落合陽一さん「偶発性をどう取り戻すのか」が重要になる

このエントリーをはてなブックマークに追加

『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』(SBクリエイティブ)や『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)などの著書、メディアアーティストとしての活動などでも知られる落合陽一さん

筑波大学准教授の落合陽一さんは2月23日、ウェルヴィル株式会社が2月23日に開催した人とテクノロジーの未来を考える「#人とAIの2025」コンテストの決勝戦に特別審査員として参加した。

本コンテストはTwitterや特設サイトで「人とAIについて、2025年に実現していてほしいこと」に関するアイデアを文章やイラストなど、自由な表現形式で応募できるというものだ。

決勝戦では一次審査に通過した8人がプレゼンテーションを実施し、落合陽一賞は東京大学工学部システム創成学科3年の浅野輝さんによる「撹乱(かくらん)としてのAI」が受賞した。

本アイデアは、コロナ禍の外出自粛やオンライン化により偶発性が軽減していること、またAIにおける機械学習では人間社会のバイアスが反映される危険性があることを踏まえ、現在の目的関数の最大化ではなく、ズレやほころびといった非合理性を重視するAIが必要ではないか、といった考えである。

落合陽一さん「『偶発性をどう取り戻すのか』が大きな課題」

落合陽一さんは本アイデアについて、「基本的に、ジェンダーバイアスやフィルターバブルといった世の中で起こっている大きな分断は、AI作りにも影響を及ぼしていきます。はたまた、偶発的に何かに出会わないセレンディピティが低い世の中は、withコロナ以降はすごく活発化していきます」と話す。

「社会のなかに偶発性をどのように取り戻していくのか。ある種の祭りなど、突然起こるようなことをどのように入れていくのか。どのようにしてバイアスや差別が起こらないようにするのか。大きな課題ではあると思います」

また、落合陽一さんは人類の歴史を振り返り、「たぶん、僕は人類がやりたいことは歴史上あんまり変わってきていないと勝手に思っています。たとえば、ソクラテスが持っていたモチベーションと、この社会の人が持っているモチベーションはあんまり変わっていないと思います。けれども、新たな問題は増え続けています」と持論を述べる。

では、AIではどのような問題が起こっているのか。落合陽一さんは「みんな自分が好きなものが欲しい、自分が考えていることをやってほしいというのがAIに求めていることの1つだと思います。だけど、その考えは随分偏るし、偏った人は(ほかの)偏った人と話が通じません」と、現状を分析した。

「偏った自分のなかに、他人の偶発性や新しいことをどのように呼び込むのか。今後の課題の1つではあります。(本コンテストのコンセプトである)2025年までには、何らかの解決策が見いだせれば良いなと思っています」