学術&研究

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2025/4/24 [THU]
ドローンを使った雷誘導実験に世界初成功 NTTが動的避雷システムを実証のサムネイル画像

ドローンを使った雷誘導実験に世界初成功 NTTが動的避雷システムを実証

2025年4月18日、NTTはドローンを用いて雷を人工的に誘発・誘導する実験に世界で初めて成功したと[発表]{target=“_blank”}した。2024年12月13日に国内某所で実施された本実験は、通信インフラや風力発電を守る新たな「空飛ぶ避雷システム」実現に向けた大きな一歩となる。 ## 背景:雷被害の現状と課題 日本では年間約1,000億~2,000億円規模の雷被害が発生し、通信設備や風力タービンなどへの落雷被害が後を絶たない。従来の避雷針は静的な設置に限られ、カバーできる範囲に限界があるため、動的に雷対策を行う手法が求められていた。 ## 技術概要:ドローンを“空飛ぶ避雷針”に ### 1. 雷誘発トリガー 地上に配置した電界センサーが雷雲下の電界変動をリアルタイムで監視。急激な電界の上昇を検知すると、自動でドローンを発進させる。 ### 2. 耐雷ケージ ドローン本体に装着したアルミ製ケージが、落雷電流を外殻で受け止めつつ地上へ安全に導く。ケージ内で電流を放射状に分散し、内部機器へのダメージと強磁界の影響を防止する。 **雷誘発前(左)/誘発時(右)における等電位面の集中と電界変動の模式図** ![250418af.jpg] :::small 画像の出典:[NTT ”電界変動を利用した雷誘発技術の原理”]{target=“_blank”} ::: ## 耐雷ケージの仕組み アルミ製ケージには以下の役割がある: - **誘導電流の受け流し**(黄矢印) - **発生磁界の拡散**(緑矢印) これにより、ドローン本体と内部電子機器を高電流・強磁界から保護しつつ、安全に地表へ電流を戻す。 **ケージを流れる誘導電流(黄)と発生磁界(緑)の流れ** ![250418ae.jpg] :::small 画像の出典:[NTT ”大電流・強磁界の耐雷化設計”]{target=“_blank”} ::: ## 実験機体と手順 1. 雷雲接近を電界センサーで検知 2. ワイヤー装着ドローンを発進し、高度約300 mへ上昇 3. 雷誘発を待機し、直撃をケージで受け止め 4. 地表ワイヤーを通じて大地へ放電 **耐雷ドローン―プーリー―導電性ワイヤ―ワインチ―地上スイッチ―計測小屋(オシロスコープ)で構成される実験システムの全体図** ![250418ab.jpg] :::small 画像の出典:[NTT ”ドローン誘雷の実験系”]{target=“_blank”} ::: ## 実験用ドローン - **機体** :Freefly Systems「Alta X」(全幅1.5 m、重量10.4 kg) - **改造** :アルミ製耐雷ケージ+地上ワイヤー接続スイッチ **実験に用いた「Alta X」ドローン。アンテナ状のケージとワイヤーが確認できる** ![250418aa.jpg] :::small 画像の出典:[NTT ”耐雷ドローン”]{target=“_blank”} ::: ## 実験結果:波形データで見る雷誘導 - **電流波形** :雷誘発直後にワイヤーへ数十~数百アンペアの大電流が流入 - **電圧波形** :スイッチON前後で約2,000 Vの立ち上がりを観測 - **地上電界** :誘発後に急激な変動を示し、放電が完了したことを可視化 **電流(黄)・電圧(緑)・地上電界(紫)の計測波形。赤破線丸が雷誘発タイミング** ![250418ac.jpg] :::small 画像の出典:[NTT ”雷誘発時の観測波形”]{target=“_blank”} ::: ## 今後の展望 今後、NTTはセンサー網やAIによる予兆検知の精度向上を進めるとともに、都市部や発電所などでの実証実験を通じた運用モデルの確立を目指す。また、雷エネルギーの回収・活用といった応用研究にも取り組むとしている。 この技術が実用化されれば、従来の固定型避雷設備では対応できなかった広範囲の雷対策が可能となり、雷による社会的損失の大幅な低減が期待される。 :::box [関連記事:リモート操作で “危険” と “緊急” に即応:複数ドローンの自律協調がもたらす新時代の警備・災害対応ーー産総研らの共同開発] ::: :::box [関連記事:ChatGPTを活用したドローン編隊飛行システム「SwarmGPT」ミュンヘン工科大学の研究チームが発表] ::: :::box [関連記事:テラドローン✕九州電力送配電 AI搭載ドローン自動鉄塔点検システム導入で点検時間を約50%削減] ::: :::box [関連記事:ブルーイノベーション、八潮市の道路陥没事故で「ELIOS 3」を活用した下水管内調査を実施] ::: :::box [関連記事:核融合発電の実現に前進か――NTTとQSTが「世界初」のAIを活用したプラズマ状態の高精度予測手法を確立] :::

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