パロアルトインサイト LLCは、株式会社リンガーハットと、緊急事態などに対応する需要予測システムを共同開発し、このシステムをベースとした「自動発注アプリ」および「店舗シフト管理アプリ」を8月よりテスト運用を開始したことを発表した。実施する店舗は、ショップス市川店、川崎稲田堤店の2店舗で、2022年から23年にかけて、全国約700店の「リンガーハット」および「とんかつ濵かつ」での本導入を予定。飲食業界が抱える人手不足や、食品ロスの解決を目指すという。
需要予測システムについて
本システムは、販売実績や気象情報、地域の情報などのデータから消費者の需要を予測し、適正な発注数の算出、在庫管理、出荷量予測、スタッフの配置を行うシステムだ。とくに、地震や台風といった自然災害や感染症のパンデミックなど、さまざまな緊急事態下で多様に変化する消費者の需要を、AIを活用して予測するという。店舗ごとの発注量を詳細に予測することで、スタッフの管理が円滑に行えるようになるという。将来的には近隣店舗間でスタッフの最適なスケジュール組みなどを実施することで、働き方の改善を実現するとのこと。
需要予測システム開発の背景
新型コロナウイルスの感染拡大により人々の生活様式が変わったことや、国際的な物流の乱れやインフレなどにより、従来の需要予測モデルが通用しなくなっている。そこでさまざまな事態に備えて、あらゆる環境下で柔軟に対応できる需要予測モデルが必要であることから、開発されたという。
リンガーハットでは、2018年から売り上げを予測するAIシステムを独自で開発・運用していた。今回の緊急事態に対応する需要予測システムでは、過去3年分のデータを学習させるだけでなく、直近4~5日分の売り上げデータの変化も反映することで、従来では難しかった自然災害や感染症のパンデミックなどの緊急事態にも対応できるようになるという。
──リンガーハット ショップス市川店 店長 横川綾子氏
「新型コロナの拡大により消費者の生活様式が変わり、店内飲食からテイクアウト需要が増え、営業時間の変更を余儀なくされる場面もあり、これまで以上に需要を予測することが難しくなっていました。AIを用いた緊急事態対応のシステムを活用することで、最適な在庫管理を実現しフードロスを減らすとともに、最適な人員配置を行うことでスタッフの負担も軽減していきたいと思います。例えば、これまでパートやアルバイトのメンバーがそれぞれ口頭や用紙で提出していた希望シフトをアプリから提出するよう変更することで、転記作業等が不要になり効率化につながると考えています。」
──パロアルトインサイト CEO 石角友愛氏
「飲食業界の人手不足はアメリカで度々話題になっており、今後、日本でも間違いなく直面することになる深刻な問題です。今回のケースのように、緊急事態に対応する強靭な需要予測システムを導入することで、適正な在庫管理で食品ロスを軽減することはもちろん、適正な人員配置により人手不足の解消にもつながることを期待しています。需要予測を1時間単位で店舗ごとに行うという技術を開発することに加え、リンガーハット社のような規模で大きく店舗展開することは容易なことではありませんでしたが、皆様の協力もあり実現に至ることができました。リンガーハット社のような飲食業界を牽引する企業が、このようなAIを用いた取り組みを実践することは飲食業界の良いモデルケースになるでしょう。弊社では今後も新型コロナの影響を受けた産業の技術的なサポートを強化していきたいと思います。」
>>ニュースリリース