ソニー、人の向きまで分かる屋内の行動データ分析サービス「NaviCX」を7月から提供開始

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ソニー株式会社は5月31日、新たな顧客体験(CX)の創出や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する、屋内行動分析プラットフォーム「NaviCX(ナビックス)」の提供を7月1日から開始すると発表した。

スマートフォンの各種センサーとAIを活用した独自の測位技術で、大型店舗や施設内の客、従業員の行動データをリアルタイムに取得・分析するという。

屋内行動分析プラットフォーム「NaviCX」の活用イメージ

陳列棚への音声案内や、近くのおすすめ商品プッシュ情報も送信できる

「NaviCX」は、AIを活用したPDR(Pedestrian Dead Reckoning:歩行者自律航法)技術をベースに、近距離無線通信のBluetooth Low Energy技術を用いた発振器であるビーコンや地磁気の情報を独自の測位アルゴリズムで組み合わせて、人の位置だけでなく向きの情報まで高精度に取得できる。

ソニーが提供するSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)を、事業者のスマートフォン用アプリケーションに組み込むことで、店舗や施設内にいるスマートフォン所持者の行動データを取得し、滞在時間や動線、経路などの詳細な分析結果を提供するほか、位置情報に基づいてプッシュ通知を送ることもできる。

本サービスは、大型店舗内(ホームセンター、ドラッグストア、スーパーマーケットなど)や体験型施設内(水族館やイベント会場など)を含む、GPS等での測位が難しい屋内での活用を見込んでいる。

大型店舗では、客のリアルタイムの行動データと商品検索機能などを組み合わせて、客の希望する商品の陳列棚までナビゲーションしたり、近くに並べられた商品のお薦め情報のプッシュ通知を送ったりするなどのサービス提供ができ、客の体験価値の向上に貢献するという。

また、蓄積したデータは、屋内の客の流れを分析したマーケティング施策の立案や、従業員の作業内容・時間を分析した効率化等に活用でき、企業のDXを支援する。

体験型施設では、客のスマートフォンを用いて、行動データに基づく自動音声ガイドなどの展示・演出手法への応用などが可能。

「NaviCX」のシステム概要のイメージ

サービス提供開始を前に、ホームセンターチェーンを運営する株式会社カインズの一部店舗では、店舗オペレーション改善や生産性向上のための従業員の業務状況収集を目的とした「NaviCX」の実証実験を3月から実施している。

実証実験では、パイロット店6店舗を対象に、業務端末を通じて「NaviCX」で店舗メンバーの業務状況を自動的に収集している。

また、300万人以上のユーザーを擁するカインズアプリに測位機能を搭載し、来店客の買い物体験を向上させる店内販促施策などへの活用も計画しており、6月からトライアルを実施する予定だ。

可視化・分析ツールも提供し、データの取得から活用までサポートする

「NaviCX」の主な特徴は以下のとおり。

導入までの準備期間が短く、導入コストも抑制

「NaviCX」は、測位に必要なマップの準備が手軽に行え、設置するビーコンの数も最小限で済むため、サービス導入までの準備期間が短く、導入コストも抑えられる。現地で行う測位用マップの作成は、ソニーが無償で提供するスマートフォン用アプリケーションを使い、ガイドに従って作業することで手軽にできる。たとえば東京ドームのグラウンド(約13,000 m²)の規模を2人で作業する場合、約3.5時間でマップを作成できる。また、「NaviCX」はPDR技術にビーコンと地磁気を組み合わせて測位するため、ビーコンの設置数が少なく、導入コストのほか、メンテナンス費用も抑えることができる。

独自の測位アルゴリズムによる、測位精度の向上と向き情報の取得

「NaviCX」は、スマートフォンのジャイロセンサーや加速度センサーを使い、AIによりスマートフォンの微妙な揺れのパターンに合わせて歩行者の動きの特徴を抽出し、対象者の移動方向や移動距離を計測して現在地を推定する独自のPDR技術で、基礎的な測位を行なう。測位対象者の滞在時間、位置、動線や経路に加えて、これまでビーコンだけでは難しいとされていた対象者の向きの情報まで、リアルタイムに取得できる。また、対象となる屋内施設に設置したビーコンの情報で位置を補正した上で、地磁気の情報で測位精度と人の向きの補強をする。これらを独自の測位アルゴリズムで制御することで、高精度な測位を実現している。

蓄積した取得データによるさまざまな切り口での行動分析

事業者側の管理者には、SaaS形式で「分析・可視化ツール」を提供する。ツールには屋内行動データが蓄積されており、行動分析エンジンにより、対象者の位置や移動軌跡の表示、ヒートマップや各種グラフの作成ができる。データの定量化・可視化がいつでも可能となるため、自社内で日常的に客や従業員の行動の実態把握をすることができる。
<取得できる分析データ例>

  • 客:現在位置、店内/施設内滞在時間、立ち寄った場所と経路、サイネージ前など特定エリアでの滞留時間、アプリ立ち上げ人数
  • 従業員:上記のほか、現在および時間ごとの実施作業内容、各作業にあてた時間割合、品出し回数
  • 場所:場所ごとの滞在顧客数と従業員数、各通路の通行量、サイネージ前など特定エリアの立ち寄り人数、エリア相関

エリア連動型プッシュ通知によるきめ細やかな顧客コミュニケーション

事前に設定した特定のエリアへ客が立ち寄った際に、事業者のスマートフォン用アプリケーションを通じて客向けに位置情報に基づいたプッシュ通知ができる。固定されたビーコンのみを活用するよりも、柔軟に配信エリアや配信時間を設定でき、客に対するきめ細やかなコミュニケーションが可能。配信エリアや通知内容は、事業者に提供された「マップ設定ツール」で設定できるため、店舗/施設などに出向くことなくプッシュ通知の配信場所を変えることができるほか、ビーコンを増設する必要なく配信エリアを増やすこともできる。

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