アメリカの有名スタートアップを支えた”最強の黒子”とは

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画像は公式サイトより

世界的なライドシェアサービスや、利用者数が億を超えるストリーミングサービス提供企業を顧客に持つ「TaskUs」という企業をご存じだろうか。急成長による事業拡大でサポートが必要な企業に対して、アウトソーシングという形で支える、アメリカなどの海外では多くの人に知られたアウトソーシングサービスのリーディングカンパニーだ。

TaskUsは2022年初めに、日本上陸を果たした。機械学習の学習データにメタデータを付与して意味付けする「AIサービス」、カスタマーサポートなどを提供する「デジタルカスタマーエクスペリエンス」、クライアント企業が提供するサービスの信頼性と安全性を高める「トラスト&セーフティ」というTaskUsサービス全般を日本の企業に提供していくという。

サービスの概要はどのようなものなのか。また、世界的大企業を含む顧客に信頼される理由や、日本上陸の意図はどこにあるのか。TaskUsのVP, Japan AI & ML Tech(AI事業部長)を務めるヴァグレ・セドリック氏に話を聞いた。

創業から13年で顧客数は100社以上、株式市場の上場も果たす

TaskUsは2008年、わずか7名の従業員と2万ドルの資本金、そしてフィリピンのワンルームオフィスからスタートした。現在では、12カ国23拠点で活動する45,800人以上のチームメイト(従業員)を擁している。デジタルカスタマーエクスペリエンス、AIサービス、トラスト&セーフティを専門とする企業として、TaskUsはデジタル変革の世界的なアクセラレータだ。

現在TaskUsは、シリーズAスタートアップからグローバルな上場企業まで、ソーシャルメディア、エンターテインメント/ゲーム、小売/Eコマース、旅行/交通/ホスピタリティ、ハイテク、ヘルステック、フィンテックなど、12業種100社以上の顧客を抱えている。

顧客のなかには世界的企業のほか、Web会議でまず浮かぶ名前の企業や、マッチングアプリサービスの有名企業なども含まれる。

2021年6月にはNASDAQに上場し、その後、日本だけでなく、マレーシア、ポーランド、ルーマニアなどへのさらなる事業展開を発表している。

TaskUsの事業内容

TaskUsが主に展開しているのは、デジタル・カスタマー・エクスペリエンス、トラスト&セーフティ、AIサービスの3つのサービスだ。

デジタル・カスタマー・エクスペリエンスは、カスタマーサポートが軸である。音声や映像を活用した人によるサポートと、チャットボットによるサポートの両方に対応し、顧客が提供しているサービスにおいて、ユーザーが要望していることに的確に対処している。

トラスト&セーフティは、利用規約違反がないか、倫理に反したユーザーがいないかなど、顧客が提供しているサービスの信頼性と安全性を確保することを目的としたものだ。たとえば、ソーシャルメディアの場合だと、暴力を容認するような投稿やフェイクニュースがないかを監視し、どう対応するかのコンサルティングまで行っている。

AIサービスは、機械学習のためのデータ収集から、データのタグ付けはもちろん、AIシステムの運用といった本番環境のサポートまでを手がける。その際、単にツールやシステムを提供するのではなく、TaskUsのスタッフがチームを組み、顧客が活用したいAIの運用をサポートする。

たとえば、自動運転の場合だと、TaskUsのチームメイトは、イベントを評価し、本番環境下または高度なテスト中の自動運転車を支援するそうだ。

45,800人以上の社員とフリーランスで幅広い業種と状況に対応

AIアノテーションサービスの事例としては、「自動車運転開発企業向けコンピュータビジョン」「ソーシャルメディア企業向けテキスト及び画像の分類」などが挙げられる。

なかでも、AIサービスは日本で最初に注力しているサービスだ。

海外では、ソーシャルメディアやeコマース企業、自動運転車開発企業、ゲーミング企業など、幅広い業界にサービスを展開し、その実績は十分にある。また、テキスト、画像、動画、音声と、あらゆるデータのAIアノテーションに対応できる。

こうした業種、データ形式を問わずサービス展開できるのは多くの人材を抱えているからだ。「世界中に45,000人以上の社員がおり、なかには自動運転のAIアノテーションのような複雑な作業もこなせるプロフェッショナルなスタッフもいる」とセドリック氏は話す。

さらに、一部のプロジェクトでは、フリーランサーとTaskVerseシステムで連携している。TaskVerseとは、TaskUsが2021年にリリースした、世界中のフリーランサーを募集および育成し、彼らに仕事を配分することができるフリーランサーシステムだ。セドリック氏によると、「たとえば1000人を超える体制で大量のデータを集めてほしいと言われるような状況では、フリーランスの方を集めて対応」するという。フリーランスのスタッフは世界各地にいるため、さまざまな言語にも対応できる。

急成長したスタートアップを支えたからTaskUsも成長できた

TaskUsは多くの顧客を抱え、2021年には前年比59%増と、アウトソーシング業界において成長を遂げている。なぜ、これほどまでに信頼され、急成長できているのか? セドリック氏は「大きな理由としては、成長したスタートアップが顧客にいたからです」と話す。

シリコンバレーのスタートアップの多くは創業時は2~3人だが、事業がうまくいき、アメリカだけではなく他国にサービスを展開するまでになると、当然その人数では手が回らない。そこで「サポートしてほしい」とTaskUsに声がかかる。つまり、TaskUsは急成長するスタートアップ企業とともに成長し、その中には今や数十億円規模の上場企業になった企業も含まれる。

多くのスタートアップと密接に関わりながら成長してきたTaskUsは、スタートアップと同じ文化、やり方を身につけてきた。その最たる例が、2020年のCovid-19という課題に対して行った取り組みからうかがえる。感染リスクを減らすためにリモートワークを決定した後、Cirrusという完全に安全なシステムを構築し、1週間で7,000人以上の社員をオンラインへ移行してフルリモートで働ける環境を整えたのだ。

各国のオフィスはピープルファーストという理念のもと、従業員が快適に働けるようにそれぞれ特色のあるコンセプトをもとに設計されている。たとえば、フィリピンのオフィスにはバスケットボールのコートを設置しているという。

もうひとつ、TaskUsのユニークなポイントは社員をとても大事にする「ピープルファースト」という理念だとセドリック氏は言う。

たとえば、ヘイトスピーチがないかをモニタリングする作業において、スタッフは精神的に疲弊してしまう可能性がある。そうした状況からスタッフを守るために、心理学者に相談できる体制を整えているそうだ。

人を大切にする文化を育てていった結果、2021年に180日以上勤務していた社員の自主退職率を15.3%に抑えるなど、業界平均を大きく下回っていたという。

「ピープルファーストはシリコンバレーでは共通の文化という側面があります。その社風を踏まえて一緒に事業を展開しましょうという話にもなるので、ピープルファーストは顧客に評価されているポイントだと思います」(セドリック氏)

ピープルファーストは日本の考え方にあっている

そんなTaskUsが日本に上陸した。さらに、福岡でオペレーションのオフィスを開く予定だ。なぜ日本上陸を決めたのか? セドリック氏は2つの理由があると話す。

「ひとつは、日本の企業にサービスを展開するためです。日本のサービスを海外で展開する場合、言語のサポートが必要ですよね。そこに対応できます。AIの技術を活用している企業はもちろん、AI活用を求めている企業など、幅広くサポートしていきたいと思っています」(セドリック氏)

「もうひとつは、アメリカやヨーロッパに拠点を置く企業が日本でサービスを展開する場合、日本語のサポートや日本のビジネスルールの理解が必要です。日本は大きな市場ですが、アメリカとは違います。ですから、日本のビジネスをよく理解しているチームを作り、顧客が日本のお客様に対応できるよう、サポートしていきたいと考えています」(セドリック氏)

最後に、セドリック氏に日本でサービスを展開するにあたり意気込みを聞いた。

「私たちが掲げるピープルファーストは、お客様を大事にする日本の考え方にあっていると思っています。一方で、TaskUsはシリコンバレーの文化を持ったサービス企業でもあります。この文化とサービスを長年日本でビジネスを手がけてきた私を含めた、スタッフたちで日本に適用できるようにしたいと考えています」(セドリック氏)

若い企業であるものの、世界中の企業から信頼を勝ち得ていることから、その実力は十分証明されていると言えよう。日本市場に興味を持っている海外企業にとっても、日本企業にとっても、力強いサポートを期待できそうだ。

TaskUsが気になる人はぜひ問い合わせフォームをチェックしてほしい。