAI(人工知能)の可能性を生み出しそうだ。

    ブロックチェーンの未来。真価が見えた先にあるブロックチェーンの可能性

    ――ブロックチェーンのこれからについてどうお考えですか?

    ――宮原
    「一時の熱狂は冷めたと感じています。以前はブロックチェーンもバズワードとなって、特徴や利点を鑑みずに導入検討、PoCが行われてきました。ふたを開けるとブロックチェーンである必要がないようなケースも多々ありました。

    現在はブロックチェーンの真の価値が見えつつある段階なので、それにふさわしいアプローチができればと思います。IoTの発展に伴って、データの価値が高まると言われています。いわゆる従来のビッグデータ基盤だけではなく、ブロックチェーンのようなデータを分散させるアプローチも重要度が増していきます」

    ――宮原さんとしてはブロックチェーンにどのような期待を寄せていますか?

    ――宮原
    「KPMGジャパンとしてブロックチェーンのビジネスへの活用に取り組んでいます。

    たとえば、監査とコンサルティング(アドバイザリー)ではアプローチの方向が異なっており、監査はクライアントのもつ暗号資産に対する会計監査やブロックチェーンシステムに対するシステム監査をどのように行うかに着目しています。

    一方、コンサルティングでは、ブロックチェーンの技術でいかにビジネスの価値を高めることができるのかという観点に着目し、活用した際に発生するリスクについても視野に入れて取り組んでいます。

    ブロックチェーンを可能性のある技術として多角的に捉え、課題解決に活用していこうと考えています」