「当たり前のことを当たり前にやる」Engineered Intelligenceが語ったAI開発現場のリアル

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2018年7月26日、レッジは『THE AI 2nd』を六本木アカデミーヒルズで開催しました。「未来ではなく、今のAIを話そう」をテーマに、企業が本気でAIを導入するためのノウハウやツール、導入事例を集めた大規模なAIカンファレンスです。

『THE AI』
株式会社レッジが「未来ではなく、今のAIを話そう。」というテーマで主催する、大型のAIビジネスカンファレンス。具体的すぎたり抽象的すぎる話ではなく、ビジネスにおいてどの程度のコストで、どこまで活用可能か? という視点で、AIのスペシャリストたちが語ります。
THE AI 2ndの詳細はこちら

AIの導入コンサルティングを手がける株式会社Engineered Intelligence 代表 今川氏が登壇。「AIを導入したいと上司に言われたけど、何をしたらいいのかわからない」「実際開発している人から、注意点を教えて欲しい」といった現場の悩みに対して、コンサルティングをする中でわかったAI導入の注意点を語っていただきました。

今川 哲矢
株式会社 Engineered Intelligence / CEO
東京大学電気系工学専攻修了後(研究テーマ:AIを用いた為替予測)、三菱東京UFJ銀行、アクセンチュアを経て、USスタートアップ企業C1X Inc.立ち上げに参画、その後EI創業。

AIを使う必要があるかないかの見極め

部内や会社全体でAIを導入を試みる場合、AI導入の目的を考える重要性を今川氏は指摘します。

――今川
「自動化やワークフロー改善がゴールの場合と、AIを導入してプレスリリースを出すことがゴールの場合、アプローチは変わってきます。後者がゴールの場合、機械学習を使う必要がないので、自動化 = AIと割り切った方が“作る側”も“使う側”もwin-winなケースが多いです。」

プレスリリースを出すことがゴールの場合、つまりAIという言葉をマーケティング的に使うということですよね。Ledge.ai編集部でもAI関連のプレスリリースを日々追っていますが、AIといいつつそうではないものもあったり……。

その場合は開発にお金のかかる機械学習を利用するよりも、安価で済む従来のアプローチのほうが良い場合もあるということ。最近では働き方改革の一環でAIを活用しようという声も増えていますが、そこでも注意するべき点があるといいます。

――今川
「単純作業を自動化して、より価値のある作業にシフトして行くためには、

デジタル化をして紙をなくす
クラウド化をしてデータを共有する

プロセスが必要です。これらをおこなってから、ようやく作業の自動化段階に移れます。」

たしかに、そもそも書類や過去のデータがデジタル化されていなければ効率化するのは難しいですよね。

そのようなデータをデジタル化した上で、作業をシステムにアウトソースする方法としてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)も挙げられますが、そこに対しても今川氏は注意するようにいいます。

――今川
「RPAは話題性があるので、導入したいという方が多い。ただしRPAを使わず、マクロや簡単なスクリプトで解決できることも多いんです。そこを理解していないと必要以上にコストをかけてしまうことになるので、話題性と実用性を区別しましょう。」

ブームに流されるのではなく、「自社が抱える課題解決の手段としてRPAが適切だからRPAを選ぶ」という姿勢が求められます。

もちろんRPAは多くがノンプログラミングで導入・運用でき、誰でも使えるメリットもあります。RPAを考える前に、業務改善やほかの自動化サービスに詳しい人に相談してみる、というのもひとつの手ですね。

プロジェクト成功の秘訣は最低限の知識とパートナー選び

今川氏は、AI導入においては、最低限の知識はやはり必要になってくると語ります。

――今川
「最低限の知識をプロジェクトメンバー全員が持っておくだけで、不要な混乱を避けることができます。

たとえば、ディープラーニングで判定するシステムを自社で開発する場合、大量のデータが必要であることや、自社で開発せずに既存サービスを使う方がコストパフォーマンスが高いケースがあります。そこを見極めるために、最低限の基礎知識を身に付けることをおすすめします。」

Googleが機械学習の講座無料で解放したり、「THE AI 2nd」でも代表の石川氏が登壇した「Aidemy」など、AIプログラミングを学ぶ環境は整っています。実際に自分で触ってみて、「何ができるのか、どうやってやるのか」を理解していた方が、プロジェクトが頓挫する可能性が無くなるとのこと。意外と欠けがちな視点かもしれません。

また、あるプロジェクトを進めようとする場合、開発前に「AI開発にどれくらいデータ量が必要か」がわかる人がいると、「データの準備が現実的に可能か」を考えることができるとのこと。

――今川
「自分の会社でAIを適用としている領域の過去の事例において、実績があり、経験のあるパートナーを選んでください。AI開発は、学習手法の選択や、評価方法など経験がものをいう業界なので、実績のあるAI企業でノウハウを積んだ人や、大学等で研究を行なっている人と組むことをおすすめします。」

AI開発には、素人では想像できないほどのデータ量が必要です。たとえば2012年に発表された動画上の猫の認識が可能なGoogleのAIには、1000万枚の画像を使っているとか。

パートナーとなるAI人材は海外で数千万円の年収を得ている人もいるほど高単価な場合がありますが、開発が頓挫する可能性を下げるためにも、経験のあるパートナーと組みたいものです。

まだまだ乖離が存在するAI導入の理想と現実

講演を聞いて感じたのは、AI活用がここ数年の間にどの企業でも叫ばれる一方で、正しい活用はそこまで進んでいないのでは、ということ。かなりリアルな話が聞けました。

講演で話されていたことは、何を、どのような目的で、どんな理由でその技術を選定し、その判断のために知識を蓄える、ということ。一般的なシステム開発では当たり前にやられるこれらのプロセスですが、AIとなると敷居が高いよう。

逆に言えば、これからAI導入を考えている企業は、これらの「当たり前」を当たり前におこなうことができれば絶大な効果を得られそうです。今後これらが当たり前になることで、さらにAIのビジネスへの適用が進むことに期待です。

『THE AI 2nd』講演資料もダウンロード可能

『THE AI 2nd』に登壇したほかの企業の講演資料は、下記からダウンロード可能です。