エンタメ&アート
Spotifyで広がる「AI生成偽楽曲」の問題 悪用されるストリーミングサービス
音楽ストリーミングプラットフォーム「Spotify」では、アーティストやクリエイターが自由に楽曲を配信できる環境が整っている。しかし、その仕組みを悪用し、有名アーティストに見せかけたAIで生成された音楽が配信される問題が報告されている。2024年11月15日、このような事例を、アメリカのニュースサイト「The Verge」が詳しく[取り上げた。]{target=“_blank”} ## 偽アルバムの実態とアーティストへの影響 The Vergeのエリザベス・ロパット氏が報告した一例として、ロックバンド「HEALTH」の偽アルバムが挙げられている。彼女は「新作アルバム」の通知を受け取ったものの、実際にはその内容はHEALTHとは全く無関係の音楽だったという。ジャケットデザインも公式のテイストとは大きく異なり、まるで別のアーティストの作品に見えるものだったそうだ。 このような偽アルバムの存在は、他にもノルウェーの歌手・アニーや、パンクバンド・Swansなどの複数のアーティストで確認されている。特にメタルコアバンドを中心に、短い単語の名前を持つバンドが狙われる傾向があると述べている。 ## Spotifyの収益モデルが生む「偽楽曲ビジネス」 なぜこうした偽アルバムがアップロードされるのか。その背景には、Spotifyの収益構造が関係しているという。Spotifyは、ディストリビューターから楽曲データを受け取り、再生回数に応じてロイヤリティを支払うシステムだ。しかし、このシステムを悪用し、偽のディストリビューターに渡る仕組みが成立している。 ロパット氏の調査では、ディストリビューター「Gupta Music」がHEALTHの偽アルバムを含む700枚以上のアルバムを登録していることが明らかになっている。これにより、再生回数に応じた収益は、正規のアーティストではなく、偽ディストリビューターに渡る仕組みが成立してしまうと述べている。 AI生成音楽の急速な普及が、こうした偽アルバム問題をさらに助長している可能性も指摘されている。ストリーミング詐欺防止を目指す企業のBeatdappのCEO Andrew Batey氏は「AIはSpotify上で以前から存在していた詐欺行為を加速させるに過ぎない」と語っている。 :::box [関連記事:自動作曲ができる音楽生成AI「Udio」パブリックベータ版公開 誰でも無料で月1200曲まで高品質な楽曲を生成できる] ::: :::box [関連記事:200名を超えるアーティストが署名「AIで音楽の価値を下げるな」ビリー・アイリッシュ、ノラ・ジョーンズ、ボン・ジョヴィなど参加の団体が権利保護を呼びかける声明] ::: :::box [関連記事:AI生成音楽を用いた詐欺、約14億円の不正収益でノースカロライナ州在住の男を逮捕] :::