強いAIと弱いAIとは | 定義と種類、汎用型と特化型AIの違いを解説

このエントリーをはてなブックマークに追加

AI(人工知能)を分類する際のひとつとして、広く一般的に「強いAI」と「弱いAI」にわけられます。ですが、これらの定義や違いについて、理解や認識が曖昧な方は多いのではないでしょうか。また、「汎用型AI」と「特化型AI」の違いもわかりづらいポイントです。本稿では、強いAIと弱いAIの定義、汎用型AIと特化型AIの関係について解説します。

「強いAI」と「弱いAI」の意味と定義を解説

強いAIとは、「適切にプログラムされた『意識』を持ち、総合的な判断ができるAI」です。一方の弱いAIとは、「一定の領域のみの業務に特化したAI」です。現在企業などの業務効率化や自動化する際に導入が進んでいるAIの多くは、弱いAIにあたります。

強いAIとは

強いAIとは、人間のような自意識を備え、全認知能力を必要とする作業も可能なAIを指します。

「ターミネーター」シリーズのスカイネットや「アベンジャーズ」シリーズのウルトロンなど、フィクション作品で描かれる「人間のように感情を持ち、自身で物事を考えて行動するAI」をイメージするとわかりやすいでしょう。

つまり、あらかじめ人間がそうするようにプログラムしたり、そのためのデータを与えていない場合でも、状況に応じてAIが自ら判断できることが、強いAIの特徴です。

強いAIは人間のように考えて行動できるため、人間のように「想定外の状況に、過去の経験に基づいて学習、処理する」といった対応も可能になるとして期待が寄せられています。

しかし、強いAIは技術的なハードルも非常に高く、いまだ実現していません。

弱いAIとは

では、弱いAIとはどのようなものなのでしょうか? 弱いAIは、与えられた仕事に対しては自動的に処理ができる一方で、プログラムされていない、想定外の状況への対応はできません。

つまり、人間の知性の一部分のみを代替し、特定のタスクだけを処理するAIが弱いAIです。現在実用段階にあるAIは、いずれもこちらに該当します。

具体的には、

などが挙げられます。

汎用型AIと特化型AIの違いとは?

AIは「強いAI」と「弱いAI」の分類のほかに、「汎用型AI」と「特化型AI」の2種類にも分類できます。

簡単にいうと汎用型AIとは、人間と同様に幅広い課題を学習、処理できるAIのことです。一方の特化型AIは、特定の課題だけに特化したAIのことを指します。

汎用型AI

汎用型AIは、特定の課題だけに対応するのではなく、人間と同じようにさまざまな課題を処理可能なシステムを指します。

想定外の出来事が起こった場合でも、人間であればこれまでの経験に基づいて総合的に判断を行い、問題を解決できます。このように、人間のような問題能力処理能力をもつAIが汎用型AIです。

汎用型AIは、プログラムされた特定の機能以上の状況に対しても、自ら学習を行い、能力を応用することによって問題を処理できるとされています。実用化に高い期待が寄せられているものの、実現はまだしていません。

米国の未来学者レイ・カーツワイルは著書*「The singularity is near」にて、2029年に汎用型AIが誕生すると述べています。しかし、ロボット研究者として有名なロドニー・ブルックスは、未来学者のマーティン・フォードの著書**「Architects of Intelligence」のインタビューで「2200年までに、汎用型AIが50%の確率で実現される」と述べているなど、汎用型AIが実現される時期の予測はさまざまです。

特化型AI

特化型AIとは、限定された領域の課題に特化して自動的に学習、処理を行うシステムを指します。

具体的には、画像認識や音声認識、自然言語処理などの技術を持つAIです。現在ビジネス領域で広く活用されているAIは特化型AIです。

たとえば、自然言語処理で手書き書類をデータ化し読み取ることで、データ入力を効率化した事例があります。AIの導入により、手書きでメモされた採寸データを手作業でエクセルに打ち込む業務を自動化し、月180時間削減した実績も出ています。

特化型AIは、特定のタスクでは人間の能力をはるかに超えた高い機能をもつ一方、それ以外の機能は持ち合わせていません。つまり、人間と同じように総合的に物事を考えたり、判断することはできません。

近年注目を集めた「アルファ碁」。ディープラーニングを使った囲碁プログラムのアルファ碁は、2016年に世界トップのプロ棋士に勝利したことで大きな話題と呼びました。

さらに、その後継である「AlphaGo Zero」や「AlphaZero」では、人間の対局データを使わず自身との対局データからの学習、強化が可能となり、さらなる進化をとげています。

「アルファ碁」は特化型AIの代表例と言えます。

関連記事:

強いAIと弱いAI、特化型と汎用型の関係

Photo by Gerd Altmann on Pixabay

では「強いAI」と「弱いAI」、「特化型AI」と「汎用型AI」はどんな違いがあるのでしょうか。

まず「強いAI」と「弱いAI」の概念から説明します。これは、米国のジョン・サールが1980年に論文「MINDS, BRAINS, AND PROGRAMS」のなかで提唱した、「AIが人間の意識や知性を持つかどうか」という観点の分類です。

このうち人間のような意識を再現できるAIのことを強いAI、知性の一部に特化したツールのことを弱いAIと呼びました。

一方、「特化型AI」と「汎用型AI」は「人間のように広範な課題を処理できるか」という視点で分類した概念です。すなわち「課題処理」の観点から、限定的な範囲のみの課題を処理できる機械を「特化型AI」、さまざまな範囲の課題を総合的に処理できる機械を「汎用型AI」と呼びます。

つまり、「強いAI」と「弱いAI」、「汎用型AI」と「特化型AI」の関係性は、どんな視点でAIを判断するかという観点の違いから分類されています。「強いAI」と「汎用型AI」、「弱いAI」と「特化型AI」は観点が異なる近い概念といえるでしょう。

AIの定義

ここまで「強いAI」と「弱いAI」、「汎用型AI」と「特化型AI」というAIの分類を説明してきました。しかし、そもそも「AIとはなにか」の確立した定義は存在しません。専門家によって定義はまちまちであり、その解釈は人により異なります。

• 松尾豊(東京大学大学院工学系研究科准教授)「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」

• 長尾真(京都大学名誉教授 全国立国会図書館長)

「人間の知能を極限までシュミレートするシステム」

• 山口高平(慶應義塾大学理工学部教授)

「人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム」

引用文献:
松尾豊(2015)『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』 株式会社KADOKAWA

ひとくちにAIといってもその技術や概念は多様で、これらの分散する技術や概念を包括してAI(人工知能)と呼んでいます。

AIは人の仕事を奪うのか?人間を超えるのか?

Photo by Jonny Lindner on Pixabay

AIは仕事を奪わず、仕事を変える

AIの実用化が進むにつれて多くの人に懸念されているのが、「AIは人間の仕事を奪うのか?」という点です。結論としては、「AIが人間の仕事を奪い、人間の仕事が減少する」わけではなく「AIで人間の仕事が変容する」になります。

現在ビジネスで実用化されているAIは、自然言語処理を行ったり、画像を解析する特化型AIです。そのため、汎用型AIのように人間のような思考や判断をAI自身が行うことはありません。

とはいえ、特化型AIは、与えられた能力に関しては、人間をはるかに超える結果を残すことも可能です。ゆえに現在、活発にビジネスへの応用がなされています。

たとえば、以下の事例などは代表でしょう。

• メルカリ 不正監視システム「AIを活用し利用規約違反の商品・取引を自動検知するシステム、またあるユーザが不正取引ユーザーであるか、一般ユーザーであるかを分類、抽出するシステムを導入」

• ZOZO 古着自動値付け

「ブランドの人気度合い、過去の販売価格などを学習し、最適な販売価格を予測するシステムを導入」

また、経済産業研究所の岩本晃一氏らが2018年に発表した論文「日本の第4次産業革命におけるIT, IoT, ビッグデータ, AI等 デジタル技術の普及動向」では、「専門的な技能を必要としない低スキルの仕事と技能が求められる高スキルの仕事の需要が高まる一方で、中程度のスキルを必要とする仕事の需要が低下する「雇用の二極化」が起こる」ことも指摘されています。

つまり、現在は特化型AIをどのように「使う」かが重要になっており、人間が担う仕事は徐々に変化していくでしょう。

引用文献:
井上 雄介・岩本 晃一・木本 裕司・齋藤 奈保・澤谷 由里子・田上 悠太(2018)
『日本の第4次産業革命におけるIT, IoT, ビッグデータ, AI等 デジタル技術の普及動向』

AIは人間を超えるのか

このままAIが進化を続ければ、AIが人間の能力を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるともいわれています。もし強いAIが実現すれば、人間の生活は大きく変化するかもしれません。

現在は弱いAIが活発に活用されています。与えられた仕事に対して高いパフォーマンスを発揮する弱いAIをどう活用するかが、いま我々が考えるべき課題ではないでしょうか。

関連記事: