位置情報AIと衛星インテリジェンスのスタートアップであるLocationMind株式会社は9月9日、シリーズA資金調達ラウンドにより、総額11.6億円の資金調達を完了したことを発表した。今回の資金調達を含めた累計資金調達額は、15.6億円となるという。
LocationMindは、位置ビッグデータ・IoT機器を用いた位置情報分析、人流・物流の予測・最適化・シミュレーションなどの応用的分析、測位衛星システムを用いた次世代のGNSSセキュリティサービスを提供する。日本の位置情報研究の先駆者である柴崎研究室(東京大学 空間情報科学センター)の技術を社会に実装すべく、2019年に創業。
今回のシリーズAラウンドの引受先は、以下の通り。
- みやこキャピタル株式会社(みやこ京大イノベーション2号投資事業有限責任組合)
- 日野自動車株式会社
- 神姫バス株式会社(エスファイブ1号投資事業有限責任組合:運営者 株式会社サンブリッジコーポレーション)
- 株式会社ゼンリンフューチャーパートナーズ(ZFP第1号投資事業有限責任組合)
- みずほキャピタル株式会社(みずほ成長支援第4号投資事業有限責任組合)
- ヒューリックスタートアップ株式会社(ヒューリックスタートアップ 1号投資事業有限責任組合)
- Intelligent Style株式会社
- 株式会社梓総合研究所
- エンジェル投資家 など
今後の事業拡大・成長分野の4つの特徴
トラックプローブのビッグデータを活用した「物流革新」
資本業務提携している日野自動車から提供されるトラックの位置情報などをLocationMindが分析・可視化を行い、物流ソリューションの開発を行う。将来的には運送事業者、インフラ事業者、自治体などへのソリューション提供を目指すという。
スタートアップとして他に類を見ない「宇宙事業」
現在のGPSなどのGNSS信号は、保護のない状態で送受信されているが、LocationMindの新技術「信号認証」は、信号に電子情報を埋め込むことで真正性を付与する仕組み。この技術が日本の準天頂衛星システム「みちびき」に実装され、2024年より測位信号を認証するサービスが開始予定。
人流分析ツール「LocationMind xPop」の拡大
LocationMindの人流分析ツール「LocationMind xPop」は事業化に向けて、パートナー企業との協業などを進めている。
IoT人流分析ツール 「LocationMind xTraffic」の開発
位置情報を収集するにあたって、屋外では人流ビッグデータによる統計的な分析が適している一方で、屋内ではIoT機器を使った計測が正確な分析につながる。IoT型の人流分析ツール「LocationMind xTraffic」は、屋内でのIoT機器を使った分析に適したツールで、xPopと同様に事業化への移行期にある。自治体や大規模移動拠点などで行われたさまざまな実証実験での採用実績があり、シリーズAの資金をもとに事業化を加速するという。
調達完了に際して経営陣のコメント
柴崎亮介氏のコメント( 東京大学 空間情報科学研究センター 教授/LocationMind CTO)
「近年の新型コロナウイルスの流行を踏まえ、『人流』に対する人々の関心はこれまで以上に高まっています。私たちは、インターネットが携帯電話に搭載される黎明の時代から位置情報を研究し、空間情報科学の分野を開拓してきました。空間情報科学は、社会をまるごとデジタルツインできる、未来を担うテクノロジーです。これにより、現実世界のさまざまな問題の見える化や解決を加速させることができます。
この度の資金調達で、これまでの膨大な研究成果を社会に還元する準備が整いました。是非私たちのソリューションにご注目いただき、応援いただければ嬉しいです」
桐谷直毅氏のコメント(LocationMind CEO)
「あらゆる事象を人やモノの移動と滞在の連続と捉えると、位置情報と関わりのないビジネスや社会課題はほとんどありません。私たちの事業が広がることで、世の中の様々な事象の解明と課題解決が進むことを願っています。安心・安全な位置情報の活用を目指し、様々な壁を乗り越えて参ります。
さらに、私たちが構築した『位置認証』という世界最先端の衛星技術は、数百兆円規模とも言われる位置情報産業の健全な発展と、数えきれない程の技術革新のきっかけとなると私たちは考えています。位置情報が真正性を持つようになるという利点だけでなく、衛星測位が位置情報と同時に提供する時刻情報は、時刻の実質的な基準としても幅広く利用されており、通信システムなどの根幹を支えています。その意味で、『位置認証』の貢献は大規模なものになると確信しています。この世界最先端の衛星技術で、次世代の社会システムを提案したいと思います。
この度の資金調達は、世界のすべてを時間と空間から読み解くというLocationMindのチャレンジにおいて、技術投資とさらなる事業化を加速する大きな一歩です。これから未来に大きく羽ばたくベンチャー企業として、今後もご期待いただけますようお願いいたします」
>>ニュースリリース