ビル・ゲイツを5分で動かした男、中島聡の“生き様”と“思考”に隠された超AI時代の生き方

このエントリーをはてなブックマークに追加


マイクロソフトの黄金時代を築いたとされるOS「Windows 95」。その開発チームでチーフアーキテクトを務めていた日本人、中島聡。彼はWindows95のプロトタイプをはりぼてのコードで作り、5分間のデモでビル・ゲイツの承認を得たといいます。

我々の生活にAIが浸透し、あらゆることが効率化すると、人間の仕事がなくなり、働かなくても良くなるのではないかと言われます。この「超AI時代」に向けて、どのような準備をするべきなのか? インターネット黎明期からテクノロジーを追い続ける中島氏に聞きました。

世界時価総額ランキングトップ30社に日本企業なし ── このままでは日本がマズイ

――中島さんは今の時代をどう見ているのでしょうか?

――中島
「まず我々が認識するべきなのが、日本が抱える、生産性が一向に上がらないという問題です。

約30年前は、世界時価総額ランキングのトップ10社中7社をNTTなどの日本企業が占めていましたが、今では日本の最上位は35位のトヨタ。GDPもずっと横ばいです。

景気が悪いのもありますが、ほかの国よりもインターネットやスマホが普及し、その恩恵を受けているにも関わらずこの状態は、マズいです

――中島
「世界に目を向けてみると、最先端技術が日常に溶け込んでいき、社会自体がどんどん変化し、ライフスタイルも大きく変わっています。

数十年後には、あらゆることが効率化され、働く人の生産性が向上し、究極的にいえば1人あたりの生産性が無限大になり、最終的に働く人が1人だけになる、というのもおかしくはないです。

その先に確実に訪れるのは大量失業時代で、貧富の格差などの問題もでてきます」

貧富の格差などの問題があると、現状に不満を持ち、テクノロジーに理解がないマジョリティに政治が左右されたりします。その結果、戦争を起こしたり、迫害が起こるといった課題もあります。

「経団連はもう諦めた」テクノロジーを使い、価値を生み出せる者が、日本を変える

一方で、テクノロジーに理解がない人々とが分断され、さまざまな問題が起こっているのは、社会にテクノロジーが入り込んでいる証でもあります。

――中島
「未だに社会にテクノロジーが入り込んでいるとはいい難い日本は、危機感を覚える必要があります。

変化が起きづらい日本社会の課題としては主に、

  • 企業の新陳代謝が悪い
  • 雇用の柔軟性がない

という2つがあります」

日本のトップを走ってきた企業の業績が悪くとも、政府が潰そうとせずに、雇用を守ってしまう。その課題を解消するため、経団連のトップと何回も話を重ねたが諦めたと、中島氏は言います。

最近になってPCを初めて経団連会長の執務室に持ち込んだニュースの通り、課題が改善されないのは容易に想像できます。

――中島
「そもそも経団連の主要ポジションにつく人たちは、起業はもちろん、転職すらした経験がないですから」

――中島
「そして雇用契約を打ち切るのが難しい日本の社会構造の中で、切れないためにコストがかかり、売上も上がらず、結果的に、生産性も向上しません。

経団連ではなく、インターネットを知っている30~40歳くらいの人たちが企業を変えたり、スピンアウト(起業など)していく方がいいと思い、そういった人たちを作っていこう、育てていこうと考えました」

雑でもいい、手を動かせ。それがビル・ゲイツを動かした

――“作る人”を作る、というのは、中島さんのマイクロソフト時代の経験からきている考えなのでしょうか?

――中島
「私は、はりぼてのコードでもいいので、イメージがつくものをとにかく早く作るというのを一貫してやってきました。

Windows 95の開発に携わった際も、次世代OSを開発するチームが2つあり、片方のチームはアーキテクチャを構築するところから始めていました。ですが私のいるチームは、一貫してイメージがつくもの、とにかく動くものを作り、プロトタイプを直接ビル・ゲイツに見せ、5分のデモをしました

それが後のWindows 95です」

ビル・ゲイツに「Yes」と言わせたのは、完璧な仕様でもコードでもなく、ラフに動くもの。いかにはやくプロトタイプファーストでイメージを持たせることが重要かを、中島氏の原体験が教えてくれます。

――中島
「とにかく動くものを作るのは、学生時代の原体験からきています。まだまだプログラミングが普及しておらず、夏休みに勉強すれば、いきなり世界トップクラスになれる状態だったんですね。

先に動くものを作り、周りに見せ、イメージをつけて……というのをずっと繰り返していて。作ったものをNECの重役に見せると、彼らは喜んでくれたんですよね。そういった体験は大事だと思っています。

結局は、作ってしまった者勝ちですよ」

中島氏が常に意識しているのは、動くプロトタイプで示すこと。議論が進まないAI導入や開発の真っ只中にいる我々に、非常に参考になる気づきです。