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SpotifyのPrincipal Product Managerを務めるDimitri Mazmanov氏は2026年9月3日、AIコーディングツール「Claude Code」で大量のファイル読み込みなどを別のAIモデルへ振り分け、Claudeが消費するトークンを大幅に減らす手法をを[公式技術ブログ]で公開した。 同氏が公開したベンチマークでは、16万2000行のJavaコードを含む大規模なコードリポジトリを使い、大量のファイルを読み込む3つのケースでトークン消費を82~94%削減。平均削減率は約90%だったという。 「トークン」は、生成AIが文章やコードを読み書きするときに使う処理単位だ。長い文章や大量のコードをAIに読ませるほど多く消費し、利用コストや一度に扱える情報量にも影響する。 Spotifyが公開した方法は、簡単に言えば「高性能なAIにすべての仕事をさせず、単純な仕事は別のAIに任せる」というものだ。 ## 「全部Claudeに読ませる」のをやめる Claude CodeのようなAIコーディングツールは、開発者から質問を受けると、必要なソースコードを読み込み、内容を理解した上で回答したり、コードを書いたりする。 ただし、その作業すべてに高度な推論能力が必要なわけではない。 例えば、「この大きなファイルの中から、この機能に関係する部分を探して」といった作業では、まず大量のコードを読み込む必要がある。一方で、最終的にClaudeが必要とするのは、その中の一部だけという場合もある。 SpotifyのPrincipal Product Managerを務めるDimitri Mazmanov氏は、こうした大量のファイル読み込みや、既存の形式に沿った定型コードの生成まで高性能なモデルに担当させると、多くのトークンを消費すると説明している。 そこでMazmanov氏は、Claude Codeを全体の「司令塔」として残しながら、単純な作業だけを別のAIモデルに任せる仕組みを構築した。 Spotifyが公開した例では、作業を引き受けるAIとしてGoogleの「Gemini 2.5 Flash」を利用している。ただし、このモデルに固定されているわけではなく、別のAIモデルに変更できる。処理の振り分けには、Spotifyの開発者向けプラットフォーム「Portal by Spotify」のAI機能「AiKA Modes」を使う。shuntがClaude CodeからAiKA Modesを呼び出し、設定した別のAIモデルへ作業を渡す仕組みだ。 ## 大量のコードは別AIが先に読み、必要な部分だけClaudeへ Spotifyは、主に2種類の作業を別AIへ振り分けている。 1つ目が、大量のファイルを読む「bulk-reader」だ。 Claudeが数千行のファイルを丸ごと読む代わりに、別のAIが先にファイルを読み、Claudeから与えられた質問に必要な情報だけを取り出して返す。 たとえるなら、専門家が分厚い資料を最初から最後まで読むのではなく、助手が先に資料を確認し、「今回の判断に必要なのはこの部分です」と抜き出して渡すような仕組みだ。 Claudeが読む情報量を減らせるため、その分トークン消費も抑えられる。shuntはデフォルトで350行を超えるファイルの読み込みを振り分け対象とする。小さなファイルでは、別モデルへ処理を渡す手間が削減効果を上回るためだ。 2つ目が、定型的なコードを書く「code-writer」だ。 例えば、既存の形式に沿ったテストコードや設定ファイル、型定義など、ある程度パターンが決まっているコードは別のAIに生成させる。生成したコードをそのままファイルへ保存することもできるため、完成したコード全文をClaudeに読み込ませる必要もない。 Spotifyは、こうした処理をClaude Codeから利用できるプラグイン「shunt」を[GitHubで公開]している。 ## 大量ファイル読み込みで平均90%削減 Spotifyは、16万2000行のJavaコードを含む大規模なコードリポジトリでshuntの効果を検証した。 4014行の大きなファイルを1つ読み込むケースでは、通常は3万3684トークンを消費したのに対し、shunt利用時は5737トークンとなり、82%減少した。 ソースコードとテストコードの計7408行を読み込むケースでは、7万5990トークンから4148トークンへ94%減少した。 複数のサービスにまたがる計1281行のファイルを読むケースでも、1万6221トークンから821トークンへ94%減少した。 大量ファイル読み込み3ケースの平均削減率は90%だった。 **16万2000行のJavaコードを使ったshuntのベンチマーク。大量ファイル読み込み3シナリオでは82~94%、平均90%のトークン削減となった** ![benchmarks spotify.jpg] :::small 画像の出典:[Spotify公式GitHub] ::: なお、code-writerについてSpotifyは単純な削減率を示していない。 通常はClaudeが参考となるコードを読み込み、新しいコードを生成するため、入力と出力の両方でトークンを使用する。一方、code-writerでは別AIがコードを生成してそのままファイルへ書き込めるため、同じ基準で比較しにくいためだ。 ## 難しい判断まで「安いAI」に任せるわけではない Spotifyが重視しているのは、すべてを別AIへ任せるのではなく、作業の難しさによってAIを使い分けることだ。 大量のファイルを読んで必要な情報を抜き出したり、決まった形式のコードを書いたりする作業は別AIに任せる。一方で、バグの原因を突き止めるデバッグや、システム全体の設計判断、安全性が重要なコードなど、高度な推論が必要な仕事はClaude側に残す。 Mazmanov氏の検証では、別AIがコードの表面的なパターンを捉えることはできたものの、複数の処理が同時に動く際に問題となる微妙なバグを見落とすケースがあった。一方、Claudeは必要な情報を与えると、その問題を見つけられたという。 つまり、Spotifyの方法は「高性能なAIを安価なAIに置き換える」のではない。 単純作業は軽量なモデルに任せ、人間で言えば専門家にしかできない判断にだけ高性能なAIを使う構成だ。 同社のAI機能「AiKA Modes」では、用途ごとに使用するAIモデルを設定できる。今回のshuntもこの仕組みを利用し、Claude Codeが作業内容に応じて別のAIへ処理を振り分ける。 AIコーディングツールの利用が広がる中、1つの高性能モデルにすべてを処理させるのではなく、「どの仕事をどのAIに任せるか」を分けることで、トークン消費や利用コストを抑える手法の一例となっている。 なお、Spotifyの公式GitHubでは9月5日、shuntの大規模ファイル読み込みを制御するHooksについて、Claude Codeの仕様との不整合を指摘するIssueが投稿されている。記事執筆時点でIssueは未解決で、Spotify側による修正や見解は確認できていない。 :::box [関連記事:Claude Code、短い指示でも初回に約3.3万トークン MCPなど追加で約7.5万、Systimaが測定] ::: :::box [関連記事:Claude CodeでAIエージェントをどう指示するか AnthropicがCLAUDE.md・スキル・サブエージェントなど7つの方法を解説] ::: :::box [関連記事:AIコーディングエージェント、開発者の90%が週1回以上利用 Claude Codeが39%でGitHub Copilotを逆転し首位に 1月18%から急伸] ::: :::box [関連記事:Anthropic、Claude Code「auto mode」をデフォルト化へ 危険なコマンドを89%ブロック、人間は13.6%] :::