2018年7月26日、レッジは『THE AI 2nd』を六本木アカデミーヒルズで開催しました。「未来ではなく、今のAIを話そう」をテーマに、企業が本気でAIを導入するためのノウハウやツール、導入事例を集めた大規模なAIカンファレンスです。
株式会社レッジが「未来ではなく、今のAIを話そう。」というテーマで主催する、大型のAIビジネスカンファレンス。具体的すぎたり抽象的すぎる話ではなく、ビジネスにおいてどの程度のコストで、どこまで活用可能か? という視点で、AIのスペシャリストたちが語ります。
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個人が複数のデバイスを利用しているのが当たり前となった今、Webマーケティングの現場では間違ったデータ分析が起こりがちです。それをAIによってクロスデバイス推定の精度90%を実現した、株式会社ロックオンが提供するマーケティングプラットフォーム『アドエビス』。
「クロスデバイスの広告効果測定」を実現するアドエビスのAIが、企業のマーケティングに何をもたらすのかについて、株式会社ロックオンのデ・スーザ氏にお話しいただきました。
株式会社ロックオン / 部長
Web経験15年、Webディレクター8年、マーケター11年。内部の人間としての厚みのあるマーケティング実務経験が強み。それらの経験を元に、ad:techほか、MarkeZine Day、Web担当者Forumなど、数々の大型セミナーで登壇。
マーケティング現場を悩ます“クロスデバイス問題”
「アドエビスのAIがマーケティングに何をもたらすかをお話する前に、マーケティング現場、特にプロモーション施策の現場で起こっている”クロスデバイス”問題についてお話させていただきます。」
そう言ってお話をはじめたデ・スーザ氏。個人が複数のデバイスを利用するのが当たり前となった今、複数のデバイスやブラウザをまたいで購買活動を行うユーザーに合わせて、広告やプロモーション施策の効果を測定する必要が出てきたんだとか。
しかし、そういったデバイスやブラウザをまたいだユーザー行動(クロスデバイス)によって、プロモーション施策の評価が適切にできないことが多く、これが現場で問題となっていたんだそうです。
Googleの調査によると「購買行動や申し込みなどを完了するまでに、90%のユーザーが複数デバイスやプラットフォームを利用する」という結果が出ています。
Google “The New Multi-Screen World Research” (2012)
また、株式会社ロックオンによる調査では、「“初回の情報接点”と“購入などのCVをおこなったデバイスやOS”が異なるユーザーが全CVに占める割合」が約21%もあるそうです。
現状、クロスデバイスの効果測定が可能なユーザーは、ログイン状態のユーザーやマーケティングオートメーションツールなどで、明確に行動を追うことができているユーザーに限られています。
クロスデバイス推定精度90%を達成したアドエビスのAI
株式会社ロックオンでは、そのクロスデバイス問題を解決するために、”Deterministic(決定的)なデータを集め”、“Probabilistic(確率的)なデータに広げる”というアプローチで、同一ユーザーの推定をおこなうAIを開発したそう。
「アドエビスには年間120億件の国内のWeb行動データ があるのですが、調査会社からも別途データを集め、予測ロジックを作成しました。大量のデータを活用し、開発を重ねること2年で精度90%を達成するまでに至りました。」
調査会社から数百万件もの本人正解データを集め、教師あり機械学習を適応することで、9割もの精度を出すことに成功したようです。
「ログインIDでの判定など、既存手法でもクロスデバイス分析はおこなえます。ですが、ログインが必須であったり、IDがない(まだ顧客になっていない)ユーザーなどは、クロスデバイス分析ができません。それをAIで推定することによって、対象範囲を全ユーザーに広げています。」
下記は別の取材時にLedge.ai編集部にてまとめた、アドエビスAIの仕組みです。精度が90%(同一人物だと推定してユーザーが実際に同一人物だった率)で、検出率が40%ほどとのことで、プロモーション施策の効果測定の領域でかなりのインパクトがありそうですね。
※以下、2018年8月取材時に編集部で図式化したワークフロー

- ユーザーボイスのリサーチベンダーと提携
- リサーチベンダーの抱える数百万人のパネルユーザー(実際にサービスを使ってコメントや評価などをおこなう契約ユーザー)の行動データを取得
- パネルユーザーが各種端末でログインしている点に着目。その行動ログを取得し自社に蓄積されたデータと突合
- アドエビスデータ内では別れているが、本来はひとりのユーザーにまとめられるケースを抽出
- ここから「こういう行動をとった(アドエビスデータ内での)ユーザーAとユーザーBは実は同一人物である」という正解ラベル(≒教師データ)を作成
- 上記を学習データとして使い、正解ラベルがないデータにて「同一ユーザーである確率」を計算
データの価値をAIで向上させる
個人が複数デバイスを利用することに加え、IoT技術等も進み、これからは消費活動がますます複雑になり、単デバイスのみのデータの価値は下がっていきます。
そんな時代で、データの質を向上させるために「各デバイスとのデータの関係・関連を推定する」というアプローチは新しく、アドエビスのAIはお手本になるような事例だと思いました。
講演資料は下記からダウンロード可能
デ・スーザ氏の講演では、
- マーケティング分野でのさまざまなデータ
- アドエビスのトラッキングデータの分析結果
- クロスデバイスAIによる施策効果
など、マーケティング担当であれば、必ず知っておくべきデータについてもお話されていました。その講演資料も公開中なので、ぜひチェックしてみてください。